「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方 (宣伝会議)

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インサイトでヒットを生み出す

インサイトリサーチをサービスとしている会社の代表と元執行役員により、インサイトの見つけ方をこの1冊の本でまとめてくれています。また、表現がわかりやすくすっと理解できます。今までにないビジネスに生きるアイデアを考えたい方におすすめです。

大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)
出版社 : 宣伝会議 (2017/12/1)、出典:出版社HP

はじめに

人は何を「欲しい」と思っているのだろう?
多くの人が、それを知りたいと思っています。
何が欲しい?どんなものが欲しい?どんな風にして欲しい?なぜ欲しい?
それがわかれば、新しい価値を生み出せる。ヒットを生み出せる。そう信じて、「欲しい」について考えています。

しかし、そう簡単に「欲しい」が見えてこないのが、今の時代です。
どんなものにも「だいたい、良いんじゃないですか?」と思える時代。悪くはない、でも決め手がない、だからとりたてて「欲しい」という気持ちになれない。
ほとんどの商品やサービスを前にして、人々はそんな気持ちを抱いているのが実情です。
普通に見ていても、人々の「欲しい」は、視界に入ってこない。
行きたいところにたどりつけない迷子のように、多くの人がさまよっている。
「欲しい」が見えてこないのは、なぜなのでしょう?

それは、当然のことです。
「欲しい」は、隠れているからです。
だから、普通にぼんやりと眺めていても、あなたの目には入ってきません。

では、どうしたらいいのでしょう?

隠れているものを探すには、そのための道具が必要です。
それが、「インサイト」です。

「インサイト」って、何ですか?
疑問を感じた方のために、まずその「定義」だけをお伝えしておきます。

インサイトとは、「人を動かす隠れた心理」のことです。
これがわかれば、見えてこなかった「欲しい」が理解できるようになります。

普通に考えていては見えづらい「欲しい」がわかるようになれば、ヒットを生み出すアイデアも手に入れられます。
そのインサイトという強力な「武器」は、身につけられるのです。
この本では、インサイトという武器の考え方、使いこなし方を紹介していきます。
そして、「欲しい」を知りたいと悩み、迷子となっている人の力になります。

この本が、インサイトをそのように説明し、伝えられるのはなぜなのか、を理解していただくために、ここで著者である私たちのことを少しお話しします。
私たちは、過去5年間でインサイトを扱うプロジェクトを、さまざまな企業から依頼を受けて600件以上担当してきました。商品やブランドの開発、コミュニケーションやマーケティングアイデアの開発をはじめ、インサイトに着目した企業の新たなビジネスの支援や、インサイトを社内に理解・浸透させるための企業内セミナー
といったことも実施しています。
今でこそ、このように書くことができますが、過去には苦い経験も数多くありました。
インサイトという考え方は面白い。だから一緒にやってみましょう、御社の力になれます!とスタートしたプロジェクト。
それなのに、思ったようにインサイトを見つけることができない。
リサーチを行い、分析して探し当てたインサイトを報告しても、そのインサイトそのものを理解してもらえない
こちらでは良いインサイトを見つけたつもりでも、そこからプロジェクトとして良いアイデアにつながらない。
自分たちも自信を失いかけたことがありました。

しかし、その失敗を糧に、「なぜダメなのか?」を考え、その答えを探してきました。
逆に「こんな風にできませんか?」という問いかけに応えるべく、必死で新しい方法を生み出し、大小さまざまな改善を繰り返してきました。

そのような改善の過程を経て理解を深めると同時に、「なんとなくインサイトを活用する」という企画者の勘に頼った、その場その場での対応ではないものが必要と考えました。
作業を体系化し、使いやすいフレームを作り上げ、一部の人だけでなく誰もがインサイトを使って答えを出せる方法論にまとめたのです。それが、本書で紹介する、「インサイトに関する体系化された実践知」です。最後までお読みいただければ、その実践知を理解し、身につけていただくことができます。
また、インサイトの活用に関する事例もいろいろと紹介します。インサイトについての理解が深まらない理由には、説明に具体性が不足していることも大きな原因となっていると思うからです。「こういうことがインサイトなのか」といったことを、具体的にお見せすることによって理解していただけます。

