星野リゾートのおもてなしデザイン

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星野リゾートのデザインがわかる

本書は、星野リゾートのハード、ソフトのもてなしのデザインについて紹介している本です。高い顧客満足度を実現する星野リゾートのシステムでは、独自の洗練された世界観があります。星野リゾートのそれぞれのブランドのコンセプトから、如何にして、顧客が満足するホテルを生み出せるのかが学べます。

日経デザイン (編集)
出版社 : 日経BP (2018/6/22)、出典:出版社HP

はじめに 日本流で世界を目指す

日本のリゾート業界で異彩を放つ星野リゾート。経営に行き詰まったりした旅館やリゾート施設の運営を請け負い、さまざまな工夫で事業を再生させてきた。「リゾート運営の達人」と呼ばれるゆえんだ。手がける拠点数は2018年には38カ所、大阪でも都市型観光ホテルを2022年に開業する計画だ。取扱高(星野リゾートの売上高ではなく、運営施設の収入の合計)は東日本大震災があった2011年を除いて毎年伸びており、2017年は509億円に達した。

星野リゾートには「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」という4つのブランドがある。星のやは日本発のラグジュアリーなリゾート。界は現代の快適さを備えた温泉旅館。リゾナーレはアクティビティーを重視したスタイリッシュなリゾートだ。そしてOMOは2018年に新たに誕生した都市観光型ホテル。このほかにも個性的な宿泊施設、日帰り利用施設を全国で運営している。

さまざまなタイプの施設を抱えながら、星野リゾートの客室稼働率は平均80%に達するという。観光庁の調査によると2017年の旅館の客室稼働率(速報値)は38.1%、リゾートホテルは57.8%に過ぎない。星野リゾートの水準がいかに高いかが分かる。

一度は経営に行き詰ったりした旅館やリゾートを、なぜ再生できるのか。そこに、星野リゾート流のノウハウがある。ハードとソフト両面のおもてなしをデザインし、それを裏から支える効率的な運営システムを構築したからこそ、再びお客を呼び寄せることができるのだ。

星野リゾートのおもてなしを見るとき、注目すべきポイントはソフト面だろう。もちろん「星のや東京」をはじめとするラグジェアリーなリゾートの建築やインテリアなど、ハード面にも目を見張るものがある。しかし、同社が運営を開始した施設は、投資余力の問題からすぐに大規模なリニューアルを実施できないことも多い。それでも客数が伸び、事業が好転し始めるのは、接客サービスをはじめとするソフト面の力が大いにモノを言っているからだ。
星野リゾートを支えるソフト面には3つの特徴がある。それが「日本旅館メソッド」「マルチタスク」「フラッな組織文化」だ。
日本旅館メソッドとは、迎える側がさまざまな趣向を凝らし、お客はそれを楽しみにして宿を訪れるという日本の旅館文化をべースにした考え方であり、もてなし方を指す。具体的には、その土地ならではの魅力を発見し、磨き上げ、お客に提供するという取り組みだ。星野リゾートはあらゆる拠点でこの考え方を徹底している。

こうしたおもてなしを支えるのがマルチタスクだ。魅力的なもてなしをしようとしても、コストが掛かり過ぎては経営は立ち行かない。そこで星野リゾートは各スタッフがフロントや客室清掃、レストランサービスなどさまざまな業務をこなせるように教育する。1人で何役もこなすことで効率を上げ、その分をプラスアルファの魅力づくり=おもてなしに振り向けるのだ。
星野リゾート独特のフラットな組織文化が、マルチタスクに取り組むモチベーションを生んでいる。例えば、星野リゾートでは各拠点で地元の魅力を発見する「魅力会議」が定期的に開かれるが、そこでは入社履歴や職位に関係なく対等な関係の中で議論し、自由に発言できる。
こうしたソフト面の仕組みこそ、星野リゾートのおもてなしデザインの肝だろう。その強みは、日本国内だけでなく、すでに海外でもテスト中だ。日本のおもてなしが、いよいよ海外にも輸出されようとしている。

日経デザイン (編集)
出版社 : 日経BP (2018/6/22)、出典:出版社HP

目次

はじめに 日本流で世界を目指す

1章 OMO
OMO&OMOレンジャー
「観光」を切り口に新たな都市型ホテルを“創造”
OMO5東京大塚
空間デザインにより広く感じ、快適な客室
星野・OMOの「本気」に地元と行政も動く
インタビュー
和のテイストを生かした都市型ホテル
佐々木達郎 佐々木達郎建築設計事務所 代表取締役
OMO7旭川
星野流で老舗ホテルのスタッフを意識改革
「街とつながる」コンセプトの根幹を引き出す
開業直後のOMO
「世の中になかったサービス」を伝えていく力が問われている
インタビュー
都市型でファン層を広げ、スケールメリットを狙う
星野佳路 星野リゾート代表

2章 星のや
星のや東京 世界の都市で通用する日本旅館
星のや富士 アクティブなアウトドア体験を楽しむ拠点
星のやバリ 星野流マルチタスクは海外でも有効
インタビュー
西洋に媚びない現代の日本らしさとは何かを考えたデザイン
東利恵 東環境・建築研究所 建築家/代表取締役
インタビュー
大きな風景全体が地域の魅力を高めていければいい
長谷川浩己 オンサイト計画設計事務所 代表取締役

3章 界
界 加賀 従業員のマルチタスクが支えるおもてなし
界 松本 地元の魅力を徹底的に磨き続ける温泉旅館
界 アルプス “ぜいたくな田舎”を魅力的な体験に

4章 リゾナーレ
リゾナーレトマム 雲海テラスに続くファーム構想とは?
リゾナーレ八ヶ岳 大人のワインリゾートへ、地元と共存共栄
インタビュー
豊かなエクスペリエンスこそ大事
Astrid Klein クラインダイサムアーキテクツ代表
久山幸成 クラインダイサムアーキテクツ
Mark Dytham クラインダイサムアーキテクツ代表

5章 そのほかの個性的な宿
青森屋 アイデアを生む「魅力会議」で成長し続ける宿
ロテルド比叡 京都を捨て、再発見した地域の魅力

6章 総支配人座談会
「好きなものを伝えたい」が原動力

日経デザイン (編集)
出版社 : 日経BP (2018/6/22)、出典:出版社HP