科研費採択に向けた効果的なアプローチ

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科研費申請の指南書

成功する科研費獲得の効果的なポイントが、自然科学系、人文・社会科学系それぞれの視点から具体的に解説されています。採択される書き方、不採択の場合の原因分析の仕方や改善点まで理解できる画期的な内容となっています。巻末には、大学別の採択率や教員数も掲載されています。

塩満 典子 (著), 北川 慶子 (著)
出版社 : 学文社 (2016/9/2)、出典:出版社HP

はじめに

温故知新,新しい良いものは,過去の良いものを見て聞いて,学んで作られる。最初は,誰も優れた申請書をどのように書いてよいかわからない。

今から8年前,平成20(2008)年に室伏きみ子先生と筆者の共著『研究資金獲得法』が出版された後,具体的に科研費獲得のためのポイントとノウハウを伝える解説書が複数出版された。特に,児島将康先生の『科研費獲得の方法とコツ』(羊土社)は,ご自身の申請書をもとに,わかりやすく優れて有用な解説が行われているため,筆者の研究資金獲得法の講演や申請書作成のアドバイスの際に,良書としてお薦めしてきた。

一般に,申請書の書き方は,研究室の主宰者(プリンシパル・インベスティゲーター:PI)?先輩から若手へ,日常の中で語り継がれる。このため,書き方がわかっている研究室は,次から次へと研究資金を獲得し,正のスパイラルで活動を拡大していくが,そうでない研究室の活動は縮減していく。教授や先輩が書き方のコツを知っているかどうか,教えてもらえる環境かどうかは,研究者としてのキャリアプランにも大きく影響する。
本書では,科学技術振興機構(JST)で審査事務局経験を持ち,奈良先端科学技術大学院大学,お茶の水女子大学,宇宙航空研究開発機構(JAXA)などで,資金獲得支援の成功を重ねた筆者が,科研費獲得のための基本的なポイントをお伝えする。また,共著者の北川慶子先生が,ご自身の採択申請書をもとに,人文・社会科学研究,自然科学と人文・社会科学との異分野融合型研究の申請書の書き方のポイントを具体的に解説する。さらに,不採択事例に基づき,向上点の分析を行うという画期的な内容も含んでいる。

科研費を獲得したいが,まわりに良いメンター,アドバイザーを見つけられない,育児,介護,看護で,夜遅くまで研究室に残れない,学会活動に出られない,懇親会で話を聞くことができない。そもそもPIや先輩との付き合い方がわからない,得意でないという方々は多い。多くの方々の切実なニーズにお応えし,課題解決に一歩でも近づくお役に立つことができたら,とても嬉しく思う。

優れた科学的成果の創出は,人類の知的財産の蓄積につながるだけでなく,その波及効果で新たな社会的価値の創造,イノベーションを促し,産業や人々の暮らしに好影響をもたらす。
読者の皆様が本書を活用して科研費採択に成功するための効果的アプローチを見つけていただきたいとの真摯な思いをタイトルにこめた。新しい学術のフロンティアを先導する一助にしていただけたら幸いである。

平成28(2016)年7月
塩満典子

塩満 典子 (著), 北川 慶子 (著)
出版社 : 学文社 (2016/9/2)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 科研費採択のための基本と重要ポイント
第1節 高度な専門性・先進性が感じられる伝え方
1. 的確なタイトル表現
2. 先進的で高度な専門性を有する研究内容
3. 審査委員構成を意識した伝え方8
第2節 申請書作成のプロセスチェック
1. はじめに
2. 申請書作成の一般的プロセス
3. 計画から実行のPDCAサイクル
4. 自分のポジショニングと種目選択
Column FAQ1
第3節 重要性が伝わる書き方のポイント
1. 最初のつかみを大切に
2. 自分のポジショニングと評点分布をイメージする
3. 比較優位性を印象づける
4. 研究倫理とコンプライアンス遵守
5. チャレンジ精神と十分な準備確保
Column 「超低速ミュオン顕微鏡が拓く物質・生命・素粒子科学のフロンティア(新学術領域)」の申請と採択

第2章 制度から見た科研費採択のポイント
第1節 科学研究費補助金制度
1. 制度の概要
2. 予算額の推移
3. 応募・採択の状況
4. 研究種目の目的と資金規模
5. 公募から内定までの流れ
6. 評定基準
第2節 評定要素・評点と科研費採択のポイント
Column 科研費申請のアドバイスを受けて得られたもの

第3章 科研費(人文・社会科学系)取得における申請書作成のポイント
第1節 基盤B/海外学術調査採択事例による「研究課題」の包括的表現方法
1. 「研究課題」の決め方
第2節 「研究目的(概要)」の簡潔な書き方
第3節 「本研究の学術的背景等」の具体的・明確な書き方
第4節 「研究計画・方法」の具体的・明確な書き方
第5節 「準備状況・発信方法」の具体的・明確な書き方
第6節 「重複応募, 研究内容の相違点」の書き方
第7節 「研究業績」の書き方
第8節 「これまでに受けた研究費とその成果等」の書き方
第9節 「人権の保護及び法令等の遵守への対応」の書き方
第10節 「研究経費の妥当性・必要性」の書き方
第11節 「研究費の応募・受入等の状況・エフォート」の書き方

第4章 不採択申請書の実例分析から採択への道へ
第1節 研究種目と応募分野の選び方
第2節 大切な審査結果の通知分析
第3節 事例研究(挑戦的萌芽研究と基盤研究C)
1. 採択申請書(「挑戦的萌芽研究」)の分析
2. 不採択申請書の分析と採択の為の徹底研究
3. 不採択事例から挑戦的萌芽研究の研究目的・研究計画の書き方を考える
4. 不採択通知評価Bの分析
Column FAQ2
Column FAQ3

第5章 異分野融合型研究による研究資金を獲得するための基本的考え方
第1節 人文・社会科学系から自然科学系への接近における基本的考え方
1. 制度の発展
2. 異分野融合型研究の特徴
3. 進捗評価と継続
第2節 課題解決に向けた異分野業績への強い関心と最適なパートナー発見
第3節 「異分野融合研究」申請書作成のポイント
1. 採択申請書からみた課題の設定方法
2. 「異分野融合を図る研究分野」の設定方法
第4節 研究構想から「研究計画」の書き方の手順
1. 研究計画作成前のポイント
2. 研究計画を書くポイント

あとがき
資料

資料目次
図1 研究者が所属する研究機関別 採択率 上位30機関 (平成27年度 新規採択分)
図2 研究者が所属する研究機関別の採択件数(平成27年度 新規+継続, 上位50機関) (全機関)
図3 研究者が所属する研究機関別の採択件数(平成27年度 新規+継続, 上位50機関) (国立大学)
図4 平成27(2015)年 教員数上位50機関(国立大学)

表1 研究者が所属する研究機関別 採択率 上位30機関(平成27年度 新規採択分)
表2 研究者が所属する研究機関別の採択件数(平成27年度 新規+継続, 上位50機関) (全機関)
表3 研究者が所属する研究機関別の採択件数(平成27年度 新規+継続, 上位50機関) (国立大学)
表4 平成27(2015)年 大学別教員数(職階別・男女別, 国立大学, 教員数順)
表5 平成27(2015)年 大学別教員数(職階別・男女別, 公立大学等, 教員数順)
表6 文部科学省ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ・女性研究者支援事業実施代
表機関

塩満 典子 (著), 北川 慶子 (著)
出版社 : 学文社 (2016/9/2)、出典:出版社HP