マンガでわかる有機化学

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有機化学の基本的な考え方をマンガで学ぶ

本書は、有機化学を学ぶ際の基本的な考え方を解説している本です。高校の化学を理解している方向けの内容となっています。化学の基礎から有機化学の基礎、有機化合物の構造、性質、反応についてまとめられています。有機化学を学ぶ入り口として利用できるでしょう。

長谷川 登志夫 (著), トレンド・プロ (編集), 牧野 博幸 (イラスト)
出版社 : オーム社 (2014/3/21)、出典:出版社HP

まえがき

有機化学の対象となる有機化合物は、主に炭素、水素、酸素、窒素の4つの元素から作られています。構成元素の種類は少ないのですが、他の元素とは異なった特徴的な種々の結合をすることにより、多様な性質の数限りない有機化合物が生み出されています。生物の重要な構成物質や、栄養となる物質、薬などの多くも有機化合物です。これらにかかわる方にとって有機化学はベースとなる学問です。

生物は、炭素原子を結びつけて、そこに水素原子、酸素原子や窒素原子などのわずかな種類の原子を取り込んで、生命活動に必要なさまざまな有機化合物を作り出しています。原子には炭素以外にも100以上の多くの種類の原子があります。こんなに多くの種類の原子の中で、生命は炭素原子を選んでいるのです。なぜなのか、その答えを学ぶのが有機化学なのです。

このような有機化学を学ぶには、原子・分子についての基本的な理解が必要になります。有機化合物は、どのような原子がどのようにして結びついて作られているか、その理由を知ることによって、有機分子の溶解性、沸点の違いなど性質の違いを理解することができます。さらに、分子をどのような条件で反応させることによって、望む分子を作ることができるかも予想することができます。つまり、原子・分子の性質から考えることで、有機化学が言葉や反応を単に覚えるだけの暗記の学問ではなくなるはずです。

本書では、高校までの化学の知識を想定しています。つまり、高校までの化学の理解があれば、本書を読み進めることによって、単なる知識を知るということではなく、今までにはなかった有機化学の世界に触れることができるはずです。本書は、マンガの部分で登場人物の大学生に対する講義形式で、有機化学を理解するうえでの基本的な考え方を丁寧に説明してあります。どのようにして、炭素原子から有機分子が作られてくるのか、また、有機分子にはどのような性質、たとえば水に溶けやすいとか油に溶けやすいなどの性質が生まれるのはなぜなのか、このような基本的な考えの説明に重点を置いています。そのため、通常の基礎有機化学で取り扱っている有機化学反応の大半を取り上げていません。有機化学を本当に理解するには、たくさんの知識ではなく、なぜそうなるかの理由を理解することです。さらに、コラムでは、私の専門である香料化学の観点から、有機化学的ものの捉え方について説明してあります。この本を読み終わった時に、皆さんにとって新たな有機化学の世界が広がっていることを願っています。

最後に、この本の執筆を続けてこられたことに対して、オーム社開発部の皆様に感謝を申しあげたいと思います。そして、私の原稿をもとに素晴らしいマンガにしていただきましたトレンド・プロの皆様、作画を担当された牧野博幸氏、シナリオを担当された青木健生氏および大竹康師氏にも、心よりお礼申しあげます。また、原稿の査読を快くお引き受けいただきました埼玉大学大学院教授の石井昭彦先生にも、この場をかりてお礼申しあげます。

2014年3月
長谷川登志夫

長谷川 登志夫 (著), トレンド・プロ (編集), 牧野 博幸 (イラスト)
出版社 : オーム社 (2014/3/21)、出典:出版社HP

目次

プロローグ 異星からの伝道師

第1章 化学の基礎
1.1 化学って何?
1.2 有機化合物の分子の骨格は炭素原子である
1.3 原子の構造と化学結合(原子の構造)
フォローアップ
●原子の構造
●軌道と電子配置
●sp3混成軌道と単結合
コラム 料理は有機化学の実験

第2章 有機化学の基礎
2.1 有機化合物の性質の源(官能基)
2.2 有機化合物の名前のつけ方
フォローアップ
●二重結合と三重結合
●共役と共鳴 コラム 目に見える巨大分子

第3章 有機化合物の構造
3.1 異性体って何?
3.2 分子の二次元構造と性質(立体配置)
3.3 分子の三次元構造、分子の鏡の世界(鏡像異性体)
フォローアップ
●分子式、構造式の見方と書き方
●E,Z命名法
●立体異性体のさまざまな表示の仕方
●R,S命名法
●立体配座
コラム 物質の匂いが立体構造で変わる

第4章 有機化合物の性質
4.1 水に溶けるものと油に溶けるもの(親水性・親油性)
4.2 沸点の違いを生む原因(分子間相互作用・分極した結合)
4.3 酸と塩基
4.4 正六角形の構造を持つベンゼンという芳香族化合物
フォローアップ
●酸と塩基
●ベンゼンの構造
●ケトーエノール互変異性って何
コラム 香りの物質は脂溶性

第5章 有機化合物の反応
5.1 有機化合物はさまざまな反応で別の分子に変わる
5.2 炭化水素の反応
5.3 アルコールの反応
フォローアップ
●エステル化反応
●二重結合への付加反応
●ハロゲン化炭化水素の求核置換反応
●ハロゲン化炭化水素の脱離反応
●ベンゼンの反応 (芳香族求電子置換反応)
コラム 物質の性質を操る力:有機化学反応

付録 生体を作っている有機化合物
●生体を構成する主な有機化合物の概観
●タンパク質
●脂質
●糖質
●合成高分子化合物

参考文献
索引

長谷川 登志夫 (著), トレンド・プロ (編集), 牧野 博幸 (イラスト)
出版社 : オーム社 (2014/3/21)、出典:出版社HP