プロジェクトファイナンスの理論と実務【第2版】

【最新 – プロジェクトファイナンスについて理解を深めるためのおすすめ本 – 理論から実務での応用まで】も確認する

プロジェクトファイナンスに関する内容を網羅

本書は、プロジェクトファイナンスの理論から実務に携わる方に向けた内容までを幅広く解説しています。大規模な事業での長期資金の調達手法であることから、契約の種類、リスクなど、資金調達にまつわる様々な項目が一つずつ解説されており、プロジェクトファイナンスに携わる方向けの本となっています。

エドワード・イェスコム (著), 佐々木 仁 (翻訳), 榎本 哲也 (翻訳), 大和田 慶 (翻訳), 三浦 大助 (翻訳)
出版社 : きんざい; 第2版 (2014/9/26) 、出典:出版社HP

監訳者まえがき

本書の原著(『Principles of Project Finance』)は、英国においてプロジェクトファイナスやPPP(Public Private Partnership)のコンサルタントとして第一線で活躍しているエドワード・イェスコム(E.R.Yescombe)氏の執筆による、プロジェクトファイナンスの解説書である。プロジェクトファイナンスの実務上の情報、知識、ノウハウがあますところなく盛り込まれている点が、本書の最大の特徴である。

原著の第1版は2002年に出版され、2013年に第2版が出版された。本書は、第2版の和訳版である。第1版の和訳版は2006年に出版されたが、幸いなことに多くの方々にご利用いただき、第2版についても和訳版を出版する運びとなった。

本書では、大きく6つのテーマ、すなわち、①プロジェクトファイナンスの市場、②融資関連契約、③リスク分析、④ストラクチャリングとドキュメンテーション、⑤政府や公的機関による財政支援、⑥最新動向と展望をカバーしている。これらについて、基本的な原理や考え方とともに、実務に応用可能な情報、知識、ノウハウが具体的かつ丁寧に示されている。国際的なプロジェクトファイナンスの実務経験に基づいた臨場感のある解説は、他の著書ではなかなかみることができず、その意味で本書は大変貴重な価値を有している。

第2版では、全体にわたって新たに手が加えられているが、基本的な考え方や構成に大きな変更はない。ただし、①2008年の世界金融危機がプロジェクトファイナンス市場に及ぼした影響、および、②近年におけるインフラPPP事業へのプロジェクトファイナンス活用の増加に関連する解説(公的支援に関する解説を含む)が大幅に追加されており、より現在のビジネス環境やニーズにあった内容となっている。

翻訳は、監訳者の最終的な責任のもと、4人で分担して行った。できるだけ原文を忠実に訳することを原則としながらも、日本の読者の視点に立って、必要に応じて誤植修正、意訳、追加解説などを行った。

本書の翻訳は第1版のものをベースにしており、その際にお世話になった長谷川専氏、松本直人氏、飛田晃一氏、梶本健太郎氏、および佐藤長英弁護士には、あらためてお礼を申し上げたい。また、第2版の翻訳にあたっては、アジア開発銀行の小池武生氏に一部原稿を確認いただいた。加えて、同行の加賀隆一氏からは、多くの知的刺激と励ましをいただいた。この場を借りて、両氏にお礼を申し上げたい。なお、本書にありうべきいっさいの誤認や誤訳は、監訳者の責任であることはいうまでもない。

また、本書に示された見解は、監訳者および訳者の所属する組織の公式な見解を示したものではないことを、あらかじめお断りしておく。

最後に、本書の出版を快諾してくださった原著者であるイェスコム氏、ならびに第1版に続き今回も出版の企画から上梓に至るまで丁寧にご支援くださった一般社団法人金融財政事情研究会の谷川治生氏に心よりお礼を申し上げたい。

本書が、プロジェクトファイナンスの実務に携わる方々や、プロジェクトファイナンスについて勉強・研究されている方々にとって少しでもお役に立つことができれば幸甚である。

2014年7月 常夏のマニラにて
佐々木 仁

エドワード・イェスコム (著), 佐々木 仁 (翻訳), 榎本 哲也 (翻訳), 大和田 慶 (翻訳), 三浦 大助 (翻訳)
出版社 : きんざい; 第2版 (2014/9/26) 、出典:出版社HP

