事業計画書は1枚にまとめなさい―――公庫の元融資課長が教える開業資金らくらく攻略法

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長く繁栄する事業の計画の立て方

本書は、事業計画書を作成する時のポイントを解説している本です。事業計画書のテンプレートの紹介ではなく、効果的に事業計画書を作成することを目指しています。融資や審査の際のポイントが多く説明されており、具体的な手続きのイメージがつかみやすくなっています。

創業計画書は8項目を埋めるだけ! このポイントを押さえれば書けるチェックリスト

1 創業の動機
融資担当者によいファーストインプレッションを
Attention「起業への熱い思い」を書けば書くほど融資担当者は冷めますよ!
□これまでの経験を生かす起業であることをアピール
□ビジネスプランの概要が読み取れる内容にする
□顧客確保のめどや起業準備していることに触れる

2 経営者の略歴等
これまで培ったスキルやノウハウを披露しよう
Attention履歴書のように書いても響きませんよ!
□起業するビジネスとの関連が読み取れるようにする
□自慢できる経歴があれば積極的に書く
□資格や知的財産権があれば大いにアピール

3 取扱商品・サービス
商品・サービスだけではなく“ビジネスモデル”を理解してもらう
Attention小学5年生でもイメージできるようにわかりやすく!
□「誰に何をどのように」売るのかを明確にする
□あなたならではの特色や強みを示す
□セールスポイントは客観的かつ具体的な表現で

4 取引先・取引関係等
見込販売先(お客様)・仕入先・外注先を決めていることをアピール
Attention販売先がもっとも重要!
□B to Bのビジネスなら取引先の固有名詞を記入
□B to Cのビジネスならターゲットとする顧客像を明確に
□仕入先・外注先は固有名詞を記入

5 従業員
必要な人材を確保していることを示そう
Attention最初は必要最低限の人員でスタート!
□主要なスタッフは決めておくことが望ましい
□過人員になっていないかチェック

6 お借入の状況
住宅ローンやカードローンなど借入があれば記入しよう
Attention隠しても「個人信用情報」に出ていると見透かされますよ!
□「返済予定表」などで残高や返済額を確認する
□自分の個人信用情報を確認しておくのが望ましい

7 必要な資金と調達方法
起業するのにいくら必要か計算して調達方法を固めよう
Attention融資額を増やすために“金額を盛る”のはNG!
□「設備資金」…金額の妥当性と必要不可欠な理由を説明できるようにする
□「運転資金」…“「原価+経費」の3~4カ月分+自己資金額”までが目安
□「調達の方法」…自己資金が重要ポイント

8 事業の見通し
起業して事業を軌道に乗せられる根拠を示そう
Attention「自信があります」だけでは融資してもらえない!
□売上予測の算出方法は“客単価×客数”が理解されやすい
□売上予測の根拠となるものをひねり出して説明する
□原価や経費は過少にならないよう注意する

はじめに

起業のための事業計画書のノウハウは、起業セミナーや書籍でいろいろ提供されています。インターネットを検索すると、事業計画書の書き方に関するサイトが多く存在しています。とりわけ、公的な創業融資を受けるための事業計画書については、情報が氾濫している感があります。

しかし、多くの起業志望者は、いざ事業計画書を書く段階になって、頭を抱えているのが実態です。さまざまな情報が出回っていても、「自分の起業の場合はどう書けばいいのだろう?」と考え込んでしまうからでしょう。

日本政策金融公庫に26年間勤務して、5000人以上の創業融資に携わってきた私からみると、出回っている事業計画書の情報には、正しいとはいえないものもあります。間違った知識に基づいて事業計画書をつくってしまうと、審査でNGになってしまう懸念があります。

創業融資を受けるための事業計画書は、膨大な枚数のものにしなければいけないと思い込んでいる方がいますが、実際にはそうではありません。日本政策金融公庫の事業計画書(「創業計画書」という名称)は、A3横の用紙1枚です。審査をパスするために大切なことは、この用紙にあなたのビジネスプランをギュッと凝縮して記載することです。融資担当者は数多くの案件を審査するので、膨大なものではなく1枚の用紙にうまくまとめてあるほうが的確かつスピーディに判断できるのです。

もちろん、審査で重視するポイントを押さえた書き方をするのが欠かせないことはいうまでもありません。そのため、融資担当者が何を見て融資の可否を判断するのか、チェックポイントを知って、それを意識した内容にすることが重要です。

本書は、公的な創業融資を受けるために有効な創業計画書の作成方法を中心に解説しています。とくに、日本政策金融公庫の創業計画書について、融資担当者に効果的に訴求するための記入方法を詳しく解説しています。さらに、融資申し込みの後に実施される融資担当者との面談に関しても、姿勢や留意点を述べています。日本政策金融公庫の内部事情をよく知っている私が書けるギリギリの内容まで踏み込んでいます。

ただし本書は、単に創業計画書の書き方や、審査をパスするための小手先のテクニックを指南するものではありません。融資を受けることが最終的な目的ではないからです。創業融資を活用する真の目的は、起業を成功させて事業を長く続けることです。本書で解説している創業計画書を作成するプロセスには、首尾よく審査をパスするだけではなく、長く繁栄する事業を構築するための準備も含まれています。

私の著書『起業は1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)でも述べているとおり、起業して事業を長く継続できる人は、起業前の事前準備を綿密に行っています。その期間は数カ月~数年と人によってさまざまですが、事業継続に必要なスキルとノウハウを得るための準備をしています。実は、起業の事前準備をしっかりと行うことが、融資担当者を説得する創業計画書を書くコツなのです。

