サブスクリプションで売上の壁を超える方法(MarkeZine BOOKS)

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サブスクサービスを継続的に利用してもらうためには

本書は、サブスクリプションサービスを継続して利用してもらうためにはどうすればいいかという点に重点を置いて、サブスクリプションについて基礎から解説しています。実務的な話を用語の解説を加えながら説明しているため、入門者からサブスクビジネスに関わっている人までおすすめです。

西井 敏恭 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/23)、出典:出版社HP

はじめに

この本を手に取っていただき、ありがとうございます。西井敏恭です。
「サブスクリプションで売上の壁を超える」が本書のテーマですが、みなさんはサブスクリプションって、どんなビジネスだと思いますか。

毎月定額の、使いたい放題のサービス?
それとも、定期的に売上が立つ、収益性の高いビジネスモデルでしょうか?

初めにみなさんには、サブスクリプションに対して抱いているイメージを一度リセットしてほしいと思います。なぜならサブスクリプションは、新しいビジネスモデルの話ではなく、マーケティングの捉え直しの話だからです。

私は前著『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』で、「マーケティングとは、売れ続ける仕組みづくりと、買いたい気持ちづくりである」と定義しました。
なぜかというと、これまでの日本のマーケティングは、広告をはじめとしたプロモーションに寄りすぎていたので、それを引き戻したいという想いがあったからです。
とりあえず商品を買ってもらうことをゴールとし、そのためにプロモーションを行い、できるだけ顧客獲得単価を下げる打ち手が優先されてきました。
本当は、顧客と良い関係をつくり、その関係を続ける仕組みをつくることがマーケティングの役割なのですが、商品やサービスについて、顧客がどう感じているかを多角的に知るのは難しい時代だったのです。

しかし、スマートフォンやIoT(Internet of Things)、AIなどのテクノロジーが進化したおかげで、顧客のデータを集めることは以前よりも容易になりました。さらに、幅広い種類のデータを集められるようになったため、顧客の気持ちによりアプローチしやすくなっているのです。
つまり、プロモーションに重きを置いた、商品・サービスを買ってもらうことがゴールのマーケティングではなく、商品を買ってもらってから、サービスを契約してもらってからのマーケティングが考えられるようになっています。
これが、マーケティングの捉え直しであり、サブスクリプションにおけるマーケティングの基本でもあります。
テレビや雑誌が見られなくなった、広告が効かなくなったという実感は、みなさんももっていると思います。商品やサービスを売るまでがマーケティングの中心だった時代が、ついに終わろうとしている。
企業は、商品やサービスに継続的なメリットやベネフィットをもたせ、顧客が使い続けたいという気持ちをつくることを、マーケティングのゴールにしなければなりません。

サブスクリプションとは、顧客が商品やサービスを使い続けたい気持ちをつくること。
これを心に留めて、本書を読み進めてもらえると嬉しいです。

1回 何回も
企業 売れる 売れ続ける
ユーザー 買いたい 使い続けたい

顧客が継続して使い続けたい、と思うマーケティングを考える

さて、本題に入る前に自己紹介もかねまして、私が「サブスクリプションについて語ろう」と思った理由をお話しさせてください。
私がマーケティング業界で仕事をするようになってから、約16年が経ちました。2003年頃からネット通販会社のウェブマーケターとしてキャリアをスタートし、6年間お世話になった化粧品会社のドクターシーラボでは、デジタルマーケティングの責任者を務めました。
そして2014年からは、オイシックス・ラ・大地のCMO、現在はCMT(チーフ・マーケティング・テクノロジスト)として関わり始めました。同時に、コンサルティング事業をしている株式会社シンクロを起業し、ECだけでなく、メディアやアプリ、スポーツチームなど、多くの企業を支援し、そのうち80%はサブスクリプションに取り組んでいます。

オイシックスでの私のミッションは、同社の事業成長とそれを支えるサブスクリプション・プラットフォームの確立です。
「オイシックスって、野菜のECじゃないの?」と思われる方が、いらっしゃるかもしれません。
もちろん有機野菜を中心とした食材のECは行っていますが、実は「おいしっくすくらぶ」というサブスクリプションがメインの事業なのです。
オイシックスは、創業した2000年からサブスクリプションに取り組んできましたので、「オイシックスは先見の明がありますね」とよくいわれます。しかし、創業メンバーからは「最初からサブスクリプションビジネスをやりたくて今の形になったわけではない」と聞いています。
オイシックスが提供したい「豊かな食卓をつくる」という価値を実現しようとしてきた結果、今のようなサブスクリプションの形になったのです。実際に2000年当時、サブスクリプションという言葉を聞くことはほとんどなかったと思います。
おかげさまで、オイシックスの会員数は約20万人となり、サブスクリプションの「おいしっくすくらぶ」も、時代とともに変化をし続けています。この成長を支える土台に、サブスクリプション・マーケティングがあるのです。

気がつけば、サブスクリプションに取り組む企業やブランドが増えてきました。シンクロで支援している企業も、サブスクリプションで売上を伸ばしています。
一方で世間には、サブスクリプションの成長に伸び悩んだり、撤退してしまうサービスがあることも事実です。こうした状況は、インターネット市場が盛り上がり、「これからはネット通販だ」とさまざまな企業が進出した2000年代と似ているなと思います。あのときも、ネット通販で大きく成長した企業がある一方、すぐに撤退した企業も少なくありませんでした。
サブスクリプションとは、「顧客が商品やサービスを使い続けたい気持ちをつくること」といいましたが、サブスクリプションの難しさは、まさにこの顧客に使い続けてもらうことに他なりません。これが売上の壁として、私たちの前に立ちはだかります。
ですが、サブスクリプションは、面白くて挑戦しがいのあるビジネスだと私は実感しています。ちゃんと取り組めば、売上の壁は超えられます。
サブスクリプションを一時期の流行で終わらせては、もったいない。私が知るサブスクリプションのノウハウを広く伝え、多くの企業と顧客の幸せにつなげたい。
そんな想いから、この本を書くことになりました。