●目次●

第1章 はじめに

第1部 プロジェクトファイナンス市場の概要と主要プレイヤーの役割

第2章 プロジェクトファイナンスとは何か
§2.1 本章の目的と構成
§2.2 プロジェクトファイナンスの定義と特徴
§2.3 プロジェクトファイナンスの歴史
§2.4 プロジェクトファイナンスの構成要素
§2.5 プロジェクトファイナンスの例示
§2.5.1 プロセスプラント事業のストラクチャー
§2.5.2 インフラ事業のストラクチャー
§2.5.3 その他の事業のストラクチャー
§2.6 プロジェクトファイナンスの活用意義
§2.6.1 なぜプロジェクトファイナンスを使うか
§2.6.2 インベスター以外の事業関係者にとってのメリット

第3章 事業の開発とマネジメント
§3.1 本章の目的と構成
§3.2 スポンサーと他のインベスター
§3.2.1 二次的な出資者
§3.2.2 公共セクターによる事業出資
§3.3 事業開発
§3.4 アドバイザーの役割
§3.4.1 ファイナンシャル・アドバイザー
§3.4.2 リーガル・アドバイザー
§3.4.3 その他のアドバイザー
§3.5 共同事業体(JV)による事業開発
§3.6 プロジェクトカンパニー
§3.6.1 事業ストラクチャーにおける位置づけ
§3.6.2 株主間協定
§3.6.3 プロジェクトカンパニーのマネジメントと運営
§3.7 公共調達
§3.7.1 公共契約機関によるプロジェクトマネジメント
§3.7.2 アドバイザー
§3.7.3 事業開発
§3.7.4 入札方式
§3.7.5 事前資格審査
§3.7.6 提案依頼書(RFP)
§3.7.7 交渉
§3.7.8 入札提案書の評価
§3.7.9 入札に関する諸問題
§3.7.10 再委託契約の競争入札
§3.7.11 アンソリシッティド提案(Unsolicited Bids)
§3.7.12 レンダーとの関係
§3.7.13 契約管理

第4章 プロジェクトファイナンスの市場
§4.1 本章の目的と構成
§4.2 商業銀行
§4.2.1 活動分野
§4.2.2 商業銀行の動向
§4.3 ボンド
§4.3.1 米国のボンド市場
§4.3.2 ラップボンド(Wrapped Bonds)
§4.3.3 国際ボンド市場
§4.4 銀行以外のレンダー
§4.5 他の資金調達ソース
§4.5.1 劣後デットおよびメザニンデット
§4.5.2 リースファイナンス
§4.5.3 ベンダーファイナンス
§4.5.4 イスラム金融

第5章 レンダーとの作業
§5.1 本章の目的と構成
§5.2 商業銀行
§5.2.1 プロジェクトファイナンスを扱う部署
§5.2.2 プロジェクトファイナンスとストラクチャードファイナンス
§5.2.3 リードアレンジャー(Lead Arrangers)
§5.2.4 LOI
§5.2.5 銀行の役割
§5.2.6 ファイナンシャルモデル
§5.2.7 タームシート、融資の引受け、ドキュメンテーション
§5.2.8 インフォメーション・メモランダムとシンジケーション
§5.2.9 エージェント機能
§5.2.10 ローン担保証券(Collateralized Loan Obligations, CLOs)
§5.3 ボンドの発行
§5.3.1 投資銀行と格付会社
§5.3.2 ボンドエージェント、ボンドトラスティ、代表債権者
§5.4 ローンとボンドの比較
§5.5 レンダーのアドバイザーの役割
§5.5.1 デューディリジェンス
§5.5.2 リーガル・アドバイザー
§5.5.3 レンダーのテクニカル・アドバイザー
§5.5.4 保険アドバイザー
§5.5.5 モデルオーディター
§5.5.6 その他のアドバイザー
§5.5.7 レンダーのアドバイザーの事前指名
§5.5.8 アドバイザーの時間の使用について
§5.6 レンダーと公共調達手続
§5.6.1 銀行融資
§5.6.2 ボンド