最近では、インターネットの普及などで起業時にあまり多くの資金を必要としなくなっていますが、ぜひ公的な創業融資を利用することをお勧めします。なぜなら、資金調達のノウハウを習得しておくことが、事業を長く続けるためには大切だからです。

日本政策金融公庫に勤めた後に起業した私自身が実感しているのは、「事業経営に安定はない」ということです。起業して軌道に乗ったと思っても、山あり谷ありで、ときには窮地に陥ることもあります。しかし、たとえ資金繰りが厳しい場面に直面しても、資金調達さえできれば事業を継続することが可能です。

資金調達のスキルは、経営者として早期に身につけておくべきです。経営者の道に踏み出すときに、創業融資を受ける経験をしておけば、資金調達のスキルを習得できるだけでなく、金融機関からの信用を得ることにもつながります。日本政策金融公庫で融資を受けると、銀行や信用金庫など民間金融機関からの融資も受けやすくなるのです。

さあ、あなたも事業計画書作成のポイントを理解して、長く繁栄する事業の経営者になってください!

目次

事業計画書は1枚にまとめなさい
はじめに
目次

第1章 発想やアイデアは不要! 起業の事業計画書は最低限でいい
事業計画書はあなたの夢を叶える魔法のツール
目的に応じて事業計画書は異なる
創業融資に絞った事業計画書をつくろう
創業融資を受けるための事業計画書とは
事業戦略やマーケティングなんて考えなくていい
7つのポイントを押さえれば、融資担当者をうならせる事業計画書ができる
事業計画書づくりはこんなに楽しい

第2章 起業前に知っておきたいお金の知識
起業するなら、お金に対する考え方を変えよう
みんなどうしているの? 起業のときのお金の問題
借入をすることはよくないことなのか?
自己資金だけの起業はとてもリスキー
借入した起業家の事業は長く続いている
資金調達のノウハウを早く身につけよう

第3章 融資はどこに申し込みすればいいか
国の金融機関である「日本政策金融公庫」
地方自治体による「制度融資」
信用保証協会とはどんな組織か
敷居が高い金融機関にも攻略法がある
融資を受けるための手続きと流れ

第4章 融資を受ける際のハードル「審査」について知っておこう
審査はどのように行われているか?
審査をパスするのは難しいのか?
創業融資の審査基準とは
起業家が「金融機関の審査は厳しい」と感じてしまう理由
融資担当者に面談前から好印象を与えるために
「えっ、まさか、そんなことがあるの?」融資担当者は万能ではない

第5章 審査でチェックされるポイントを教えます
起業家と金融機関のギャップを知っておこう
創業融資の審査における3つのチェックポイント
チェックポイント①「経営者としての資質」
チェックポイント②「財政状態」
チェックポイント③「収支見通し」
完全無欠でなくても融資は受けられる
重要なポイント「自己資金」について

第6章 創業融資の事業計画書は用紙1枚でいい
なぜ人マネの事業計画書はNGなのか
日本政策金融公庫の「創業計画書」が基本
現役融資担当者に聞きました「事業計画書は用紙1枚がいいの?」
3つのチェックポイントを意識して創業計画書をつくる
見られることを意識して美しくメイクしよう

第7章 「創業計画書」左側の記入方法
「1 創業の動機」の攻略法
「2 経営者の略歴等」の攻略法
「過去の事業経験」欄の書き方
「取得資格」欄の書き方
「知的財産権等」欄の書き方
「3 取扱商品・サービス」の攻略法
「取扱商品・サービスの内容」欄の書き方
「セールスポイント」欄の書き方
「4 取引先・取引関係等」の攻略法
「販売先」欄の書き方
「仕入先」欄の書き方
「外注先」欄の書き方
「シェア」「掛取引の割合」「回収・支払の条件」を記入する理由
「人件費の支払」欄の書き方

第8章 「創業計画書」右側の記入方法
「5 従業員」の攻略法
「6 お借入の状況」の攻略法
「7 必要な資金と調達方法」の攻略法
「設備資金」欄の書き方
「運転資金」欄の書き方
「調達の方法」欄の書き方
金額を固める際の手順
「8 事業の見通し(月平均)」の攻略法
「創業当初」「軌道に乗った後」欄の書き方
売上高の予測方法
売上原価(仕入高)の予測方法
経費と利益の予測方法
創業計画書を作成する真の目的とは

第9章 融資面談は大切なプレゼンの場
融資面談は何のために行われるか
求められる資料と準備すべきもの
どんな服装や姿勢で臨めばいいか
実際に何を聞かれ、どう答えるのか
融資担当者のイヤみな視線に耐えよう
「売上予測の根拠となる資料」は何を準備すべきか
面談終了時の言葉を聞き流してはいけない

第10章 創業融資ノウハウ集
ハードルが高い融資を受けやすくする裏技とは
半年~1年前から事前準備をしよう
融資申し込みのタイミングと審査をパスするコツ
店舗や事務所を借りるときの留意点
資格・許認可・届け出を必要とする業種の留意点
個人信用情報にネガティブな情報がある場合
同居家族や家計の情報も重要
資本制ローン(挑戦支援資本強化特例制度)について
中小企業経営力強化資金について
融資を受けた後の留意点
融資金額が減額された場合の留意点
次はいつ融資を受けられるか?
融資を断られたら二度と無理か?
こんな残念な起業家になってはいけない