複素数のはなし―見えない数を使いこなす

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複素数の応用を学ぶ

高校で教わる複素数と大学で学ぶ関数論の間には大きなギャップがあります。本書は、そのギャップを埋めるため、複素関数に関する高校の知識を前提とし、複素数の応用に重点を置いています。大学の関数論の理解を手助けする一冊です。

鷹尾 洋保 (著)
出版社 : 日科技連出版社 (1997/10/1) 、出典:出版社HP

まえがき

複素数については、理科系を志望する高校生の皆さんは、高校の数学ではじめて出合うことでしょう。そこでは、2次方程式の根の求め方から虚数単位iを学び、複素数平面や一部の写像までが取り上げられています。そして、厳しい受験戦争を経て大学に入ったとします。大学では「関数論」の名の下に複素数の関数について整然とした理論が教えられます。

ところが、高校で教わる複素数と、この関数論の間は大きなギャップがあるように思えてなりません。三角関数を複素数の指数関数で表わせば、その積分がやさしくできることは高校生にも分かるはずですが、高校では教えていません。大学では、関数論まで行く前に、微分方程式や電気回路を解くために、突然のように複素数が現われて戸惑うこともあります。また、関数論の理論は精緻なものですが、かなり煩雑で、複素数を応用すると何ができるかが分かるのは、かなり内容が進んでからです。

わたくしは元来数学では素人です。そのわたくしがこの『複素数のはなし』を書こうと思ったのは、自分の経験からこのギャップを何とか埋められないかと考えたからです。

そこで、まず、わたくしは高校の知識を基礎にした複素数の応用の話を取り上げました。つぎに、関数論に話を進めますが、複素数を応用するとこんなことができるという目標を常に示しつつ、説明することに努めました。複素関数の理論は最小限とし、応用に重点を置きました。

高校生には高校生の利用の仕方があり、また大学で関数論で戸惑っている方にも理解の助けとなるようにと念じて枠組みを作りました。

複素数の関数の応用としては、「等角写像」と「定積分の計算」という2つの主な分野がありますが、皆さんの必要に応じ、そのどちらへも基礎の部から別々に進めるように構成したつもりです。

この日科技連出版社の数学関連の本には、大村平という優れた著者がいます。大村さんは40年来の先輩であり、友人でもあります。彼の勧めによりわたくしは先に『微分方程式のはなし』を書き、そして、今回も貴重なアドバイスを頂き、この本を書きました。厚く感謝します。

また、円柱や翼型まわりの流れの写真については、久保田弘敏東京大学教授のご尽力を頂きました、日科技連出版社の山口忠夫部長にも出版にあたって適切なご助言を頂きました。このお二人にも厚くお礼を申し上げます。

この本が複素数を理解し、それを応用することに少しでも役にたてば、筆者のこれに過ぎる喜びはありません。

平成9年8月
鷲尾洋保

鷹尾 洋保 (著)
出版社 : 日科技連出版社 (1997/10/1) 、出典:出版社HP

目次

まえがき
1. はじめに—複素数を使うとできること

第1部 複素数とはどんなもの
2. 見えない数—i
数の生い立ち
虚数の登場
3. 見えない数を見る―複素数平面—
複素数平面
複素数の四則計算
2乗・平方根
1のn乗根を求める
4. 不思議な数―π,i,e
eの発見
テイラー級数
eを求める
5. 三角関数は指数関数の子供
三角関数を複素数で表わす
三角関数の公式をだす
三角関数の積分
6. 愛の愛情i^-i―複素数の関数—
指数関数
対数関数
ベキ関数
複素数の三角関数・双曲線関数

第2部 複素数を使ってみよう
7. 振動を複素数で表わす
8. 微分方程式を解く
複素数を使って微分方程式を解く
ネライをつけて微分方程式を解く
揺さぶられる運動
9. 電気屋さんの必需品―複素インピーダンス—
インピーダンスが複素数なわけ
並列の回路のインピーダンス
電流を求めてみよう
共振回路
10. ダッチロールの形―連立微分方程式―
飛行機の運動方程式
同次方程式を解く
ダッチロールの形を求める

第3部 形も流れもかえる—等角写像の応用―
11. 複素数と等角写像
等角写像とは
正則関数
等角写像のいろいろな例
12. 固体の中の温度分布―ラプラスの方程式―
温度分布の方程式
温度分布を等角写像する
逆の等角写像
寺円与像の等角写像
13. 流れを変えるー流体力学への応用―
流れの方程式
流れ関数
流れを等角写像する
円柱のまわりの流れを求める
「つばさ」のまわりの流れ―ジューコウスキー変換
14. 直線を折り曲げるーシュヴァルツ・クリストッフェル変換―
x軸を折り曲げて三角形を作る
セキ(堰)を越える流れ

第4部 積分せずに積分する—複素積分―
15. 複素積分の成り立ち
複素関数の積分
正則関数
複素積分の例
正則関数の周回積分
16. グリーン上のホール—特異点―
特異点
特異点の種類
ローラン級数
特異点とローラン級数
17. 積分の切り札—留数
ローラン級数を積分する
留数
留数の求め方
多くの特異点があるとき
18. これまでのまとめ
まとめ
複素積分の実際
19. 実数の定積分
あらすじ
タイプ1 ∫_(-∞)^∞▒〖g(x)/f(x) dx〗
タイプ2 ∫_0^2π▒f(sin⁡θ,cos⁡θ )dθ
タイプ3 ∫_(-∞)^∞▒〖(g(x) cos⁡mx)/f(x) dx〗,∫_(-∞)^∞▒〖(g(x) sin⁡mx)/f(x) dx〗
その他の定積分

クイズの解答
索引

鷹尾 洋保 (著)
出版社 : 日科技連出版社 (1997/10/1) 、出典:出版社HP