第2部 プロジェクトファイナンスの枠組みを構築する各種契約

第6章 事業協定の種類
§6.1 本章の目的と構成
§6.2 BOT、BTO、BOOT等の事業分類について
§6.3 オフテイク契約
§6.3.1 オフテイク契約の種類
§6.3.2 PPAのストラクチャー
§6.3.3 プラント施設の建設
§6.3.4 プラント施設の運営
§6.3.5 電力購入料
§6.3.6 ペナルティ
§6.4 アベイラビリティ契約
§6.4.1 サービスフィー
§6.4.2 アウトプット仕様
§6.4.3 アベイラビリティ
§6.4.4 パフォーマンス
§6.4.5 ビルサービス費用のベンチマーキングとマーケットテスティング
§6.4.6 シャドウトール
§6.5 コンセッション契約
§6.5.1 ユーザーチャージ
§6.5.2 競争原理
§6.5.3 レベニューシェアリング
§6.5.4 ユーザー配慮の視点
§6.5.5 その他の条件(ペナルティ)
§6.6 いわゆる「PPP的」契約

第7章 事業協定の共通事項
§7.1 本章の目的と構成
§7.2 事業期間の決定要因
§7.2.1 事業施設の耐用年数
§7.2.2 インベスターのアフォーダビリティ
§7.2.3 デットの返済期間
§7.2.4 投資回収期間
§7.2.5 残存価値
§7.2.6 事業内容の柔軟性
§7.2.7 大規模修繕と更新
§7.2.8 減価償却期間
§7.2.9 変更可能な事業期間
§7.3 オフテイカーや公共契約機関の支払メカニズム
§7.3.1 事業施設完工時の支払
§7.3.2 定額払い
§7.3.3 インフレ指標
§7.3.4 第三者収入
§7.4 オフテイカーや公共契約機関による契約モニタリング
§7.4.1 設計と建設のモニタリング
§7.4.2 運営のモニタリング
§7.4.3 再委託契約のモニタリング
§7.4.4 資金調達のモニタリング
§7.5 契約履行保証とその他保証
§7.6 損害賠償事由
§7.6.1 オフテイカーや公共契約機関による義務の不履行に起因するもの
§7.6.2 事業施設の完工遅延に起因するもの
§7.6.3 オフテイカーや公共契約機関による仕様変更に起因するもの
§7.6.4 法令変更に起因するもの
§7.6.5 「財務均衡」に起因するもの
§7.7 免責事項
§7.8 救済事由
§7.9 オフテイカーや公共契約機関による事業へのステップイン
§7.10 事業協定の解除
§7.10.1 早期解除:プロジェクトカンパニーの債務不履行による解除
§7.10.2 早期解除:オフテイカーや公共契約機関の債務不履行による解除
§7.10.3 オフテイカーや公共契約機関による任意解除
§7.10.4 早期解除:不可抗力
§7.10.5 早期解除:汚職や詐欺
§7.10.6 清算金の税務上の取扱い
§7.10.7 資産返還型契約の満了
§7.10.8 早期解除:資産非返還型契約の事業協定
§7.10.9 資産非返還型契約の満了
§7.11 所有権の変更
§7.12 紛争解決

第8章 再委託契約およびその他関連契約
§8.1 本章の目的と構成
§8.2 建設契約
§8.2.1 契約範囲
§8.2.2 作業開始
§8.2.3 契約金額、支払、契約金額の変更
§8.2.4 施工監理
§8.2.5 施主リスク
§8.2.6 教済事由
§8.2.7 事業施設の完工
§8.2.8 予定損害賠償金と契約解除
§8.2.9 保証
§8.2.10 建設コントラクターによる工期延長と契約解除
§8.2.11 紛争解決
§8.3 O&M契約/メンテナンス契約
§8.3.1 契約範囲
§8.3.2 サービス範囲
§8.3.3 対価の基準
§8.3.4 インセンティブとペナルティ
§8.3.5 大規模修繕契約
§8.4 ビルサービス契約
§8.5 燃料やその他の原料供給契約
§8.5.1 契約形態
§8.5.2 引渡リスク
§8.5.3 価格基準
§8.5.4 保証
§8.5.5 教済事由と法令変更
§8.5.6 債務不履行と契約解除
§8.6 保険契約
§8.6.1 建設期間の保険
§8.6.2 運営期間の保険
§8.6.3 免責金額
§8.6.4 原料供給会社やバイヤーへの適用範囲の拡大
§8.6.5 融資金融機関の要求条件
§8.6.6 再保険
§8.6.7 訴訟のコントロール
§8.6.8 保険料/保険引受不可能リスク
§8.6.9 線形事業や複数サイト事業
§8.6.10 ポートフォリオ保険、自家保険
§8.7 事業用地のリースとその他の使用権
§8.8 許認可および他の権利
§8.8.1 事業の実施に関する許認可
§8.8.2 通行権と地役権
§8.8.3 施設の共用
§8.8.4 投資と融資に関する許認可
§8.9 再委託契約の変更と入替え
§8.10 下請企業に対する親会社の保証(PCG)
§8.11 直接協定

