科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第2版

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申請書の添削の仕方がよくわかる

申請書を書いたが採択される自信がない、この欄が上手く書けない、審査委員の目線を知りたい…という方におすすめの1冊です。さまざまな申請書の実例をもとに、書き方のコツや改善点を学ぶことができます。本書を参考にすることで自身で申請書を添削し、ブラッシュアップさせることができるでしょう。

児島 将康 (著)
出版社 : 羊土社; 第2版 (2019/7/28)、出典:出版社HP

【注意事項】

本書の情報について
本書に記載されている内容は,発行時点における最新の情報に基づき,正確を期するよう,執筆者,監修・編者ならびに出版社はそれぞれ最善の努力を払っております.しかし科学・医学・医療の進歩により,定義や概念,技術の操作方法や診療の方針が変更となり,本書をご使用になる時点においては記載された内容が正確かつ完全ではなくなる場合がございます.また,本書に記載されている企業名や商品名,URL等の情報が予告なく変更される場合もございますのでご了承ください.

第2版のはじめに

この本のコンセプトは「ひととおり書かれた科研費の申請書をよりよいものにしていくための方法論である,姉妹書「科研費獲得の方法とコツ」は申請書をゼロからどのように作成していくのかを,そしてこの本はある程度作成した申請書をどのように改良していくのかを解説したものである.この2冊によって申請書の作成から内容のチェックまで行えるようにできている.

今回,第2版に改訂したのは,「科研費改革」による申請書の新しいフォーマットに対応させるためだ.そのため,章立てはすべて平成31年度応募の新しい申請書フォーマットに合わせて変更した,例文については,前版のものでもそのまま参考にできるものは新しい申請書に合わせて説明を少し変えた,新しい申請書で増えた項目については例文を新しく用意し,新しい申請書で不要になった例文は削除した.例文はいろんな大学のさまざまな分野のものを取り入れている.ほとんどの例文はなんらかの変更を加えて,申請者が特定できないように配慮している.そのため内容的に不自然なものもあるだろうが,ご容赦願いたい.

この本の初版を作っているときには,この本を利用するのは科研費を申請する人だけと思っていたが,その後のセミナーなどで知ったのは,URA等の研究支援の方々や事務系の方々もおおいに利用しているということだ,研究機関をあげて競争的研究資金の獲得に積極的に取り組んでいることが伺える.拙著や科研費セミナーで何度も言っているように,科研費に採択されるための絶対的な方法などない.日頃から研究をきちんとやって業績として残すこと,そして申請書をきちんと書いてよく推敲すること,それさえやっていれば必ず採択される.この本を参考にして,申請書をよりよいものに仕上げていってほしいと思う.

2019年6月
児島特康

初版のはじめに

先に出版した「科研費獲得の方法とコツ」が長編小説だとすると,今回の「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」は短編小説集だ.
この本は,ひととおり書かれた科研費の申請書をよりよいものにしていくために,どのように直していけばよいか,その方法論を豊富な例文を使って解説したハンドブックだ,申請書をゼロから作成するために参考にするための本ではない.

私が姉妹書「科研費獲得の方法とコツ」の初版を出版したのは2010年のことである.幸い,この本は研究者,特に科研費応募の初心者の方々や,応募経験が浅い方々に好評で,多くの方々から役に立ったとの言葉をもらった.また本の出版を契機として,全国のいろんな大学や研究機関で,科研費申請書の書き方についてのセミナーを行ったり,申請書のチェックを頼まれたり,申請者とワークショップでともに勉強したりしたそれは非常に得がたい経験であり,私自身おおいに勉強になることが多かった.また私は理系の研究者で,先の本は理系の例文が中心だったにもかかわらず,予想外のことに文系の方にもよく参考にしてもらい,また文系学部しかもたない大学でのセミナーの機会もいただいた.

このような経験から,研究者の方々が申請書の作成において悩む箇所やどうしたらいいのかわからなくなる部分などに,ある共通のパターンがあることがわかってきた.つまり理系文系にかかわらず,申請書の重要なポイントは同じだということだ.それは私の頭で考えたことではなく,実際の研究者の方々との話し合いや申請書のチェックによってわかってきたことである.また,いったん出来上がった申請書について,どこがよくない部分なのか,それをどのようにして改良していったらいいのかなどを参考にできるような本があれば便利だろうということもみえてきた.つまり,自分が書いた申請書にもあてはまる共通のパターンが含まれた例文とその改良法(アドバイス)がまとまっていれば,申請書の自己チェックにおおいに役立つだろう.この本はそのような考えのもとで作成した(ただし,内容は私の独断と偏見も含まれることに注意してほしい,審査が合議である以上,私の考えがすべて正しいとは限らないのだ).

例文はさまざまな分野の実際の申請書からの抜粋を基本とした,いくつかの例文は私自身の申請書を変更して使ったものもある,科研費の性質上,申請者が特定できないようにかなり変更を加えている.そのため,内容に関しては架空の化学反応・テーマ・語句になっている箇所がある.専門の方々には非常に違和感を感じる例文もあると思うが,ご容赦願いたい.

