教養としてのビール 知的遊戯として楽しむためのガイドブック (サイエンス・アイ新書)

【最新 – ビールについて知識を深めるためのおすすめ本 – ビールの歴史からおいしい飲み方まで】も確認する

ビール入門書

ビールに興味がある、これからビールを学びたい、という方にお勧めの入門です。表紙の『この一冊でビールの今がわかる!』というあおりの通り、原料、醸造工程、スタイルなど一通りの知識が詰め込まれています。とてもわかりやすく、これを読み終えた後にはクラフトビールファンになっていることでしょう。

著者プロフィール

富江 弘幸(とみえ ひろゆき)
1975年、東京都生まれ。法政大学社会学部社会学科卒。卒業後は出版社、編集プロダクションでライター・編集者として雑誌・書籍の制作に携わる。その後、中国・四川大学への留学などを経て、英字新聞社ジャパンタイムズに勤務。現在は、雑誌やウェブサイトでビール関連の記事を執筆するほか、ビアジャーナリストアカデミーの講師も務める。著書に「BEERCALENDAR」(ステレオサウンド)がある。

本文デザイン・アートディレクション・クニメディア株式会社
イラスト:高村かい
校区:韓根信寿、青山奥裕

はじめに

もしかしたらビールはものすごくおもしろいコンテンツなんじゃないか、といつからか考えるようになりました。つまり、小説、漫画、映画、ゲーム、音楽などと同じように楽しめるお酒なのではないだろうか、と。

というのも、ビールは多様性のあるお酒だからです。キンキンに冷やしてゴクゴクと喉越しを楽しむというイメージがいまだに強いように思いますが、最近は「クラフトビール」という言葉が知られてきたこともあり、ビールに対するイメージが徐々に変わってきているとも思います。ですが、それでもまだ、酸っぱいビールや甘いビールなど、いろいろな味わいのビールがあるということはあまり知られていません。

多様性があるということは、おもしろいコンテンツになり得る条件のひとつではないかと思っています。

例えば、『三国志』をご存知でしょうか。「中国の歴史書をもとにした羅貫中の小説『三国志演義』があり、そこから日本でも「三国志』という名前を冠した小説やゲームなどの作品が生まれました。『三国志』の魅力はそのストーリーのおもしろさにもありますが、それは登場人物の多様さがあってこそだと思っています。登場人物の数が多いだけでなく、それぞれの生き様も個性的で魅力的なのです。

他にも、私が子どもの頃に『キン肉マン』や『ビックリマン」に夢中になったのも、キャラクターに多様性があったからだと思います。今でも『妖怪ウォッチ』や『ポケットモンスター』など、多様性が魅力のコンテンツはたくさんあります。

そして、ビールにもそれらのコンテンツに負けないくらいの多様性があるのです。では、ビールにはどんな多様性があるのか、いくつか挙げてみましょう。

まず、味の多様性。いわゆる「ビール」と聞いて想像する味だけでなく、とてつもなく苦いビール、甘いビール、「酸っぱいビール、スパイスがきいたビールなどがあり、実は「ビールとはこんな味」とは規定できません。麦を主原料にしていれば、どんな材料を入れて造ってもよいのです。これは造り方の多様性とも言えます(使う材料によっては、日本の酒税法により発泡酒と表記されるものもありますが、本書ではそれらもビールとして扱います)。

飲み方にも多様性があります。キンキンに冷やしてゴクゴク飲むのは、飲み方のひとつでしかありません。ビールの種類によっては、15度くらいの温度で飲むほうがいいものもありますし、ホットビールのように温めて飲むものもあります。また、銘柄によっては、何年も熟成させることができ、その味わいの変化を楽しむこともできます。

さらには地域の多様性。例えば、ワインはそれに適したブドウの産地でしか基本的には造られませんが、ビールは設備さえ整っていれば、世界中のどこでも造ることができます。特定の醸造時期もありません。そして、造る地域によって、水や酵母、副原料も変わり、味わいの多様性にもつながってくるのです。