第3部 プロジェクトファイナンスにおけるリスク分析

第9章 コマーシャルリスク
§9.1 本章の目的と構成
§9.2 リスク評価と分担
§9.3 コマーシャルリスクの分析
§9.4 事業性(Commercial Viability)
§9.5 建設リスク(Constructoin Risks)
§9.5.1 事業用地とアクセスの確保
§9.5.2 事業用地のコンディション
§9.5.3 許認可
§9.5.4 建設コントラクターに関するリスク
§9.5.5 建設期間中のコストオーバーラン(建設費)
§9.5.6 建設期間中のコストオーバーラン(その他費用)
§9.5.7 建設期間中の収入
§9.5.8 完工遅延
§9.5.9 第三者リスク
§9.5.10 完工時における施設の性能未達
§9.5.11 建設コントラクターへの支払担保
§9.5.12 建設契約金額、期日指定、ターンキー建設契約がない事業
§9.6 収入リスク(Revenue Risks)
§9.6.1 オフテイク契約およびその関連契約
§9.6.2 プライスリスクとボリュームリスクを負う事業
§9.6.3 コンセッション協定と民営化インフラ事業
§9.6.4 アベイラビリティ契約
§9.7 運営リスク(Operating Risks)
§9.7.1 プロセスプラント:新技術の採用に関するリスク
§9.7.2 プロセスプラント:事業運営に係るリスク
§9.7.3 プロセスプラント:施設性能の経年的な変化
§9.7.4 コンセッション協定やアベイラビリティ契約に基づく事業:事業施設のアベイラビリティとパフォーマンス
§9.7.5 メンテナンス費用とライフサイクルコスト
§9.7.6 ユーティリティ費用
§9.7.7 その他の運営費
§9.8 原料供給リスク(Input-Supply Risks)
§9.8.1 原料供給契約
§9.8.2 原料供給契約の締結が不要な場合
§9.8.3 水量や風量の変動
§9.8.4 鉱物埋蔵量
§9.8.5 他のユーティリティ
§9.9 保険対象外のリスク(Uninsured Risks)
§9.9.1 不可抗力と保険
§9.9.2 保険コスト
§9.9.3 保険が利用できない可能性
§9.10 環境リスク(Environmental Risks)
§9.10.1 環境影響評価(Environmental Impact Assessment, EIA)
§9.10.2 イクエーター原則
§9.10.3 事業用地の環境汚染
§9.10.4 廃棄物の処分
§9.10.5 法制度の変更
§9.11 残存価値リスク(Residual Value Risk)
§9.12 プロジェクト関連契約間の不整合
§9.13 スポンサーへのリコース
§9.14 オフテイカーや他の契約当事者にとってのリスク
§9.15 なぜ事業が失敗するか
§9.16 デフォルト時の損失

第10章 マクロ経済リスク
§10.1 本章の目的と構成
§10.2 貨幣の時間価値
§10.2.1 DCF法
§10.2.2 IRR
§10.2.3 DCF法とIRR計算上の留意点
§10.3 金利変動リスク
§10.3.1 金利スワップ
§10.3.2 金利キャップと他のリスクヘッジ方法
§10.3.3 金利変動リスクヘッジの金額とタイミング
§10.3.4 固定金利ローン/ボンド
§10.3.5 融資契約締結以前の金利変動リスクのヘッジ
§10.3.6 プロジェクトカンパニーは金利リスクを負うべきか
§10.4 物価変動リスク
§10.4.1 物価連動型契約
§10.4.2 物価連動による将来収入の過大評価
§10.4.3 物価連動型ファイナンス
§10.5 為替変動リスク
§10.5.1 為替変動リスクの軽減策
§10.5.2 為替変動リスクのヘッジ
§10.5.3 現地通貨建て資金調達
§10.5.4 流動性の供給
§10.5.5 通貨の暴落
§10.5.6 複数通貨による資金調達
§10.5.7 現地通貨から外国通貨への交換
§10.5.8 現地通貨による担保の設定
§10.6 リファイナンスリスク