最後になるが,本書のアイデアを一緒に考えてくれた羊土社編集部の吉田さん,まとめにくい内容を一冊の本にまでもっていってくれた冨塚さん,そして例文のもととなった申請書を使わせていただいた多くの研究者に感謝する.

科研費の採択は年々難しくなってきている.しかし私自身が多くの申請者とワークショップなどで勉強した経験から言えることは,研究計画のアイデアをしっかりもったうえで,きちんと書いていれば,いつか必ず採択されるということだ.この本を参考にして,申請書をよりよいものに仕上げてほしいと思う.皆さんの検討を祈りたい.

2016年7月
児島将康

本書の構成・利用法

caseタイトル
多くの申請書を添削し,採択に導いてきた著者が,さまざまな分野の実際の申請書から重要な例文を厳選し,審査委員目線でコメント.

申請分野
比較的よくみられる関連の深い分野を濃く示します.

重要度 ★★★(採択に影響大)↔︎★☆☆(審査委員の心証次第)
頻度 ★★★(まずはここを直すべし)↔︎★☆☆(配慮できれば二重丸)

どこがよくないか
問題のある申請書の実例を提示審査委員の気持ちになって,どこがよくないのかを考えてみてください.

インデックス
8つの改良方針(ふさわしく/はっきりと/具体的に/簡潔に/推敲のヒント/レイアウト/図表/アピールする)で該当するものを濃く示します.

申請者のギモン
フォントの相談や図版の見栄えなど,ありがちな28の疑問について具体的に回答しています.

アドバイス&添削例
著者からのアドバイス,例文ごとに添削のポイントを明示します.

改善例
審査委員の目を引く,具体的な改善例を提示します.

なぜよくないのか?
どのように改良すればよいか?
各例文のよくない点と改良の方針を示します.イメージしやすいように各例文を具体的に取り上げ,応用しやすいように一般化した解説をしています.

書き方のポイントを身につけたい
①どこがよくないか の例文を使い,caseタイトルをヒントに添削の腕試し
②アドバイス 添削例 で改良のポイントを確認!
③なぜよくないのか? どのように改良すればよいか? を熟読すれば,セルフチェック
④ふとした思いつきは,申請者のギモンに類例がないかチェック!

申請書のブラッシュアップに役立てたい
※申請書の草案を用意してください(草案作成に難しさを感じる場合は「補遺1」を参照)
①セルフチェック/第三者チェックで,改良すべき点をあぶり出す
②目次や付録,索引を活用して自分の改良すべき点に近いcaseにアクセス!
③どのように改良すればよいか? 改善例 を参考に, 改良してみましょう
④①~③を繰り返して,魅力的な申請書に仕上げ,応募!

科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック第2版

児島 将康 (著)
出版社 : 羊土社; 第2版 (2019/7/28)、出典:出版社HP

CONTENTS

第2版のはじめに
初版のはじめに
本書の構成・利用法

1章 総論
▶︎申請書全体から受ける「わかりにくい」印象を改善するにはどうしたらよいか. まずはそこから解説する.
case01 これで完成!?文章が下手で申請書の内容が頭に入ってこない
case02 図がわかりにくい
case03 箇条書きが多すぎてわかりにくい
case04 概要と本文で研究項目の数が揃っていない
case05 美しくない申請書は読むのが苦痛(1)
case06 美しくない申請書は読むのが苦痛(2)
case07 一文が長くて読みにくい
case08 具体的に何を指しているかがわからない
case09 指示代名詞が何を指しているのかわかりにくい
case10 強調したい部分が目立たない
case11 簡潔に書かれすぎて内容がわかりにくい
case12 研究のキーワードが埋もれて重要度が伝わってこない(1)

2章 研究目的, 研究方法など:概要
▶︎2~6章では, 申請書のコアとなる「1研究目的, 研究方法など」欄のブラッシュアップのポイントを解説する. 2章の「概要」は審査委員が最初に読む大事な部分なのに, 必要なことがきちんと書けていない人が多いので特に気をつけてほしい.
case13 必要な内容が十分に書かれておらずわかりにくい(1)
case14 概要とはいえ中身に乏しく具体的でない
case15 「背景」の記述が十分でなく解決すべき課題(学術的「問い」)をつかみにくい
case16 「目的」と「背景」が分断されていてわかりにくい
case17 唐突なはじまりで読みにくい
case18 研究のキーワードが埋もれて重要度が伝わってこない(2)
case19 概要には必要ないもの(1)
case20 概要には必要ないもの(2)
case21 「目的」が埋もれていて見つけにくい
case22 科研費の目的としてふさわしいか(1)-

3章 研究目的, 研究方法など:背景
case23 「(1)本研究の学術的背景」の解説が長すぎてわかりにくい
case24 「(1)本研究の学術的背景〜〜学術的「問い」」に一般的な情報がなくわかりにくい
case25 研究遂行能力が十分にアピールされていない
case26 「目的」「背景」が混在していてわかりにくい

4章 研究目的, 研究方法など:本研究の目的
case27 「本研究の目的」がわかりにくい
case28 「検証する」「開発する」だけでは研究目的としては不十分
case29 科研費の目的としてふさわしいか(2)