マーケティング、研究開発、事業開発の部門に携わる方にはぜひご一読いただきたい内容となっています。あるいは、アイデアを作る仕事に関係する人、イノベーションを起こしたい人、そのような方であれば、この本は間違いなく力になるはずです。さらに、コミュニケーションや広告のクリエイティブ、プロモーション、eコマース、サイト運営、Web制作、アプリ開発、等々に関わる、さまざまな領域の方に、有効なヒントを発見していただけます。
それでは「欲しい」の本質、インサイトについて具体的に説明していきましょう。

大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)
出版社 : 宣伝会議 (2017/12/1)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 人の欲しい、は隠れている
01 いま、消費者は「だいたい、良いんじゃないですか?」の時代
インサイトの考え方が求められる背景とは
問題がゴロゴロ転がっていた時代は、その問題を解決すれば良かった
「ガラケーからスマホ」のような、隠れた欲求を満たすものが必要
02 人を動かす隠れた心理=インサイト
マクドナルドの大きな誤算
優れた心理を探る
「5%の無意識」にアプローチする
「家の鍵を開けること」に優れたインサイト
イノベーションは「顧客の声」からは生まれない
消費行動に影響を与える「認知バイアス」
答えを持っていないのに、聞かれると答えてしまう
「インサイト」と「ニーズ」の違い
03 なぜ先進企業はインサイトに注目するのか
当初は広告領域で注目された概念
徐々にマーケティング領域に拡大
新たな潮流「デザイン思考」との共通項
人間が求めているものは何か、を見出す
インサイトは企業でどう使われているか
インサイトを戦略の核に置く、グローバル企業

第2章 ”人を動かす隠れた心理=インサイト”の構造を理解する
01 優れた作り手は消費者の心理をどう読んだのか
事例「会いに行けるアイドル」AKB48
キーインサイト、バリュープロポジション、アイデアというフレームワーク
事例「大人が夢中になれる場所」ディズニーランド
事例「受験生を応援する」キットカットインサイトの活用領域
02 インサイトを構成する4つの要素
「客観的な事実に基づく感情」がインサイト
感情だけを追うと、アイデアが的外れになる
インサイトを構成する4つの要素
03 インサイトは3つのタイプに分類できる
3つのタイプ「価値」「不満」「未充足欲求」
「価値」のインサイトと、そこから導かれるアイデア
「不満」のインサイトと、そこから導かれるアイデア
「未充足欲求」のインサイトと、そこから導かれるアイデア
「キーインサイト」の要件「信値」のインサイトで人はどう動くか
「不満」のインサイトで人はどう動くか
「未充足欲求」のインサイトと「人が動く」の関係
人を動かさない心理はインサイトではない
人の欲望は天使と悪魔の両面で捉える
欲求を基点としてインサイトを考える
表(番)だけを見ると「きれいごと」になりがち
人間の欲望を8つに分類した「欲望マンダラ」
デビルインサイトの例「制」做優・支配
デビルインサイトの例「泉」暴発・色欲
エンジェルインサイトの例「容」親密・承認
エンジェルインサイトには要注意、一度デビルを疑ってみる

第3章 ユーザーや競合ではなく”人間を見に行く”
01 “人間を見に行く”ことがイノベーションの出発点
「人間を見に行く」から始める
近視眼的な発想では消耗戦を続けるだけ
02 イノベーションを実現したアイデアとインサイト
イノベーションに必要なのは「非連続性」
「新路線(破壊系)」の例AKB?
「新路線(破壊系)」の例ディズニーランド「新
路線(ズラシ系)」の例マウンテンバイク
03 人間を見に行く=ターゲットの興味や関心に寄り添うこと
直接、消費者に答えを求めてはいけない
人間を見に行くことから、「買わない理由」を理解する
事例幼児向け通信教育ブランドの価値向上
事例若者のクルマ離れを食い止める
「関心のないこと」のインサイトを、「人間を見に行く」考え方で調べる
事例男性ミドル層のスキンケアに関するインサイトを調べる
普通の人のちょっと変わった事象を収集する「新奇事象」
「新奇事象」を収集するには
人間を見に行くための道しるべ
04 ”人間を見に行く”ふたつの道しるべ
アプローチVIL
アプローチの生活の仕分類