第11章 政治リスク
§11.1 本章の目的と構成
§11.2 事業と政治
§11.3 法令変更
§11.3.1 法令変更リスク
§11.3.2 法令変更の種類
§11.4 投資リスク
§11.4.1 通貨交換と送金
§11.4.2 強制収用
§11.4.3 戦争と騒擾
§11.5 広義の政治リスク
§11.5.1 契約履行拒絶と裁判判決
§11.5.2 忍び寄る収用
§11.6 サブソブリン・リスク
§11.7 政府支援協定
§11.8 政治リスク保険と保証
§11.8.1 民間企業が提供する政治リスク保険

第4部 事業のファイナンシャル・ストラクチャリングおよびドキュメンテーション

第12章 資金調達ストラクチャーの構築
§12.1 本章の目的と構成
§12.2 エクイティの構造と投資分析
§12.2.1 EqIRR
§12.2.2 ブレンディッドEqIRR
§12.2.3 エクイティ拠出のタイミング
§12.2.4 その他のエクイティリターンの指標
§12.2.5 新たなインベスターの参加
§12.3 デットカバーレシオ
§12.3.1 DSCR
§12.3.2 LLCR
§12.3.3 平均DSCRとLLCR
§12.3.4 PLCR
§12.3.5 埋蔵量カバー・レシオ
§12.3.6 カバー・レシオの計算
§12.3.7 カバー・レシオとデット調達可能額の関係
§12.4 D/Eレシオ
§12.4.1 D/Eレシオの計算
§12.4.2 予備的資金の調達
§12.4.3 エクイティの拠出を予備的資金の調達のみに限定するケース
§12.4.4 エクイティ拠出のない事業
§12.5 デットサービス計画
§12.5.1 融資期間
§12.5.2 アベレージライフ
§12.5.3 返済スケジュール
§12.5.4 返済スケジュールにおける柔軟性
§12.6 金利と手数料
§12.6.1 金利
§12.6.2 アレンジメントフィーとアンダーライティングフィー
§12.6.3 コミットメントフィー
§12.6.4 エージェントフィー
§12.7 追加コスト
§12.7.1 利払いに関する源泉徴収税
§12.7.2 追加的な規制関連コスト(マンデトリーコスト)
§12.7.3 市場の混乱
§12.8 資金調達ストラクチャーの最適化

第13章 ファイナンシャルモデル
§13.1 本章の目的と構成
§13.2 ファイナンシャルモデルの機能
§13.3 ファイナンシャルモデルのインプット
§13.4 マクロ経済に関する仮定
§13.4.1 物価変動
§13.4.2 商品価格変動
§13.4.3 金利変動
§13.4.4 為替レート
§13.4.5 経済成長
§13.5 初期投資費用と資金調達
§13.5.1 初期投資費用
§13.5.2 建設期間中の資金調達
§13.6 運営収入と運営費用
§13.7 会計と税務
§13.7.1 初期投資費用の資本化と減価償却
§13.7.2 配当規則
§13.7.3 ネガティブ・エクイティ
§13.7.4 納税時期
§13.7.5 付加価値税
§13.7.6 源泉徴収税
§13.7.7 為替レートと公租公課
§13.7.8 物価変動と公租公課
§13.8 ファイナンシャルモデルのアウトプット
§13.9 感度分析
§13.10 バンキングケースとベースケース
§13.11 ファイナンシャルクローズ後のモデル利用