5章 研究目的, 研究方法など独自性, 創造性
case30 「(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性」がわかりにくい
case31 この研究ならではの特色がわかりにくい(1)
case32 表現が控えめすぎて実現できるのか不安
case33 「学術的独自性と創造性」としてふさわしいか

6章 研究目的, 研究方法など:何をどのように
case34 研究項目が多すぎて何をしたいかが散漫に見える
case35 必要な内容が十分に書かれておらずわかりにくい(2)
case36 方法論は具体的なのにわかりにくい
case37 研究計画の内容が少なすぎる
case38 年度ごとの実験計画の詳細しか書かれていない
case39 研究項目ごとに計画の詳細しか書かれていない
case40 研究方法が具体的に何を指しているかがわからない(理系の例)
case41 研究方法が具体的に何を指しているかがわからない(文系の例)
case42 アンケート調査やプログラム作成の内容がないのでイメージできない
case43 データ分析の種類だけで内容がないのでイメージできない
case44 論文発表・学会発表・本の刊行は研究計画や方法としてふさわしいか
case45 たくさんの項目を文章だけで説明しようとしていてわかりにくい
case46 この研究ならではの特色がわかりにくい(2)
case47 研究項目ごとの「予想される結果と意義」がなく意図がつかみにくい
case48 締めの言葉がなく完結した感じがしない
case49 前欄に戻らないと記号や略語の意味を確認できない
case50 計画通りに進まないときの対応を考えていない印象を受ける
case51 誰に相談するかがあいまい

7章 本研究の着想に至った経緯など
▶︎「本研究の着想に至った経緯」や「国内外の研究動向」を示す欄のポイントを解説する.申請者ならではのオリジナリティをアピールして, 研究の重要性や意義を示そう
case52 「本研究の着想に至った経緯」にオリジナリティがない
case53 「本研究の着想に至った経緯」が平凡すぎる
case54 「準備状況」で独りよがりな表現が目につく
case55 「(2)関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」が具体的でない

8章 応募者の研究遂行能力及び研究環境
▶︎以前の申請書のように論文や学会発表をあげるだけではダメ.
研究の実現可能性を示すポイントを解説する.
case55 「(1)これまでの研究活動」に論文のリストしか載せていない
case57 「(1)これまでの研究活動」に載せた学会発表の情報が不十分
case58 「(1)これまでの研究活動」に申請書の研究テーマとの関連がない
case59 「(2)研究環境」の書き方が主観的で, 具体性が不十分(1)
case60 「(2)研究環境」の書き方が主観的で, 具体性が不十分(2)

9章 人権の保護及び法令等の遵守への対応
▶︎加点はないが減点がある欄なので気をつけよう.
case61 「人権の保護及び法令等の遵守への対応」が中身に乏しく具体的でない

10章 その他
▶︎加点はないが減点はある欄のポイントや, どの欄でも当てはまる注意事項を解説する. 特に後者に関するアドバイスは, 審査委員のことをよく考えた申請書にするためのテクニックになりえる.
case62 「研究経費とその必要性」に必要性が書かれていない
case63 なぜ海外調査が必要なのかがあいまい
case64 強調スタイルがいくつもありどこが重要かわからない
case65 図や画像が何を示しているのかわからない
case66 写真が不明瞭で意図がよくわからない
case67 図表の文字が小さくて読みにくい
case68 論文から流用された図は申請書ではわかりにくい
case69 回りくどい表現でなくてもよい表現がある
case70 主観的な表現, 刺激する表現が目につく
case71 略語の種類が多すぎて把握できない
case72 なぜ最新あるいは流行の機器を使うかがあいまい
case73 時事問題への配慮が足りない
case74 表記が異なっており同じものを指すか違うものを指すかがあいまい
case75 「関連性」「関係」をもつのは何かがあいまい
case76 「AとBを用いて, CとDを行う」はわかりにくい
case77 雑なレイアウトで整った感じがしない
case78 不適切な接続詞を使っている

補遺1:申請者のための「申請書を書く, 添削する」基本
補遺2:研究支援者の申請書チェックの心構え

付録1:セルフチェックリスト
付録2:研究支援者のためのチェックリスト
付録3:インデックス別アドバイス一覧
付録4:申請分野別関連case早引きリスト
付録5:実際の申請書の添削例

索引

申請者のギモン
1 ひらがなと漢字
2 フォント
3 長い語句
4 外来語
5 模式図か計画表か
6 リバイス中, in press
7 図の配置 その1
8 図の配置 その2
9 行間
10 (続)行間
11 図の解像度
12 タイトル風
13 フォントの大きさ
14 (続)フォントの大きさ
15 見出しの工夫
16 図の情報の向き
17 学会参加
18 わかりやすい図に その1
19 わかりやすい図に その2
20 わかりやすい図に その3
21 わかりやすい図に その4
22 雇うという記述
23 強調 その1
24 強調 その2
25 強調 その3
26 強調 その4
27 スペースがないとき
28 字下げ

児島 将康 (著)
出版社 : 羊土社; 第2版 (2019/7/28)、出典:出版社HP