リーダーのための行動分析学入門

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働く人全てにおすすめの1冊

グローバリゼーションが進み、新しいリーダーシップが求められる現代。本書では、「人がなぜそのように行動するのか」について法則を見つけて探求する行動分析学の手法を用いて、組織のリーダーが人を動かす際のポイントがわかりやすく解説されている。組織管理者だけでなく、部下が思い通りに動かなくて悩んでいる上司の方にもうってつけの一冊である。

島宗 理 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2015/9/17)、出典:出版社HP

まえがき

グローバリゼーションの時代に新しいリーダーシップが求められています。
自分たちとは異なる慣習や価値を持つ文化に生きる人々と一緒に働き、その文化に適した製品やサービスを提供し、満足してもらうためのリーダーシップです。

わかりやすいのは国内企業の海外展開でしょう。日本では評判も良く、売れている商品が、そのままでは通用しないこともありますし、日本ではあたりまえになっている働き方や経営手法、部下のマネジメントの仕方が受け入れられないこともあります。

そんなとき、現地のスタッフや彼らの文化をいくら責めても成功にはつながりません。日本から派遣しているスタッフを責めてみても同じことです。必要なのは、違いを理解し、受け入れ、その上でその違いを逆手にとって活かしていくフレームワークです。

フレームワークとは基本となる考え方のことです。本書では、人の行動を理解するフレームワークとして行動分析学という心理学を採用しています。

行動分析学は「人がなぜそのように行動するのか」ということについて、その人がそのように行動する原因を、その人の行動を変えながら見つけようと探求する科学です。「人を動かす心理学」と言ってもいいでしょう。
とはいえ、本書は科学としての行動分析学を学んでいただくための教科書ではありません。行動分析学という科学をフレームワークとして作り上げたリーダーシップについて学んでいただく、実践のための本です。

部下が思い通りに動かなくて悩んでいる上司の方には、なぜ部下の人たちがそのように行動しないのか理解し、どうすれば行動するようになるのか、具体的な解決策を考えられるように!
職場で多様性を尊重し、イノベーションを生みだそうとし経営者の方には、業績向上につながる優れた仕事をしていくための方法論を!
本書では、わが国の企業が現在進行形で取り組んでいる様々な課題に対する処方箋をポジティブな行動マネジメントとしてまとめました。

ポジティブな行動マネジメントは行動分析学の研究にもとづいていますが、研究だけの絵空事ではありません。
本書では、ポジティブな行動マネジメントを武器に、世界のトップ企業を支援しているCLG(Continuous Learning Group)というコンサルティング会社*1のノウハウや事例もご紹介します。

CLGは、米国(ピッツバーグ)に本社をおき、Fortune100*2に入るグローバル企業にもコンサルテーションを提供している会社です。エネルギー、鉄道や航空、金融、医療・製薬、食品、小売など、幅広い業種の500以上の顧客企業に対し、1993年の創業から今日まで、ポジティブな行動マネジメントを用いて成功をもたらしています。経営者や管理職、社員の行動を変えることで、収益をもたらすコンサルテーションです。

CLG創業者の一人である、Leslie Braksik博士と私は大学院の同級生で、共に行動分析学を学んだ仲間です。CLGが日本のある企業にコンサルテーションを提供したときに、彼女の著書*3の翻訳監修をお手伝いしたこともありました。
そのご縁もあり、今回、本書の執筆にあたっては、彼女の本で紹介されている事例を引用したり、CLGが商標登録している用語を使用させていただく許可をいただきました。
さらに現在、CLG Japanオフィスに駐在している現役コンサルタントのDanielle Geissler博士にもインタビューを重ねさせていただき、ポジティブな行動マネジメントについて、可能な限りのリアルな情報をお届けしています。

コンサルテーションの契約には守秘義務がつきものです。ですから、実際、何をどのように進めるかについての詳細は、語りたくても語れないことが多いのですが、今回は、ぎりぎりの線まで踏み込んで情報提供していただきました。
この場を借りて、お二人には感謝の意を表します。

海外展開をもくろむ企業はもちろんのこと、国内にて事業を営んでいる企業についても、程度の違いはあれ、異文化も対応したマネジメントが必要とされます。
様々な個性を持ち合わせたメンバーをまとめてチームの力を最大限発揮しようとするときには、それぞれの個性が異文化になります。
ゆとり世代のように、ある年齢層の部下が異質な文化を持つこともあります。女性の社会進出、経営への参画に伴い、女性の上司に年上の男性部下ということも珍しくなくなっていきます。海外から招聘された外国人経営者の元で働く日本人社員も増えていくことでしょう。これらは、今後、間違いなく進んでいくトレンドです。わが国では、これまで他国に比べると、「みんな同じ」が重視されていました。平均からの逸脱は、個性として尊重されるより、出る杭として打たれることが多かったのが事実です。我慢しなければならないことも多いけれど、全体としてはうまくいっていました。