第14章 プロジェクトファイナンスのドキュメンテーション
§14.1 本章の目的と構成
§14.2 タームシート
§14.3 建設期間:デットのドローダウン
§14.3.1 引出可能期間
§14.3.2 ドローダウンの手続
§14.3.3 デットアクリーション
§14.4 運営期間:キャッシュフローの管理
§14.4.1 プロジェクト関連口座
§14.4.2 支払充当順位
§14.4.3 インベスターへの配当
§14.4.4 キャッシュ・スィープ
§14.4.5 キャッシュ・クローバック
§14.5 報告義務
§14.5.1 建設期間中の報告
§14.5.2 運営期間中の報告
§14.6 融資契約の解除と期限前返済
§14.6.1 融資枠の見直し
§14.6.2 部分的な期限前返済
§14.7 担保
§14.7.1 譲渡担保権と契約譲渡
§14.7.2 プロジェクトカンパニーの株式に対する担保権の設定
§14.8 貸出先行条件
§14.8.1 貸出先行条件とファイナンシャルクローズ
§14.8.2 貸出先行条件とドローダウン
§14.8.3 MAC条項
§14.9 表明および保証
§14.10 コベナンツ
§14.10.1 ポジティブ・コベナンツ
§14.10.2 ネガティブ・コベナンツ
§14.11 許可、権利放棄および変更
§14.12 期限の利益の喪失事由
§14.13 レンダーによる意思決定過程
§14.14 債権者間問題
§14.14.1 金利スワップ・プロバイダー
§14.14.2 固定金利の提供者
§14.14.3 異なる担保権を有するレンダー
§14.14.4 リースの供与者
§14.14.5 劣後レンダーとメザニンレンダー
§14.14.6 融資不能
§14.15 適用法と裁判管轄
§14.16 リファイナンス
§14.16.1 リファイナンスに関する基本的事項
§14.16.2 リファイナンスによる「棚ぼた利益」の扱い
§14.16.3 リファイナンスによる利益分担の計算
§14.16.4 リファイナンスの利益分配が適切でない場合
§14.17 エクイティの譲渡
§14.17.1 エクイティ譲渡による「棚ぼた利益」の扱いについて

第5部 事業への外部支援の種類

第15章 公共セクターによる事業の財政支援
§15.1 本章の目的と構成
§15.2 間接的な財政支援
§15.3 直接的な財政支援
§15.4 メザニンデット
§15.5 スタンドバイ・ファイナンシング
§15.6 事業施設完工後のリファイナンス
§15.7 ギャップ・ファイナンス
§15.8 政策銀行
§15.9 クレジットギャランティ・ファイナンス
§15.10 キャピタル・グラント
§15.11 VGF
§15.12 事業施設の部分建設
§15.13 補完投資
§15.14 フル・デットギャランティ
§15.15 ファーストロス・デットギャランティ
§15.16 パリパス・デットギャランティ
§15.17 デット・アンダーピニング
§15.18 最低収入保証(MRG)
§15.19 料金補助
§15.20 公的プロジェクトカンパニー
§15.21 ギャランティファンド

第16章 ECAとDFI
§16.1 本章の目的と構成
§16.2 輸出信用機関(ECA)
§16.2.1 事業向けのECAによる支援
§16.2.2 ベルンユニオン
§16.2.3 OECDコンセンサス
§16.2.4 リスクに関する考え方とカバー範囲
§16.2.5 追加担保としてのキャッシュの拠出
§16.2.6 ECA利用のメリット
§16.3 インベスター向けの政治リスク保険
§16.4 ECAと二国間DFI
§16.4.1 日本(NEXI/JBIC)
§16.4.2 韓国(K-sure/KEXIM/KDB)
§16.4.3 中国(SINOSURE/China Exim/CDB)
§16.4.4 米国(U.S.Exim/OPIC)
§16.4.5 ドイツ(Hermes/KfW/DEG)
§16.4.6 イタリア(SACE SpA/Simest)
§16.4.7 フランス(COFACE/DREE/Proparco)
§16.4.8 デンマーク(EKF)
§16.5 多国間DFI
§16.5.1 世界銀行
§16.5.2 IFC
§16.5.3 IDA
§16.5.4 MIGA
§16.5.5 アジア開発銀行
§16.5.6 アフリカ開発銀行
§16.5.7 欧州復興開発銀行
§16.5.8 欧州投資銀行
§16.5 米州開発銀行

第6部 プロジェクトファイナンスの現状と展望

第17章 プロジェクトファイナンスの現状と展望
§17.1 序文
§17.2 2008年の金融危機の影響
§17.3 バーゼルプロセス
§17.4 非銀行系レンダー
§17.4.1 機関レンダー
§17.4.2 プロジェクトファイナンスのデットファンド
§17.4.3 公的年金基金
§17.4.4 ソルベンシーII指令
§17.5 クレジットリスク改善の試み
§17.5.1 建設リスクの分離
§17.5.2 メザニンデット
§17.5.3 スタンバイ・ファイナンス
§17.5.4 ブレンディッド・テナー
§17.5.5 増資
§17.6 プロジェクトファイナンスの新たなモデル
§17.6.1 規制されたアセット・ベースド・ファイナンス(RAB)
§17.6.2 アウトプット・ベースド・エイド(OBA)
§17.6.3 ソーシャルインパクトボンド(SIBs)
§17.6.4 タックス・インクリメント・ファイナンス(TIF)
§17.7 プロジェクトファイナンスの未来

