航空産業入門(第2版)

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航空業界を展開できる1冊

航空業界の歴史から、プライシングやレベニューマネジメント、データベースマーケティング等の航空会社の最新の戦略まで詳細に解説しています。今後の航空産業における課題やビジネスモデルを考えるうえで最適の書です。

ANA総合研究所 (著)
出版社 : 東洋経済新報社; 第2版 (2017/4/12)、出典:出版社HP

はしがき

2008年に『航空産業入門』を刊行し、以降第5刷まで版を重ねてきましたが、今般,改訂版として第2版を発行することとなりました。
『航空産業入門』は、航空の歴史と政策,航空会社の戦略と経営について,広く多くの方々,とりわけこれからの日本を背負って立つ学生や大学院生を含む若手研究者に読んでいただき,航空産業についての理解を深め、より多くの方々に航空産業を志望いただきたいという考えから発行しました。その後,株)ANA総合研究所が大学との連携事業を拡大する中、多くの学生に本書をご紹介する機会を得ることができ,結果,航空産業を志望する学生を中心に業界が抱える課題や経営の要請に対する理解を深めていただけたと考えております.
一方,初版刊行の2008年から9年が経過し、航空産業を取り巻く環境や抱える課題も変化しました。特に,「台頭」と表現していたLCC(低コスト航空会社)は,成田空港,関西空港を中心に大きく事業を拡大し、国民に広く認知されるに至っています。また大手航空会社においては,刊行後間もない2010年1月に日本航空が経営破綻しました。その後,国の支援の下で再生が進められ,2017年4月には国土交通省による「日本航空の企業再生への対応について」の中で記されている日本航空に対する規制も解除されます。また国内第3位の航空会社であったスカイマークは2015年1月に民事再生法の適用を申請し,その後,他社の出資を得て,再生を進めています.
世界に目を転じると,航空会社の提携(アライアンス)が一層拡大するとともに,その提携内容も従来のコードシェアの枠組みを超えたさらに強固なものとなっています.一方,中東の航空会社の多くは今まで3大アライアンスグループへの参加には消極的でしたが,個々にサービスの充実を図ることで、業績を拡大しています。LCCも欧州や北米のみならず,アジアにおいても大きく事業を拡大するに至りました.
また,航空機製造においても大きな変化がありました.「ゲームチェンジャー」と称されたボーイング社のB787型機が,2011年に就航しました。炭素繊維複合材による軽量化が図られ航続距離が大幅に伸びるとともに燃費も改善し,多くの航空会社が導入しています.一方,エアバス社は大型機A380を2007年に就航させましたが、その後,導入の拡大には至っていません。日本国内においては、YS-11型機以来の純国産の旅客機としてMRJ(三菱リージョナルジェット機)の開発が進められています。
今回の改訂版の刊行にあたり,航空の歴史と政策および航空会社の経営について普遍的な内容を紹介するとともに,こうした2008年以降の環境変化を踏まえ,内容の見直しを図りました。第1部の「航空の歴史と政策」においては、航空会社における機材の変遷」の章を設け,航空機製造に関する著述を加えています。第2部の「航空会社の戦略と経営」においては「LCCの台頭と特徴」の章を設け,LCCの経営についてより詳細に紹介しています。これら以外にも新たな執筆者により最新の情報を盛り込み、内容の充実を図りました。
本書が初版の『航空産業入門』同様,航空産業を目指す学生にとって適切な指南書として役立つことを願っています.また,日本の航空産業の健全な発展について考える一助になれば幸いです.
最後になりますが,本書の編集にあたり,東洋経済新報社の茅根恭子エデュケーション室長およびANAグループの各部署の担当者に大変お世話になったことをこの場を借りて御礼申し上げます.