本書では、サブスクリプションの始め方から成長のさせ方までをわかりやすく実践的に解説しています。自社のサブスクリプションを成長させたい、改善したいと考える方にとって少しでも得るものがある内容にまとめました。
また、これからサブスクリプションに挑戦したいと考える方には、ぜひ本書を予習として読んでいただきたいと思います。そして、サービスがスタートしたときに復習がてら本書に立ち戻る。机上の空論ではなく、実践に役立つ一冊になれば嬉しいです。

それでは一緒に、サブスクリプションで売上の壁を超える方法を見ていきましょう。

西井 敏恭 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/23)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 サブスクリプションとは何か
サブスクリプションの定義
サブスクリプションは「使い続けたい気持ち」をつくる
なぜ今、サブスクリプションなのか
テクノロジーがマーケティングを変えた
サブスクリプションは月額定額制ではない
サブスクリプションはなぜ失敗するのか
広告の限界
すべての企業にサブスクリプションの可能性がある
従来のモデルからサブスクリプションに挑戦した企業
顧客の期待以上のサービスを提供する
ユーザーのペインを解消する
まとめ

第2章 サブスクリプション・マーケティングとは
マーケティングが変わる
サブスクリプション・マーケティングの3つのポイント
「買う」から「利用する」への変化
「買う」時代のマーケティング
「利用する」時代のマーケティング
サブスクリプションが商流を変える
データ活用による顧客体験の改善
新しいテクノロジーを生かす
顧客体験の中にデータを集める仕組みをつくる
テクノロジーで顧客の好みをカスタマイズ
データをどう理解するか
顧客と企業による成功の共創
顧客の成功を一緒につくる
顧客の成功を知る指標を設定する
顧客の成功を企業が積極的に支援する
顧客の成功体験を広げる
営業しないコミュニティマーケティング
まとめ

第3章 サブスクリプションの事業のつくり方
サブスクリプションは3つに分類できる
クラウド型とは
クラウド型サブスクリプションの特徴
シェアリング型とは
シェアリングエコノミーとサブスクリプション
予約購買・利用型とは
サブスクリプションの事業をつくるフレームワーク
PTCPPという5つのステップ
ステップ1 ペインの発見
ステップ2 トライアルで仮説検証
ステップ3 コアバリューづくり
ステップ4 事業計画の確定
ステップ5 プロダクトマーケットフィット
ゼロから事業をつくったクラウド型のサービス
サブスクリプションの拡大を促す3ステップ
ステップ1 共感
ステップ2 パーソナライズ
ステップ3 入口商品づくり
選ばれなければ意味がない
顧客に暮らしを提案できているか
サブスクリプションは暮らしを提案する
暮らしの提案は伝わりづらい
その暮らしを選ばない人もいる
顧客に退会をお願いしてもいい
顧客の成功体験をアップデートできているか
暮らしの変化をキャッチアップする
ビジネスアセットをおさえる
サービスを進化させていくチーム
まとめ

第4章 サブスクリプションのKPI
サブスクリプションのKPIの考え方
「ユーザー」「顧客」「会員」の違い
サブスクリプションのKPIは3つ
KPIは「林」で考える
会員数の考え方
「新規会員」「継続会員」「解約会員」に分ける
新規会員を考える3つの要素
解約会員は「新規」「中堅」「ベテラン」に分ける
稼働率の考え方
「稼働率が下がったからセール」は間違い
休眠会員は必ず起こす
単価の考え方
クラウド型およびシェアリング型の単価設定
予約購買・利用型の単価の設定
アップセルとクロスセルで単価を上げる
価格を上げることは悪いことか
解約率を下げる方法
もっとも大切な打ち手は何か
パーソナライズで解約を防ぐ
解約・再入会のハードルを下げる
見過ごされがちなカスタマーサポートの役割
カスタマーサポートはプロフィットセンター
セルフ解決やチャットボットを取り入れる
解約が顧客をよび込むという例外もある
まとめ

第5章 サブスクリプションの事業計画を立てる
未来を映すサブスクリプションの事業計画
従来のPLではサブスクリプションの収益は表せない
サブスクリプションの事業計画の立て方
エクセルでつくるサブスクリプションの事業計画
会員が増え、黒字になるまで
広告費はどのように計算するのか
顧客獲得の広告費はLTVから算出する
LTVを試算する
LTVを伸ばすことは解約率を下げること
まとめ

第6章 顧客中心の組織をつくる
従来型組織とサブスクリプション型組織の違い
従来型組織ではサブスクリプションは難しいか
サブスクリプション型組織は円形
各部署のプロをつなぐサービス進化チーム
顧客を中心として、部署間を横断的につなぐ
サービスの成長をけん引し、新事業を生む
組織の全員がマーケターであってほしい
組織とブランディングの幸せな関係
サブスクリプションのブランドとは
インナーブランディングの重要性
まとめ

終章 サブスクリプションとこれからのマーケティング
サブスクリプションがベストか
サブスクリプションで売上の壁を超える5つのポイント
ポイント1 LTVを伸ばすマーケティングをする
ポイント2 事業をつくるときは小さく始める
ポイント3 顧客の解約率を下げる打ち手が最重要
ポイント4 LTVがCPOを超えたときが広告投資のタイミング
ポイント5 顧客を中心とした組織をつくる
これからのマーケティング

おわりに

西井 敏恭 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/23)、出典:出版社HP