用語集

エドワード・イェスコム (著), 佐々木 仁 (翻訳), 榎本 哲也 (翻訳), 大和田 慶 (翻訳), 三浦 大助 (翻訳)
出版社 : きんざい; 第2版 (2014/9/26) 、出典:出版社HP

第1章
はじめに

プロジェクトファイナンス(Project Finance)は、金融工学の技術を用いて大規模事業の長期資金を調達する手法である。プロジェクトファイナンスでは、原則として借り手の返済原資は当該事業から生み出されるキャッシュフローに限定される。したがって、プロジェクトファイナンスの組成にあたっては、事業の施設整備、運営、収入に関するリスクや、種々の契約や取決めによって規定されるインベスター、レンダー、およびその他事業関係者の間でのリスク分担について、詳細な検討がなされる。プロジェクトファイナンスは、特に1980年以降に急速に発展した比較的新しい金融手法である。2012年には、全世界で少なくとも3,750億ドル相当(1)の事業がプロジェクトファイナンスを用いている。
プロジェクトファイナンスは、「プロジェクトのファイナンシング(Financing Projects)」とは異なる概念である。事業の資金調達手法としては、プロジェクトファイナンス以外にも様々なものがある。例えば、先進国の公共セクターにおける大規模事業は、伝統的に公的なデットを通じて事業資金が調達されてきた。また、民間セクターの事業は、大企業によるコーポレートファイナンスを通じて事業資金が調達されてきた。一方、発展途上国での公共事業は、国際金融市場、世界銀行などの国際開発金融機関(Development Finance Institution, DFI)、あるいは輸出信用機関(Export Credit Agency, ECA)からの政府借入を通じて事業資金が調達されてきた。しかし近年、民営化、規制緩和、あるいはPPP(Public Private Partnerships)を通じた民間資金活用の推進により、こうした伝統的な資金調達方法が変化し、大型事業の資金調達のより多くの部分を民間が担うようになってきている。
プロジェクトファイナンスは、他の資金調達方法とは異なり、事業開発や各種契約に関する取決めがシームレスな網のようにあらゆる面で密接に関係している。したがって、ファイナンスを事業の内容と独立させて考えることはできない。事業の資金調達方法としてプロジェクトファイナンスを用いる場合は、借り手企業の財務責任者やレンダーはもちろんのこと、事業に関係するすべての者(2)が、プロジェクトファイナンスはどのような仕組みで動くのか、あるいはそのストラクチャーが個々の業務にどのように関係しているかといった点について、基礎的な理解を有しておく必要がある。さらに、事業を構成する諸契約は、単に商業性の観点からだけでなく、資金調達の観点からも必要な要件を満たすものでなければならない。仮にその事業の収益性が十分に高くても、資金調達ができなければそれに要した時間と金はすべて無駄となる。それは避けなければならない。

以上のような考えに基づいて、本書では、著者のプロジェクトファイナンスのパンカーおよび独立アドバイザーとしての経験に基づき、プロジェクトファイナンスの原理原則を示すとともに、実務において直面するであろう種々の問題に対して解決の指針を示すことを試みる。本書は、プロジェクトファイナンスの初心者にとっての体系的な入門書として役立てることができる。また、プロジェクトファイナンスの組成や交渉を行っている実務者にとっても、エイド・メモアール(Aide Memoire)としての役割を果たすことが期待される。なお、読者は、金融市場や金融用語に関する予備知識を有している必要はない。
プロジェクトファイナンスの世界では、よく「悪魔は細部に宿る(“The devilis in the detail.”)」といわれるが、この言葉の示すとおり、その解説書が実用的であるためには、一般的な記述や漠然とした要約を示しただけでは不十分であり、多くの事項について詳細な説明をする必要がある。しかし、それを体系的に学び、また詳細部分に隠れたプロジェクトファイナンスの諸原理をきちんと理解することにより、実務における労力はかなり軽減されると考えられる。
プロジェクトファイナンスに関して本書で言及する事項は、実際に多くの事業において必要とされる情報(§5.2.8)をカバーしている。各章の概要は、以下のとおりである。