2017年3月
株式会社ANA総合研究所
代表取締役社長 岡田晃

ANA総合研究所 (著)
出版社 : 東洋経済新報社; 第2版 (2017/4/12)、出典:出版社HP

目次

はしがき

第1部 航空の歴史と政策
第1章 航空輸送の歴史
1.1 揺籃期
1.2 第2次世界大戦までの民間航空
1.3 第2次世界大戦後の民間航空の発展
1.4 高度経済成長と45/47体制
1.5 ’85日米暫定合意と航空政策の見直し
1.6 9.11テロ以降とわが国の航空
Coffee Break 空に憧れて~零戦からMRJへ~

第2章 シカゴ体制
2.1 シカゴ体制とは
2.2 バミューダ型2国間航空協定
2.3 国際民間航空機関(ICAO)
2.4 国際航空運送協会(IATA)

第3章 自由化の流れ
3.1 米国国内航空の規制緩和
3.2 米国の国際航空政策オープンスカイポリシー
3.3 EUの単一航空市場
3.4 日本の航空自由化の動き
3.5 その他の地域での航空自由化の動き
Coffee Break 飛行機のナビシステムとは?

第4章 航空会社における機材の変遷
4.1 大量輸送時代の到達
4.2 空港等環境整備の推進,発着枠の余裕,小型機による需給適合
4.3 日本製の航空機
Coffee Break 大きくなる窓,小さくなる窓

第5章 空港
5.1 日本の空港の現状と課題
5.2 昨今の空港運営に関わるこれまでの国の政策
5.3 空港民営化
5.4 2020年に向けた施策
Coffee Break 成田空港は日本一のショッピングセンター?

第2部 航空会社の戦略と経営
第6章 航空運送業の特徴・使命・環境
6.1 航空運送業の特徴
6.2 航空旅客需要の特徴
6.3 航空機の生産性
6.4 航空運送の費用
6.5 安全運航の追求
6.6 地球環境問題への対応
Coffee Break 航空会社におけるリスク管理最前線

第7章 アライアンス(航空連合)
7.1 アライアンスの背景
7.2 グローバル・アライアンスの誕生,発展
7.3 アライアンスの活動,戦略,消費者利益

第8章 ネットワーク戦略
8.1 O&D需要
8.2 便の選択要素
8.3 ネットワーク設計プロセス
8.4 ネットワークの実例
8.5 ネットワーク戦略とアライアンス

第9章 プライシングとレベニュー・マネジメント
9.1 プライシングのあり方
9.2 プライシングの多様化
9.3 国内線運賃の制度
9.4 国際線運賃の制度
9.5 レベニュー・マネジメント
Coffee Break 変わるIATAの役割

第10章 マイレージとデータベースマーケティング
10.1 FFPの歴史
10.2 FFPの仕組み
10.3 FFPデータに基づくデータベースマーケティング
10.4 今後の顧客戦略の方向性

第11章CS(顧客満足)
11.1 CS(顧客満足)の重要性
11.2 CSをどのように推進していくのか
Coffee Break 「おもてなし」コンテストがもたらすもの

第12章 ブランド戦略
12.1 ブランド戦略の必要性
12.2 航空会社のブランド戦略

第13章CRSとインターネット時代の戦略
13.1 CRSの概要
13.2 CRSの歴史と発展
13.3 近年のCRSの展開とGDS
13.4 インターネットの衝撃
13.5 インターネット・サービスの進化
13.6 インターネットとプロダクト戦略
Coffee Break 航空会社のコンピュータシステムは「一戸建て」から「大型マンション」へ

第14章 国際航空貨物
14.1 国際航空貨物とは
14.2 航空会社における貨物ビジネス
14.3 航空貨物輸送の特徴
14.4 航空貨物のマーケット
14.5 航空貨物の課題
Coffee Break ANA沖縄貨物ハブ

第15章LCCの台頭と特徴
15.1 LCCの生い立ちと発展
15.2 LCCのビジネスモデル
15.3 LCCの新たな展開について
15.4 LCCの将来に向けて
Coffee Break 変えるもの、残すもの

あとがき
索引
執筆者紹介

ANA総合研究所 (著)
出版社 : 東洋経済新報社; 第2版 (2017/4/12)、出典:出版社HP