史上最強のCEO イーロン・マスクの戦い

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イーロン・マスクは如何に常識を覆したか

本書は、本当に世界を変えてきたイーロン・マスクの挑戦や型破りな発想について説明している本です。彼が持つ壮大なビジョンと不可能だと思われてきた事業を成功に導いた手腕が取り上げられています。ただ、事業や家庭での苦難についても触れられており、一人の人間としてのイーロン・マスクの戦いも知ることができます。

竹内 一正 (著)
出版社 : PHP研究所 (2015/2/19)、出典:出版社HP

はじめに

米国音楽界の父と言われる作曲家ジョージ・ガーシュインが作った「みんな笑った」
(原題They all laughed)という歌がある。こんな歌詞だ。
コロンブスが地球が丸いと言った時、みんな笑った。(中略)
ライト兄弟が人は飛ぶことが出来ると言った時、みんな笑った。
そして、この本で紹介する人物、イーロン・マスクがベンチャー企業で宇宙ロケットを打上げると言った時、やはりみんな笑った。宇宙開発は国家がやるものだと決まっていで。

しかし、イーロンが作ったロケットベンチャー企業「スペースX」は創業わずか6年で独自に開発したロケット「ファルコン1」の打上げに成功。さらに、ファルコン1の10倍以上の推進力を持つ「ファルコン9」は国際宇宙ステーションへのドッキングを成し遂げる。これは民間企業として初の快挙だった。

しかも、イーロンが目指すゴールは「人類を火星に移住させること」。彼がこの発言をした時も、みんな笑った。しかしイーロンは、二酸化炭素による温暖化で環境悪化する地球に100億人もの人間が住むのは困難で、人類は火星に移住すべきだと本気で考えている。スペースXは米国で最も推進力のあるロケット「デルタNヘビー」の2倍以上の推進力を持つ「ファルコン・ヘビー」を開発中であり、火星に100万人を送る考えだ。

そして、スペースXの凄いところは、従来NASA主導で作ってきたロケットと比べ、コストを10分の1にしたことだった。
さらに、使い捨てだったロケットを”再利用できる、設計にして、最終的にはコストを100分の1にする型破りの計画を推し進めている。垂直に打上げたロケットが、ビデオを逆再生するように同じ場所に帰ってくる。その発想を聞いた時、やはりみんな笑った。
だが、スペースXはグラスホッパーというプロジェクトを立ち上げ実績を積んだ。近々打上げる「ファルコン9v n」は、洋上に浮かべたサッカー場ほどの着陸甲板を持つ船「自動スペースポート」に着陸する予定だ。

スペースXを創業して2年後に電気自動車(EV)のベンチャー企業「テスラモーターズ」に出資したが、ノートPCのちっちゃなバッテリーを約7000個も使ってEVカー「ロードスター」を開発しようとしたら、みんな笑った。どこの自動車メーカーもEVは大きな専用バッテリーを開発して取り組んでいたからだ。

しかし、ロードスターはそんな常識を打ち破って長い航続距離を実現し、ポルシェより速かった。第二弾の「モデルS」は人気を博し、米コンシューマーレポートで総合1位に輝いた。そして地球上で最大のバッテリー工場「ギガ・ファクトリー」を建設中だ。
テスラのEV特許を無償で公開するとイーロンが言った時、みんな笑い批判した。特許を公開すればテスラが危機に立たされることは眼に見えているからだ。だが、イーロンはテスラの利益ではなく、EVの世界への普及を目指した。

ガーシュインの「みんな笑った」では、素敵な女の子に愛を告白したい主人公を、みんなが笑う。でも、この恋は実るのだった。だから、歌はこんな歌詞で終わっている。
ハ、ハ、ハ、最後に笑うのは誰だ。

イーロン・マスクの人類と地球を救おうとする戦いは、一企業の金儲けを超えた、極めて壮大なものだ。常人には理解しがたいが、グーグルの創業者で約300億ドル(約3兆円)の資産を持つラリー・ペイジはこう言った。「もし自分の莫大な財産を残すとしたら、慈善団体ではなくイーロン・マスクに贈る。彼なら未来を変えられるからだ」
では、天才経営者イーロン・マスクによる人類と地球の未来を変える戦いを見ていこう。

竹内 一正

竹内 一正 (著)
出版社 : PHP研究所 (2015/2/19)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 「人類と地球を救う」壮大な挑戦
スペースXが拓く未来― NASAを仰天させた実行力
物理学的思考で新しいものを生み出す
民間企業初の快挙
再利用を想定したロケット開発
少人数でスピーディに前進する
「誰もが不可能だと考えるミッションを」
新たな時代の幕開け
コストを10分の1にする秘策|日本人以上のモノ作り力
マルチプラネットという発想
NASAのロケットが高い理由
シンプルに設計し、自社で作る 1000回の帰還に耐える断熱シールド材
考え方そのものがブレークスルーになる
ロケットを再利用可能にする――皆わかっていて、誰もやらなかったこと
コロンブスの卵を探せ
まるでCGのような衝撃的な着陸
EVの常識を破る――ポルシェより速く、セクシー
ハリウッドセレブも欲しがるテスラの車
志を共にした素人集団
高級EVカー「ロードスター」の全貌
ロケット技術を取り入れたクルマ
走るコンピュータへの評価は
太陽を味方につける――砂漠で生まれたソーラーシティー
積極的なファミリービジネス
太陽光発電の魅力
シリコンバレー的な電気自動車―1世紀のクルマの姿
モデルSが火災事故を起こす
問題対応の要諦はどこに
シリコンバレー的な事故対応
ハッカーがクルマを狙っている
日本でのモデルS発売
未来へ布石を打つ――アイデアを膨らませ、実行に移す
世界最大のリチウムイオン電池工場
3Dプリンターで作ったエンジン搭載の宇宙船
2026年、火星に人類が立つ