第4章 成熟市場におけるビジネス機会の見つけ方
01 6つのフェーズで構成されるプロジェクトの工程
インサイトは現状を打開するための有効な手段
6つのプロセスに分類できる
02 インサイトリサーチの前に必要なオポチュニティ発見
「オポチュニティ発見」とインサイト
03 オポチュニティ発見のメソッド
強制発想法を用いたオポチュニティの見つけ方「スペースファインダー」
事例白髪まじりの黒髪を銀に見せるワックス
「Webアクチュアルデータ分析」によるオポチュニティ発見
事例「Google Trends」によるオポチュニティ発見
オポチュニティも玉石混治。「玉」を見つけるには「玉度モデル」

第5章 インサイトを発掘する方法
01 インサイトを明らかにする方法
意識の下に隠れている「無意識」へのアプローチ
インサイト探索の留意点
「考えさせない」ことがもっとも重要
インサイトリサーチの手法は「心理学」系と「文化人類学」系の2系統
インサイト理解のためのデータ収集のパターン「集める」と「集まる」
02 心理学に基づく感情からのアプローチ
ビジュアル刺激店
写真を用いて無意識にアプローチするビジュアル刺激法
ビジュアル刺激法の実施方法
消費者が求める「五感」をリッチに言語化
文章完成法
文章完成法による投影
03 文化人類学に基づく事実からのアプローチ
行動観園
行動観察によるインサイト探落
観察する際の留意点
行動観察のプロセスと、留意すべきポイント
ソーシャルリスニング
ネット上の発言を素材としてインサイトを探るソーシャルリスニング
ソーシャルリスニングの3つのステップと留意点
コミュニティリサーチ
コミュニティリサーチ(MROC)は集めて、集まる
実況報告のように書き込んでもらい、利用状況を把瑠
04 インサイトの読み解き方
ポイント①「離せ、戻せ」で考える
ポイント②良いアイデアにつながるかどうかを意識する
ポイント③生の素材から感じる遠和感を大切にする
ポイント④正しい、ではなく、面白い
ポイント⑤「既存路線」でない「新路線」に着目する
ポイント⑥「組み合わせの妙」を見つける
ポイント⑦回していること、言えないことを意識する
インサイトの3分類・4要素で考える

第6章 既成概念を壊してアイデアを手に入れる
01 ワークショップでアイデアを開発する
イノベーションを阻む「既成概念」を壊す
インサイトとアイデアの関係を「枠の中」で考える
ワークショップの基本構成
「なんとなくワークショップ」とは完全に異なる場を作る
02 アイデア開発の精度を高める。ひとこと化メソッド“
優れたアイデアは「ひとこと」で表現できる
ひとこと化メソッドの基本
実例で読み解く「ひとこと化の法則」法則に理想プレゼン
実例で読み解く「ひとこと化の法則」法則④タイム&ロケーションシフト
実例で読み解く「ひとこと化の法則」法則にズラす新鮮
03 インサイトマンガ。でインサイトを直観的に共有する
「伝わり方」が格段に違ってくる
マンガでアイデアの理解も容易になる
04 アイデアの実現可能性をコントロールする技術カード:
アイデアをインサイトとシーズの画面から考えるために
技術カードの作成プロセス
05 キーインサイト・パリュープロポジション・アイデアの検証
そのキーインサイトはどれだけ共感を集めるか
アイデアのプロトタイピングと検証
キーインサイトの評価とアイデアの評価の関連性で検証する

第7章 インサイトを活用した業務プロセスの構築
01 インサイトを起点とする業務プロセスの再確認
「人間を見に行く」ことから始める考え方
インサイトをベースに発想する業務プロセス
02 インサイトを活用した業務プロセスを構築する際のポイント
4つのポイントがある

あとがき

 

大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)
出版社 : 宣伝会議 (2017/12/1)、出典:出版社HP