事業計画に落とせるビジネスモデルキャンバスの書き方

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ビジネスモデルの考え方を学ぶ

本書は、事業計画で重要なビジネスモデルの構築の仕方を解説した本です。新規事業のアイデアを出した後に、ビジネスモデルキャンバスを利用したモデルの検討を行う流れになっています。そして、仮説検証の後には、事業計画書にどのように落とし込んでいくかが解説されています。

西田 泰典 (著)
出版社 : クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2020/1/31) 、出典:出版社HP

はじめに

新規事業を生み出す際に、もっとも重要なキーワードを1つ挙げるとすれば、私は迷いなく「ビジネスモデル」と答えます。なぜなら、ビジネスモデルの設計がきちんとできていない事業は、高確率で残念な結果に終わってしまう、もしくは、そもそも計画の時点で社内の承認が得られないからです。
私はこれまで様々な企業の新規事業コンサルティングを通じて、数え切れないほどの事業計画書を見てきましたが、そもそもビジネスモデル自体の意味を理解できていない人が多いことに気づきました。この本を手にした読者の方も「なんとなくイメージはあるけど、うまく説明できない」というのが本当のところではないでしょうか。
そういった新規事業担当者の現状に希望の灯をともしてくれたのが本書で紹介する「ビジネスモデル・キャンバス」です。
2010年にオスターワルダーとピニュール(Osterwalder & Pigneur)が、ビジネスモデルを「どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したもの」と定義しました。そして、視覚的にビジネスモデルを設計するためにビジネスの構造を一枚の紙にまとめるフレームワーク「ビジネスモデル・キャンバス」を提唱したのです(次の図表)。

【図表】ビジネスモデル・キャンバス

ビジネスモデル・キャンバスは、ビジネスモデルの設計はもちろん、組織内でビジネスモデルを共有できること、個々のビジネス要素のつながりを検証・評価できることから、多くの企業で導入されていきました。しかし、「ビジネスモデル・キャンバスさえ導入すれば容易にビジネスモデルが設計でき、新規事業を創造できると考えていた」という新規事業担当者たちも多く、実際は期待通りの成果が得られていない例が少なくありません。

本書は、ビジネスモデル・キャンバスを活用して新規事業を成功させたいと考える人に向けて書きました。
ビジネスモデル・キャンバスは、実践的で使いやすい優秀なフレームワークです。使い方さえマスターすれば、必ず成果を生み出すことができるものだと私は確信しています。
しかし残念なことに、ビジネスモデル・キャンバスの書き方を詳しく解説した本は存在していません。私はコンサルティングや研修などを通じて、今まで数百枚以上のビジネスモデル・キャンバスを見てきましたが、有効に活用できていない例を目の当たりにしてきました。オスターワルダーとピニュールが著した『ビジネスモデル・ジェネレーション』(翔泳社)では、ビジネスモデル・キャンバス上にどんな要素を書けばいいのかを詳しく説明してありますが、どのような「考え方」で書けばいいのかまで掘り下げられていません。例えば、新規事業を創造するためには市場がどんな状況かを理解していなければなりません。つまり、マーケティングの知識が必要となります。市場を理解しないままビジネスモデル・キャンバスを書くと、単に要素(ブロック)を埋めただけになってしまい、その先にある事業計画書に落とし込んだとしても机上の空論に終わってしまうのです。重要なのは、埋めて形を整えることではなく、どのような「考え方」にもとづいて埋めたのかです。
本書は、今まで私が従事していた新規事業創造におけるコンサルティング支援や研修などで培った知見や経験のすべてを公開し、新規事業構想から、ビジネスモデル・キャンバスの書き方、仮説検証、事業計画書の書き方、投資を得るためのプレゼンテーションのポイントまでを解説します。新規事業担当者が本書を読んで腹落ちをしてもらえるようできるだけ多くの事例も盛り込みました。本書を読めば、ビジネスモデル・キャンバスを活用してビジネスモデルを設計でき、新規事業を加速させ、予算獲得を達成できるようになります。
本書が、ビジネスモデル・キャンバスを活用して新規事業を立ち上げる新規事業担当者の一助となり、新規事業の創出に少しでも貢献できれば幸いです。

2020年1月
西田泰典

西田 泰典 (著)
出版社 : クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2020/1/31) 、出典:出版社HP

事業計画に落とせるビジネスモデルキャンバスの書き方 目次

はじめに

第1章 新規事業立ち上げには正しいプロセスがある
Right process to start the new business
❶8割の経営者が新規事業に満足していない現状
❷担当者の前に立ちはだかる4つの壁
❸新規事業創造プロセスの全体像

第2章 新規事業の構想を立てる
Formulate the plan of the new business
❶事業テーマを考える前に知っておくべき前提
新規事業は3つに分類できる
筋のいいテーマを見つけられるかが重要
新規事業を実現する時間を決める
事業テーマの検討は、バックキャスティングが基本
❷アイデアを生み出す6つのインプット
プレストでは「筋のいいテーマ」が生まれない理由
①取り組む意義をインプットする
②マクロ環境をインプットする
③市場・顧客をインプットする
④自社の情報をインプットする
⑤競合の情報をインプットする
⑥他社の成功事例をインプットする
❸インプットした情報を最大限に活かす思考法
事業テーマが決まらない場合の3つの対処方法
❹事業アイデアを定量的に評価する
マトリクスを活用して定量的に判断する
事業テーマの妥当性を確認する
事業テーマ選びで注意すべき点