そして、醸造家の多様性。醸造する地域、時期などにとらわれないということは、醸造家の個性を表現しやすいお酒だとも言えます。また、その醸造家(醸造所)にもそれぞれのストーリーがあり、それもまたビールの楽しさを補完するものだと思っています。

もちろん、こういった多様性は他のお酒でも同じようなことが言える部分もあります。しかし、ビールはその中でも特に自由度が高く、多様性の幅が広いのです。

こう考えると、ビールは非常におもしろいコンテンツだと思いませんか?夢中になれるビールや醸造所をもう見つけている人もいるでしょうし、まだ見つけられていない人でもきっと好きになれるビールがどこかにあるはずです。

本書は「教養」という言葉をタイトルに使っていますが、これは社会人として必要な文化的知識や品位のような狭義の意味ではなく、娯楽も含む普段の生活に取り入れられる知識といった、広義の意味で捉えていただければと思います。ビールというコンテンツの魅力を、紙幅の許す限り本書に詰め込んだつもりです。

とはいえ、本書で著した内容は、ビールの魅力の「さわり」でしかありません。大学の講義で言えば、一般教養というところでしょうか。あまり構えずに肩の力を抜いて、ビールを飲みながら読んでいただければと思います。

CONTENTS

はじめに
第1章「一番おいしいビールは?」に答えにくい理由
「ビールはどれも同じような味」ではない
ゴクゴク飲めるお酒だという固定観念固定観念を取り払うビールの多様性
最も思い入れのあるビール
「ビール嫌い」は「ピルスナー嫌い」?
造り方の多様性
飲み方の多様性

第2章「クラフトビール」が何かは誰もわかっていない
クラフトビールの定義が固まっていない日本
では、地ビールとは?
アメリカでの定義
アメリカでクラフトビールが生まれた理由
クラフトビールの定義よりもビアスタイルが重要

第3章これだけは知っておきたいビールの歴史と造り方
古代から中世までのビール
ビール純粋令とビールの三大発明
そもそもビールとはどんな酒なのか
日本でのビールの定義と発泡酒との違い
ビールの原材料
●麦芽
●ホップ
●水
●酵母
●副原料
ビールの造り方
●製麦、
●糖化
●濾過・スパージング
●煮沸
●冷却・発酵
●熟成
●容器詰め

第4章これだけは覚えておきたいビアスタイル
ビアスタイルを覚える必要性
ラガービアスタイル
●ピルスナー
●オクトーバーフェストビール(メルツェン)
●ボック
●デュンケル・シュヴァルツ
●カリフォルニア・コモンビール
エール系ビアスタイル
●ヴァイツェン・・ケルシュ
●アルト・セゾン・
●ベルジャン・ホワイトエール
●ベルジャン・ストロングエール
●ベルジャン・ダブル
●ベルジャン・トリプル
●フランダースエール
●ペールエール
●インディア・ペールエール(IPA).
●ポーター
●スタウト
●バーレイワイン
その他
●ランビック
●フルーツビール、フィールドビール
●セッションビール
●スモークビール
●トラピストビール

第5章自分好みのビールを選ぶには
ラベルの情報からビールの味を想像する.
●ラベルに書かれているビアスタイルで判断する
●既存のビアスタイルからの変化を見抜く
●味わいを表すキーワードを理解する
ビールの味わいの基準を作る
●まずは自分の好みを理解する
●好みの醸造所を見つける
●限定ビールよりもレギュラービールを
何杯か飲むときの選び方の基本

第6章ビールをおいしく飲むためには
ビールは光と熱を避ける
ビアスタイルによって適切な温度で飲む
きれいなグラスで飲む
グラスを変えて飲む
注ぎ方を変える
熟成させると味わいが変わる

第7章どんな料理でも必ず合うビールはある
ペアリングの考え方
ビールで料理の味を切る
ビールと料理の共通する味を合わせる
ビールと料理の異なる味を組み合わせる
●塩味×酸味
●辛味×酸味
●旨味×苦味
●甘味×焦げ感

おわりに
索引