第2章 南アフリカの少年が抱いた夢と憧れ
南アフリカのオタクだった少年――パソコンが導いた可能性
アポロ1号の落とし子
イジメられっ子が憧れたアメリカ
0歳でパソコンと出会う
夢は大西洋を越えて――冒険は青年を育てる
親の反対を押し切って
運命の女性との出会い
シリコンバレーのわらしべ長者―――努力のやり方で成果は変わる
スタンフォード大学大学院を2日で辞める
コンパック伝説
eBayがペイパルを約5億ドルで買収
はるかな宇宙を目指せ――勇気が未来を拓く
米ソ冷戦の産物
国家がやらないなら、俺たちがやる
安いロケットを探してロシアへ

第3章 とてつもない失敗をする度胸
ペイパル・マフィアの闘い ――昨日の敵は、明日も敵
休暇中に起きた反乱
冷静さが明日を作る
「ファルコン1」の不都合な真実――高い目標に空回りする思い
打上がらないロケット
辛抱の時
南太平洋へ墜落した「ファルコン1」
楽観主義が推進力だ
三度目の挑戦
ロケットエンジンを改良しろ
テスラ社、崖っぷちの闘い――情熱と現実の狭間で
イーロンのこだわりが足を引っ張る
水面下の苦悩
次々と代わるCEO
GMが倒産の坂道を転げ落ちる中で
息をしている限り、事業を続ける
魂が揺れるほどの苦難――仕事と家庭の板挟み
生まれたばかりの長男の急死 結婚生活の光と影
ヒーローはゴシップにも事欠かない
名を成すは窮苦の日にあり――テスラ、異端の株式上場
困難を乗り越えて
「モデルS」出荷でももたつく

第4章 型破りすぎる発想
細心かつ大胆に――世界最大の「ギガファクトリー」
切り札はこれだ!
工場に美意識を求める
部品メーカーにまで足を運ぶわけ
パナソニックの舞台裏の事情
NASAからの熱い期待
お金は目的ではなく手段である

第5章 進化の連続が成功を引き寄せる
垂直に着陸する巨大ロケット――常識は覆すためにある
進化が止まらない「ファルコン9」
顧客からの「回収試験」中止要望
海洋がだめなら~陸、でやろう
未来を拓く「ドラゴンV2||3Dプリンターで宇宙は近くなる
ヘリコプターのように自在に着陸する宇宙船
史上初、3Dプリンターで作ったロケットエンジン
「第三の産業革命」はホンモノか
足し算の加工技術教育が急務
21世紀の宇宙船の姿
コックピットにも美しさを
次々に墜落する他社ロケットたち―宇宙は近くて遠い
アンタレス・ロケットの失敗、炎上
スペースシップ2が墜落
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カモメのようなドアを持つ「モデルX」
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HALではなくベイマックス
万里の長城を攻略せよ―魅力的で厄介な中国
テスラ社も被害を受けた中国のパクリ
巨大な中国にEVカー充電網を広げろ
5年以内に世界最大の電気自動車市場になる?
狡猾な竜を御する方法
もう一つのギガファクトリーを作る――ソーラーシティーの破格の闘い
「ソーラーファクトリー」の建設より大きな困難に挑む

第6章 巨大な敵に平然と挑む
巨人にひるむな――正面から向き合えば道は拓ける
ロケット開発の傲慢なライバル
BBCから売られた喧嘩
「モデルS」対ニューヨーク・タイムズ
古い法律が邪魔をする―未来を見るか、過去に縛られるか
カーディーラーとの激烈な闘い 大衆を味方につけろ」
古いハンマーが襲いかかる
出る杭を打ちたがるバカ
腰の定まらないオバマ大統領
変化することは当たり前
批判を歓迎するしたたかさ――意外なところに秘訣はある
友人に見せればいい。 目先の金儲けより大切なもの
保護貿易なんて時代遅れ
火星に100万人を送り込む――壮大な夢への階段
加速するイーロンの行く道
いつ、スペースXは上場するのか
3Dプリンターを宇宙で使うわけ
新時代を切り拓く経営力|世紀の風雲児
地球は危機に瀕している
21世紀の経営者の条件

イーロン・マスク 略年譜
参考資料・文献

装幀 齋藤 稔(株式会社ジーラム)

竹内 一正 (著)
出版社 : PHP研究所 (2015/2/19)、出典:出版社HP