第3章 ビジネスモデルキャンバスの書き方
How to write Business Model Canvas
❶ビジネスモデルの定義を知ろう
ビジネスモデルの見解①Amit and Zott(2001)
ビジネスモデルの見解②加護野(2004)
ビジネスモデルの見解③Johnson(2010)
先行研究のビジネスモデルの定義
優れたビジネスモデルの条件
❷ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデル・キャンバスについて
❸ビジネスモデルキャンバス導入のメリット
メリット①ビジネスモデルを容易に設計できる
価値提供と収益獲得を紐づけることができる
継続して価値を提供するための仕組みを生み出せる
メリット②組織内でのコミュニケーションツールとなる
メリット③ビジネスモデルを検証するのに相性がいい
❹ビジネスモデルの完成度を高める2つのこと
3つの目を意識する
マーケティングの基本を理解しておく
ビジネスモデルキャンバスの書き方
❺顧客セグメント
「顧客が抱える切実な問題」を捉える上でのポイント
潜在化した問題に焦点を当てるキーエンスの事例
BtoB企業の場合は、その先の顧客も考える
ビジネスモデルキャンバスの書き方
❻価値提案
目的と手段を明確にする
スタバとドトールから考える価値の意味
価値を検討する際の2つの切り口
訴求する価値を明確にする
優れたビジネスモデルの条件に当てはめる
競合を意識した価値か?
継続して提供できる価値か?
顧客セグメントと価値提案を先に検討する
ビジネスモデルキャンパスの書き方
❼チャネル
チャネルがもつ5つの機能
チャネルと効率性の関係
ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
ビジネスモデルキャンバスの書き方
❽顧客との関係性
ロイヤルティを深める
ビジネスモデル・キャンパスの他のブロックとのつながり
ビジネスモデルキャンバスの書き方
❾収益の流れ
主な収益項目を明らかにする
収益の獲得方法を検討する
継続して儲けるにはどうしたいいか
囲い込みで儲けるにはどうしたらいいか
利ざやで儲けるにはどうしたらいいか
メリハリで儲けるにはどうしたらいいか
他の収益源で儲けるにはどうしたらいいか
収益の流れを設計する
ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
ビジネスモデル・キャンパスの右半分はマーケティングに関すること
ビジネスモデルキャンバスの書き方
❿キーリソース
ヒト・モノ・カネ・情報の視点で検討する
自社の強みを反映したリソースか確認する
キーリソースを起点に設計する
ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
ビジネスモデルキャンパスの書き方
⓫主要な活動
成功要因は何かを考える
自社と外部企業が担う領域を区分する
バリューチェーンで考える
3つの価値基準から「主要な活動」を考える
主要な活動の「効率性」を確認する
ビジネスモデル・キャンパスの他のブロックとのつながり
ビジネスモデルキャンパスの書き方
⓬キーパートナー
オープン・イノベーションという考え方
パートナーを考える切り口
パートナーはパイネームで記述する
特定のパートナーに依存しすぎない
ビジネスモデル・キャンバスの他のブロックとのつながり
ビジネスモデルキャンバスの書き方
⓭コスト構造
主なコスト項目を記述する
持続的な低コスト構造を検討する
ビジネスモデル・キャンパスの他のブロックとのつながり
⓮鳥の目で各ブロックの関係性を確認する
⓯アスクルのビジネスモデルキャンバスを見てみよう
⓰参入障壁を確認する
競合に対して優位性が維持できる点を確認する
⓱自己強化型ループを見出す
最強のモデル「自己強化型ループ」
⓲SWOTの視点で各ブロックを評価する

第4章 ビジネスモデルキャンバスの仮説検証
Review of Business Model Canvas
❶ビジネスモデルキャンパスの完成度を高めるリーンスタートアップ
リーンスタートアップとは?
❷リーンスタートアップの特徴①ピボット
❸リーンスタートアップの特徴②MVP
❹リーンスタートアップの特徴③アーリーアダプター
❺GEのファストワークス(Fast Works)
❻頭客への検証はどのくらい必要なのか
❼願客への検証の留意点
訪問先の確認
観客のキーマンを確認する
顧客に関する情報の収集
対話の場合、あらかじめ質問票を顧客へ送る

第5章 ビジネスモデルキャンバスを事業計画書に落とし込む
Make Business Model Canvas the business plan
❶ビジネスモデルキャンバスと事業計画書を紐づける
本書における事業計画書の考え方の特徴
❷良い事業計画書、悪い事業計画書の共通点
良い事業計画書の共通点
悪い事業計画書の共通点
❸事業計画書に盛り込む項目とその書き方
事業計画書に書く項目は何か
①事業概要(サマリー)
②マクロ環境分析(PEST)情報
③市場分析情報
④ターゲット顧客と顧客の困りごと
⑤製品・サービス名と提案する価値
⑥価値創出のためのリソース
⑦ピクト図
⑧競合状況
⑨販売計画
⑩想定されるリスク
⑪投資回収・損益計画
⑫今後の展開
⑬推進体制
⑭今後に向けての課題
⑮実行計画
事業計画書の見直し
❹事業計画書の魅力を伝えるプレゼン
プレゼンテーションの内容
プレゼンテーションでの振る舞い

おわりに
参考文献

西田 泰典 (著)
出版社 : クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2020/1/31) 、出典:出版社HP