この価値観が大きく変わろうとしています。
「みんな同じ」という価値観が「違ってていい」、さらには「違っている方がいい」にまで変わってくるのが、多様性(ダイバーシティ)を尊重する流れです。グローバリゼーションと同様、ダイバーシティも後戻りすることはない世界の潮流だと私は考えています。

このような転換期だからこそ、人はなぜそのように行動するのかを理解し、どうすれば望むように行動してもらえるのかを考えるためのフレームワークがいっそう重要になるのです。この一点で、本書が日本再生に僅かながらでも貢献できれば幸いです。

なお、本書でご紹介する下記の用語は商標登録されています。転載など、使用にあたっては事前にCLGから許諾を受けて下さい*4。
CLG®︎コンサルティングサービス
IMPACTモデル
MAKE-IT®モデル
E-TIP Analysis
Performance-Based Leadership®
DCOM®
Discretionary Performance

*1
Continuous Learning Group(https://www.clg.com)

*2
米国最大の経済誌『Fortune』が毎年発表している企業ランキングです。

*3
Wilk Braksick, L.(2007).Unlock behavior, unleash profits: Developing leadership behavior that drives profit ability in your organization. McGraw-Hill, New York: NY.

*4
お問い合わせはpermissions@clg.comまで。

島宗 理 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2015/9/17)、出典:出版社HP

目次

まえがき

第1章
企業は行動なり
1-1 行動なくして業績なし
行動公式 V=B
1-2 リーダーの行動が原動力
行動公式 V=BL×BF
コラム リーダーシップのリスクと可能性
1-3 リーダーシップの落とし穴
個人攻撃の罠
1-4 ポジティブな行動マネジメント
V+=Bを満たす行動を見つける
コラム 成果と行動を区別する
1-5 180度の視点変換
心理学の罠
演習 理想の上司の行動を課題分析する
コラム 行動とは死人にできないことすべて
1-6 成果を生む行動を絞り込む
行動の罠

第2章
業績をつくる行動公式
2-1 行動は随伴性で変わる
行動公式 V=A×B×C
2-2 随伴性なくして、行動なし
継続の幻想
2-3 知られざる強化の力
自主性の源泉
コラム 自主性の罠?
2-4 科学の使い方(1) 行動の原因推定
2-5 科学の使い方(2) 仮説検証と改善

第3章
リーダーシップを原動力に
3-1 業績にインパクトを
標的行動の焦点化
演習 営業マネージャーの行動を焦点化する
演習 営業会議の行動を焦点化する
演習 経費削減につながる行動を焦点化する
コラム NORMSで標的行動をチェックする
3-2 期待をわかりやすく伝える
先行事象の明確化
演習 焦点化した標的行動を部下に伝える
ケースファイル#01 意外に難しい焦点化
3-3 標的行動を強化する
後続事象の有効化
コラム グローバリゼーションとローカリゼーション
3-4 失敗は成功のチャンス
E-TIPで大逆転
演習 行動のなぜを考えるABC分析接客編
演習 行動のなぜを考えるABC分析プレゼン編
ケースファイル#02経営戦術と直結する焦点化
3-5 行動をカイゼンする仕組み
革新エンジン
ケースファイル#03パートタイマーにもリーダーシップを
ケースファイル#04小さな成功から大きな成果へ

第4章
リーダーシップを育てる仕組み
4-1 リーダーを育てる
行動公式V(BF)=A×BL×C
コラム「1:4の法則」とオオカミ少年
コラム リーダーシップとマネジメントとビジョナリー
4-2 ダブルPBL
研修の罠から脱却する
4-3 CLGのコンサルテーション
大規模介入による全社的な取組み
ケースファイル#05大規模な行動介入のための4ステップ
ケースファイル#06 M&Aの要になるのも、やはり行動

Question & Answer
第5章
よくある疑問や誤解
Q 部下を叱ってはいけないのですか?
Q 褒めすぎたら部下がつけあがりませんか?
Q 感情は無視するのでしょうか?
Q 自主性を重んじると仕事が遅くなりませんか?
Q やってみたいのに、まわりの理解が得られません。
Q やってみたのに、行動が変わりません。
Q 標的行動が決められないときの焦点化は?
Q 欧米型のマネジメントが日本の会社になじむのでしょうか?
コラム 見かけにまどわされず、本質を見抜こう
Q 行動分析学を知らない立派なリーダーもたくさんいますよね?
コラム マニュアルで自発性を高める仕組み

あとがき
INDEX

島宗 理 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2015/9/17)、出典:出版社HP