複素数とはなにか (ブルーバックス)

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複素数の入門書

本書は、複素数とは一体どんな数なのかを解説している、複素数の入門書です。基礎的なことについてその都度説明されているため、初学者でも無理なく読み進めることができます。本書の内容を理解しながら読み進めることで、複素数についてきちんと理解することができます。

示野 信一 (著)
出版社 : 講談社 (2012/10/19) 、出典:出版社HP

まえがき

複素数(あるいは虚数)とは,-1の平方根i=√-1を用いて,a+bi(a,bは実数)の形で表される数のことです.2乗すると-1になる「虚数」iというのは,奇妙でなじみにくいものでしょう.複素数とは何か,こんなものを考えて何かいいことがあるのか,という疑問に答えることが本書の目的です.
数については学校で時間をかけて習います.数の足し算,掛け算(九九)のような計算,分数,小数,負の数,無理数,指数の計算など,習う段階では難しかったことも,いつの間にか慣れて身についています.ところが,複素数を高校で習っても,数として受け入れるところまで慣れ親しんでいない人が多いようです.理工系分野で複素数を使っていても,やはり複素数に得体の知れないものという違和感を感じ,親しむとまではいかない人も少なくないと思います.実数は「現実」の数であるのに対して,虚数は「仮想」の数,不合理なものであるという,数学の歴史の中で複素数が受容されるまでに受けた抵抗を追体験しているかのようです.
複素数への違和感を取り払い,その美しさと有用性を知ってもらうために,本書を執筆しました.読み進む中で,だんだんと複素数に慣れ親んでもらうために,次のようなコースを辿ります.まず,自然数から整数,有理数,実数,そして複素数へと数の世界が広がっていく流れの中で複素数をとらえ,複素数を四則演算の代数的側面,平面上の点としての幾何学的側面の両面から詳しく見ます.本書でもっとも重要なド・モアブルの定理とその幾何学的理解を用いて,1のn乗根とその応用,美しい数式として名高いオイラーの公式

eiθ=cosθ+isinθ

の証明を与え,複素数の応用のいくつかを取り上げます.
基礎的なこともその都度説明するようにして,初学者や以前勉強したことを忘れてしまった人が無理なく読めるように配慮しました.一方で,話の筋道をきちんと辿ってしっかり理解してもらうことを重視しました.決して平坦な道のりではありませんが,わかったときの達成感は格別のものです.数式が多くて難しく感じる部分もあるかもしれませんが,難所は保留して先に進み後でじっくり考えるなど,自在に取り組んでもらえればと思います.
編集者の梓沢修氏には,執筆を支えていただくとともに原稿に対して有益な助言をいただきました.前任の岡山理科大学,そして現在所属する関西学院大学のスタッフ,学生たちからは様々なヒントをもらいました.この場を借りて感謝申し上げます.

2012年 盛夏の裏六甲にて
示野 信一

示野 信一 (著)
出版社 : 講談社 (2012/10/19) 、出典:出版社HP

目次

第1章 数の広がり
§1 いろいろな数
§2 四則演算
§3 減法と負の数
§4 乗法と負の数
§5 べき乗

第2章 複素数の四則演算
§1 虚数の兆し
§2 複素数
§3 複素数の四則演算

第3章 複素数の幾何学
§1 複素数平面における加法と乗法
§2 複素数と三角関数
§3 複素数の定義

第4章 複素数と方程式
§1 複素数と2次方程式
§2 1のべき根と方程式
§3 方程式の解の存在と解法

第5章 べき乗からオイラーの公式へ
§1 複利計算と指数
§2 指数関数の折れ線近似
§3 オイラーの公式
§4 指数関数と三角関数
§5 べき級数を用いたオイラーの公式の証明
§6 オイラーの公式の奇妙な仲間たち

第6章 複素数の応用
§1 複素数と平面幾何
§2 複素数と三角関数
§3 さらなる発展と応用

示野 信一 (著)
出版社 : 講談社 (2012/10/19) 、出典:出版社HP