量子コンピュータが変える未来

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量子コンピュータの時代

聞いただけでなんとなく身構えてしまう”量子コンピュータ”ですが、本書では文理問わず量子コンピュータと社会の接点について理解することができます。また、基礎研究を進める大学における視点と、量子コンピュータを導入・利用することを視野に入れている企業の視点の両者から量子コンピュータについて考えることができます。

寺部 雅能 (著), 大関 真之 (著)
出版社 : オーム社 (2019/7/18)、出典:出版社HP

まえがき

近年、量子コンピュータという言葉を新聞やビジネス誌、インターネットなどで聞くことが多くなってきたと思います。解説書も増えてきました。しかし、それらの記事や本は専門的すぎるか、逆にふわっとした内容のどちらかに偏ったものが多く、「量子コンピュータが結局いったいどんなもので、何の役に立つのか」いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
それもそのはずで、実は、量子コンピュータが「何に使えて、どんなことに役立つのか」まだ世界中の誰もわかっていないのです。こんなことに使えるだろう、役に立つだろうと信じて、世界中の研究者たちが研究を進めている段階です。どんな技術も、はじめは世の中との溝があるものです。AI(人工知能)ともてはやされる機械学習も、画像認識というわかりやすい成果が出てきてはじめて世間からの注目が集まりました。そういったわかりやすく実用的な応用と量子コンピュータがめぐり合うのはこれからです。

本書は、今のうちから皆さんに量子コンピュータをもっと身近に感じてもらおうという想いのもと、「量子コンピュータが変える未来」をテーマに、専門家である大関真之先生と、企業の立場から量子コンピュータを社会で活用しようという挑戦を行っている寺部雅能のコンビで執筆しました。
なぜ研究段階である今の時点からかと言えば、機械学習が世の中を大きく変えていこうとしているように、量子コンピュータが世の中に与える影響もきっと大きなものになると考えられるからです。今のうちから量子コンピュータに注目しておけば、きっといろいろな業界の未来を先取りすることができるのではないかと思っています。
たとえば呼ばなくても最適なタイミングでタクシーが来て、最適な経路で渋滞のない街をすいすい進んでいく。そのうえ、通る道はあなたの好きな景色にたくさん出会える最善のルート。あっという間に目的地についている……、なんてことが量子コンピュータによって起こるかもしれません。

本書では、1章で量子コンピュータを取り巻く世の中の動向を、2章で量子コンピュータが何かを示します。3章で自動車業界および製造業の未来がどう変わるか、実証実験の事例を踏まえながら示します。そして4章では、社会でさまざまな分野をリードする13の企業の方々に、量子コンピュータで変わる未来の展望を聞いてみました。インタビューした音さんは、すでに先を見越して量子コンピュータに取り組んでいる、取り組もうとしている方々です。最後の5章に、こういった新しい分野でどうイノベーションを起こしていくのか、産学共創の視点で展望を描きました。

きっとこの本を読めば量子コンピュータをこれまでより身近に感じられるようになると思います。「人工知能に人間の仕事が奪われるかも?」なんてささやかれるこの時代、次の変革は量子コンピュータで起こるのかもしれません。きっと読者の皆さんの身のまわりの何かが変わることになると思います。その変わっていく世界を一緒に覗いてみませんか?

2019年6月 寺部 雅能

寺部 雅能 (著), 大関 真之 (著)
出版社 : オーム社 (2019/7/18)、出典:出版社HP

著者紹介

寺部 雅能(てらべ まさよし)
量子コンピュータ歴4年、寺部です。ど素人がいろいろ語れるようになるまで、それはそれは大変な苦労がありました。量子コンピュータの専門家だけでは、素人にこの分野をわかりやすく説明するのはムリ! と常々感じていたことから、企業視点でこの本を執筆するに至りました。
私は株式会社デンソーの先端技術研究所に所属しています。自動車や工場がインターネットにつながり大きな変化に直面するなか、面白いハードウェアの技術を使って新しいことができないかなーと探していたときに量子コンピュータに出会い、4年前に大関研究室の門を叩きました。現在、デンソ一社内で量子コンピュータの事業化に向けたアプリケーション研究のリーダーとして数々の実証実験に取り組んでおります。学生時代からバックパッカーとして世界63か国、主に発展途上国で貧乏旅をしてきた冒険家です。世界に影響を与えることをモットーにしており、事業化や社会課題解決に強い関心があります。本書では、量子コンピュータがどんな社会を創り、新しい事業を生み出していくかという観点で1、3~5章を担当しています。よろしくお願いします!

大関 真之(おおぜき まさゆき)
どうもー。大関です。東北大学大学院情報科学研究科で准教授をやっています。最近ではこの本の主題でもある「量子アニーリング研究開発センター」を立ち上げて、量子コンピュータの一方式である量子アニーリングと呼ばれる新しい技術を「使える」技術に仕上げる活動をしています。寺部さんとは企業と大学の間での共同研究に端を発して出会い、共に刺激しあってそれぞれの立ち位置から世界を変える活動をしています。夢は武道館での講演です。新しい技術を原理や雰囲気、できること、できないことを知ったうえで、誰もが知ることができたらどうなるだろう。そうしたら「わからないから関係のないことだ」という気持ちになる人も関心をもつようになるのではないか。そんなことを考えて、研究成果の普及に資する活動を日々続けています。本書では、研究者から見た量子コンピュータの技術、応用、今後の展望という視点で2、4、5章を担当します。どうぞよろしく。

CONTENTS

Part1 量子コンピュータとは
Chapter1 量子コンピュータはもう目の前に?
Chapter2 量子コンピュータは難しい?

Part2 量子コンピュータで世界が変わる
Chapter3 量子コンピュータで変わる車と工場の未来
Chapter4 量子コンピュータで世界を変える企業が描く未来
株式会社リクルートコミュニケーションズ
京セラ株式会社・京セラコミュニケーションシステム株式会社
株式会社メルカリ
野村ホールディングス株式会社・野村アセットマネジメント株式会社
LINE株式会社
株式会社ディー・エヌ・エー
株式会社みちのりホールディングス
株式会社ナビタイムジャパン
株式会社シナプスイノベーション
株式会社Jij
Chapter5 量子コンピュータと社会のこれから―リーンスタートアップと共創が世界を変える―

あとがき

COLUMN
量子アニーリング誕生秘話〔門脇正史・デンソー〕
量子コンピュータは始まりの終わりの時代を迎えた! 〔Bo Ewald・D-Wave Systems〕
車に載らない量子コンピュータ
量子アニーリングマシンを設置しよう

寺部 雅能 (著), 大関 真之 (著)
出版社 : オーム社 (2019/7/18)、出典:出版社HP