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【最新 – 新卒就活について学ぶためのおすすめ本 – 就活の全体像から企業視点まで】も確認する
就活における自己プランニングに何が必要か
本書は、就活において、自分の魅力をどのように伝えていくかを解説している本です。新卒採用という、日本独自の採用慣習はどのような特徴があるのか、現状を踏まえた上で、広告的な就活の有用性を紹介しています。採用側のインタビューも掲載されており、他の就活関連の本とは異なる内容となっています。
はじめに
日本の就職活動(以下、就活)は世界的に見てもユニークだと思う。いっせいに始まって、同じ時期に終わる。この本の執筆中にルールが廃止されると思いきや、しばらくは現行のルールでやっていくとのニュースが流れる中、一体いつになったらルールが変わるんだ? 結局、就活ルール廃止は発表されたが、ルールが変わっても実際は現状と変わらないのでは? と思ってしまう。二○二一年を機に日本が高度成 長期から厳守してきた就活スタイルは、一気に変革の道を歩む可能性が高い。私は電通のクリエーティブ・プランナーで、幼少期からアメリカ、日本、中国と三カ国を点々と暮らしてきた。今は日本という国に住み、広告という仕事に就いている。こうして当たり前のように日本語で執筆をしているのだが、混乱する読者もいると思うので少し自分について話そうと思う。何の前提もなしに外国人が日本の就活について語るのは、訳がわからないと思うので。
私は幼い頃から上海、東京、ロサンゼルスを点々としてきた。戦後、祖父が上海にあるアメリカ軍の駐在拠点である「洋房」と呼ばれている事務所に勤めていた経緯から、私は華僑として一八歳の時に単身アメリカに渡った。南カリフォルニア大学(USC)の在学時にはアメリカ空軍の将校訓練部隊(ROTC)に在籍し、大学を卒業後は日本の大手IT企業に就職した。当時はアメリカの連邦捜査局(FBI)や連邦航空保安局(FAMS)のような捜査機関に就職をしようとも考えていたが、時は二〇一一年で世界金融危機の二年後、アメリカの連邦政府が大幅に連邦予算を削減したのか、非常に求人が少なかったのを覚えている。「さあ、どうしたものか…」と思っていた矢先、ビジネスの道もあると思い、日本の民間企業を就職先に選んだ(なぜ日本の民間企業にしたかは後ほど)。「二十代はより多くの経験を重ねるべきだ」という考えから、通信、消費者行動、デジタル広告、そして外資ベンチャー企業の顧問として事業の立ち上げにも携わった。そんなことをいろいろとやっていたら、三十一歳の時に今までの経験を一回整理したくなり、MBA取得のために早稲田大学大学院経営管理研究科に入学。そして在学中にご縁あって、電通に入社することになった。これまでの経緯を数行で説明するのには無理があるが、要約するとこんな感じだ。
日本の大学院を修了したこともあってか、不定期的に後輩からOBOG訪問のオファーが来る。「社会貢献という意味で何かできたら」と思い、これまでに百人以上もの学生のエントリーシート(ES)や面接のアドバイスをしてきた。それと並行して若者の流行りや行動研究もしている。そんな経験をしていると「就活は広告手法を使えば、もっと上手くやれるんじゃないか?」と思うようになり、学生のESを読んだり、就活相談を受けていると、「これって、就社のための就活?」とか「この仕事、本当にやりたいの?」と疑問に思うことが多々ある。仕事を見つけるという意味では悪くないが、「せっかくの人生、毎日何時間も費やす仕事、もっとやりたいことに素直になって、上手くプランニングした方が良いよ」と老婆心ながら心配してしまう。だって残業抜きで考えても毎日の三分の一の時間は仕事に費やすんだから。中には選考の直前で駆け込み寺のようにアドバイスを求めてやって来る学生もチラホラいる。「あと一年早く会えていれば良かった…」と悔しくなることもある。なぜなら、もう少し時間があれば、自己プランニングはもっと上手くできるからだ。また、来てくれる学生の中には、「うん、これは良く書けているES。後はこの部分を強調して面接に臨むとより良くなるな」と思う子もいれば、「これは…うーん」と思ってしまう子もいたりする。
日本の就活事情は海外と比べて明らかに違うのは言うまでもないが、デジタル社会として「個」の時代が到来している中、私が就活していた頃と比べると、以前よりも自分をプランニングする機会も方法もグーンと増えたと思う。本書では、広告を稼業としている者として、「根本的な自己プランニングの方法を学生に伝えたい!」そんな思いで筆を執った。しかしながら、実は私もそんな偉そうなことが言える人間ではないので、章の最後に各業界の採用担当者のインタビューも載せた。複数の採用担当者に伺い、業界の動向も踏まえてまとめたつもりだが、各インタビューが業界を代表する意見という訳ではなく、また諸事情により会社名は明記できない。しかしインタビューでの言葉の一つひとつが採用担当者の本音なのだ。
就活に正解はないし、企業によっても採用基準は違う。でも自分という「個」は一人しかいない。その魅力を引き出したり、興味のあることを仕事にしたり、そのために行動したりする方法を広告手法の視点からアドバイスしていきたいと思う。海外を点々としてきた「アーロン・ズー」という個人が見た日本の「就活映え」の話に少し耳を傾けてくれたらと思う。本書が、加速するデジタル社会で活躍するであろう迷える学生たちの役に立ち、将来の仕事を人生の活力として貰えるきっかけになるのなら、それ以上に幸いなことはない。
(二〇一九年八月)
目次
はじめに
Chapter1 通年採用の時代に知っておくべきこと
日本の就活はマイノリティーだった?
本業だけでは取り残される時代
「知」のアップグレード
OBOG訪問の盲点
最強の働きがい、軍隊式ブランディング
業界モデルは二つだけ
見落としがちなライバルの本音
Chapter2 「ショートケーキ思考」で自分の魅力を引き出す
受験型就活 vs. 広告型就活
「軸」と「ES」は広告設計図から学べ
内定の根幹は経験にあり
二万人のエントリーに埋もれない秘訣
就活は受験ではなく、ビジネス
組み合わせ式自分デザイン
言い方は違う、本質は同じ「意味的価値」
Chapter3 【独占インタビュー】採用側の告白
全てのサービスを集約できる王者に!(外資総合プラットフォーム)
問われる商社マンの三要素(総合商社)
様々なテーマに好奇心と粘り強さを!(コンサル会社)
核となるのは会社のビジョンと人柄(PR会社)
やはりプロフェッショナルですね。(自動車業界)
今はジェネラリストです(通信業界)
就活ルール廃止で採用は前倒し?(金融業/メガバンク)
就活ルール廃止には影響されない? 金融業(資産運用)
採用方針は常に柔軟(電機メーカー)
自分の価値を語れる大切さ(化粧品メーカー)
あとがき