第1部:プロジェクトファイナンス市場の概要と主要プレイヤーの役割
・第2章では、プロジェクトファイナンスの発展、主な特徴と他の資金調達手法との違い、およびその活用意義について説明する。
・第3章では、インベスターによるプロジェクトファイナンスを利用した事業の形成および公共調達のプロセスについて解説する。
・第4章では、プロジェクトファイナンスのマーケット全般について解説する。
・第5章では、プロジェクトファイナンスの融資手続の概要について解説する。

第2部:プロジェクトファイナンスの枠組みを構築する各種契約
・第6章では、プロジェクトファイナンスにおいて非常に重要な役割を果たす事業協定の種類や特徴を紹介する。
・第7章では、多くの事業協定で共通してみられる事項について説明する。
・第8章では、プロジェクトファイナンスの典型的なストラクチャーのなかでしばしば重要な役割を果たす再委託契約(3)について説明する。

第3部:プロジェクトファイナンスにおけるリスク分析
・第9章では、レンダーによる事業のコマーシャルリスクの分析やその緩和方法について解説する。
・第10章では、物価変動、金利変動、為替レート変動などのマクロ経済リスクが事業に与える影響や、その緩和方法について説明する。
・第11章では、法制度・政治リスクと、それらが事業に与える影響を分析する。

第4部:事業のファイナンシャルストラクチャリングおよびドキュメンテーション
・第12章では、事業の基本的なファイナンシャル・ストラクチャーがどのように構築されるかを解説する。
・第13章では、ファイナンシャルモデルに用いられるインプットおよびインベスターやレンダーによる分析結果の活用について解説する。
・第14章では、プロジェクトファイナンスの契約交渉時において、一般的にレンダーが求める要求事項について解説する。

第5部:事業への外部支援の種類
・第15章では、事業のファイナンシャル・ストラクチャーのなかで、公共セクターの支援がどのように位置づけられ、また機能するかを解説する。
・第16章では、DFIおよびECAが果たす役割を解説する。

第6部:プロジェクトファイナンスの現状と展望
・最後に、第17章では、近年のプロジェクトファイナンスのマーケットの動向、新たなファイシング手法の台頭、そしてプロジェクトファイナンスの今後の展望について触れる。

本書で用いているプロジェクトファイナンスに関する主なテクニカルタームについては、それらを頭文字・大文字で示すとともに、巻末の用語集において簡単な解説を付している。より詳細については各用語の解説欄に適宜本文中の参照箇所を示しているので、そちらを参照されたい。ファイナンス一般に関するテクニカルタームや略語についても、適宜用語集やその参照箇所の記述を参照されたい(4)。
また、本書に示された様々な計算表のスプレッドシートの電子ファイルは、YCL Consulting Ltd.社のウェブサイト(www.yescombe.com)から無料でダウンロードすることができる。
さらに、個別のトピックスに関しては、著者の他の書籍や論文等を参考文献として脚注に示している。本書でカバーしきれない部分については、そちらを参照されたい。特に、アスタリスク「*」を付けた文献は、インターネットから無料でダウンロードすることができる(本書を執筆した時点)。なお、前述のウェブサイトでも、ここで紹介した文献等へのリンクを整備しているので、適宜活用されたい。

(1) この数字には、リファイナンスの金額も含まれる。数字根拠については§2.3を参照のこと。
(2) これには、事業開発者、エンジニア、コントラクター、設備機械供給者、燃料サプライヤー、オフテイカー、およびプロジェクトファイナンスが公共事業に用いられる場合は公共セクターが含まれる。
(3) これには、施設建設、運営、維持管理、燃料供給、原材料およびその他の原料供給および保険に関する契約が含まれる。
(4) 訳者注:なお、本書でいう「ドル」とは、特に断りのない限り、「米ドル」のことをいう。

エドワード・イェスコム (著), 佐々木 仁 (翻訳), 榎本 哲也 (翻訳), 大和田 慶 (翻訳), 三浦 大助 (翻訳)
出版社 : きんざい; 第2版 (2014/9/26) 、出典:出版社HP