SDGsとまちづくり:持続可能な地域と学びづくり

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SDGsをまちづくりへ活かす

本書は、足元にある課題からSDGsをどのように捉え、どのように解決していくのかということが示されています。また、それに向けて我々は市民として何ができるのか、ということを考えることができ、まちづくりへの視点が広がる一冊となっています、

田中 治彦 (著, 編集), 枝廣 淳子 (著, 編集), 久保田 崇 (著, 編集), 山西 優二 (著), 小泉 雅弘 (著), 稲葉 美由紀 (著), 大和田 順子 (著) , 中口 毅博 (著), 榎井 縁 (著), 森山 奈美 (著), 木下 勇 (著), 内田 光俊 (著), 市川 享子 (著), 松倉 紗野香 (著), 上條 直美 (著), 佐藤 真久 (著)
出版社 : 学文社 (2019/3/11) 、出典:出版社HP

はじめに

SDGs(持続可能な開発目標、2016-30年)は2015年の国連総会で採択された国際的な開発目標である。それは、リオの地球サミット(1992年)以来の地球温暖化や生物多様性などの「持続可能な開発」に関わる環境系の目標と、MDGs(ミレニアム開発目標、2001-15年)で求められた貧困、保健、教育、水・衛生などの開発系の目標との2本柱から成っている。2016年に『SDGsと開発教育―持続可能な開発目標のための学び』を上程したところ、SDGsに関する日本で初めての解説書ということもあり、多くの読者を得るところとなった。これを受けて2017年には『SDGsと環境教育』を発刊して、SDGsの2つの柱に対応した解説書を世に送った。

本書はこれらに続く3冊目のSDGs解説書であり「まちづくり」をテーマとしている。まちづくりを取り上げた理由は2つある。第一にSDGsの17目標は、開発系の目標、環境系の目標のほかに、「地域づくり、社会づくり」に関する目標群があることである。SDGsの最初の6目標(貧困、飢餓、保健・福祉、教育、ジェンダー、水・衛生)がMDGsを引き継ぐ開発系の目標群であり、SDG13-15の3目標(気候変動、海洋資源、陸上資源)が狭義の環境系の目標群である。これに対して、SDG7-12の6目標は両者にまたがる「持続可能な社会づくり」のための目標であり、このなかにはエネルギー、雇用・経済成長、技術革新、不平等、持続可能な都市、生産と消費が含まれている。したがって、開発と環境を扱った前2著に本書を加えることによって、SDGsのすべての目標をカバーすることができる。

第二の理由は、SDGsの目標達成のためには、地方自治体や地域社会の役割がきわめて大きいことである。国連の目標というと何か遠い世界のことに思えるかもしれないが、SDG6-12にあるエネルギー、雇用、生産と消費などは私たちが普段生活している地域社会の課題でもある。とくにSDG11は「住み続けられるまちづくりを」であり、本書のテーマそのものである。ひるがえって、環境系の気候変動や生物多様性の課題も、地域の環境保全や観光と直結している。また、一見開発途上国の課題と思われたSDG1-6も、今や日本の地域社会がかかえる課題とつながっている。すなわち、貧困、農業生産、健康・福祉、質の高い教育、ジェンダーなどは私たちの目の前にある問題である。日本では解決済みと思われた水とトイレのSDG6ですら、その持続可能性をめぐって水道事業の民営化として2018年の国会で議論され、改正水道法が成立している。SDGsが途上国のみならず先進国も含めたユニバーサルな目標であるといわれる所以である。

本書の特徴をいくつかあげておこう。まず総論に当たる第1部で、SDGs関する国・自治体の政策動向、地域経済、SDGsの理念、市民のイニシアティブについて取り上げる。第2部では地域課題とSDGsについて論ずる。ここでは、福祉、「農」、環境の3つの課題について議論する。地域が持続していくためには「ともに生きる」ことと「楽しみ」も大切である。第3部では、多文化共生、祭りと観光、子ども・若者の居場所づくりの3テーマを取り上げる。本書では地域づくりの要は「ひとづくり」であり「学びづくり」であることを強調している。第4部で、生涯教育におけるESD(持続可能な開発のための教育)、大学でのサービス・ラーニング、中学でのグローバル市民教育、地域のコーディネーター養成をテーマに各方面での「学びづくり」の実際と課題を追求する。

SDGsのスローガンは「誰一人取り残さない」である。本書でも、とかく取り残されがちな子ども・若者、高齢者、在住外国人などに焦点を当てて議論をした。執筆者の半数が女性であることも本書の特色の1つである。

本書は、前2著にたずさわった佐藤真久、上條直美そして田中治彦の3者で企画を立ち上げた。その後テーマがまちづくりということもあり、その方面で造詣が深い枝廣淳子、久保田崇の2氏に編集に加わっていただいた。本書の出版に当たっては学文社の二村和樹さんにたいへんお世話になった。本書が地方自治体、地域レベルでの持続可能なまちづくりにすこしでも貢献できれば幸いである。

筆者を代表して 田中治彦

田中 治彦 (著, 編集), 枝廣 淳子 (著, 編集), 久保田 崇 (著, 編集), 山西 優二 (著), 小泉 雅弘 (著), 稲葉 美由紀 (著), 大和田 順子 (著) , 中口 毅博 (著), 榎井 縁 (著), 森山 奈美 (著), 木下 勇 (著), 内田 光俊 (著), 市川 享子 (著), 松倉 紗野香 (著), 上條 直美 (著), 佐藤 真久 (著)
出版社 : 学文社 (2019/3/11) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

序章 SDGsとまちづくり
第1部 SDGsと持続可能なまちづくり
第1章 SDGsと地方自治体
第2章 地域経済とまちづくり
第3章 SDGsと地域づくり・文化づくり
第4章 SDGsと市民のイニシアティブ

第2部 地域課題とまちづくり
第5章 福祉社会とまちづくり
第6章 持続可能な「農」
第7章 環境自治体とSDGS

第3部 ともに生きる楽しいまちづくり
第8章 多文化共生のまちづくり
第9章 祭り・観光とまちづくり
第10章 子どもの居場所があるまちづくり

第4部 SDGsと学びづくり
第11章 まちづくりと社会教育
第12章 サービス・ラーニングとまちづくり
第13章 まちづくり教育の実践
第14章 学び合いの地域づくり

終章 SDGs時代のまちづくりとパートナーシップ

索引

本書に登場する主な地名

田中 治彦 (著, 編集), 枝廣 淳子 (著, 編集), 久保田 崇 (著, 編集), 山西 優二 (著), 小泉 雅弘 (著), 稲葉 美由紀 (著), 大和田 順子 (著) , 中口 毅博 (著), 榎井 縁 (著), 森山 奈美 (著), 木下 勇 (著), 内田 光俊 (著), 市川 享子 (著), 松倉 紗野香 (著), 上條 直美 (著), 佐藤 真久 (著)
出版社 : 学文社 (2019/3/11) 、出典:出版社HP