戦国時代の計略大全 (PHP新書)

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戦国時代の計略ミニ百科事典

軍団や戦物語のような話には昔から大勢のファンがおり、このような話の延長線上に出てきた講談もたくさんの聴衆を集めてきました。本書では、軍団や戦物語、特に奇計、奇略などの話のファンである著者が、日本の戦国時代の話題を中心に、それに関連する古今東西の戦史まで幅広く紹介しています。

鈴木眞哉 (著)
出版社 : PHP研究所 (2011/6/16)、出典:出版社HP

はじめに

軍談とか戦物語といった類のお話には、むかしから大勢のファンがいます。『平家物語』『源平盛衰記』や『太平記』が長く読み継がれ、中国ダネの『漢楚軍談』や『三国志演義』が広く普及したのも、そうした人たちの存在があったからです。
こうしたものの延長線上に出てきた講談が、たくさんの聴衆を集め、近代になると活字化されて、多数の読者に熱狂的に迎えられたのも同じ理由からでした。私なども、子どものころから、そういう軍記物や講談本の類に慣れ親しんできました。

もっとも、多くの方が好まれるのは、血沸き肉躍るような勇壮なお話とか、涙なくしては読めないような悲壮なお話なのではないかと思いますが、私は少し違いました。奇計、奇略、奇策、奇謀……といった、とにかく頭に「奇」のつくような話が大好きでした。具体的に申しますと、わが国でいえば楠木正成や真田幸村、外国でいえば諸葛孔明といった人たちにまつわるようなお話にことさら興味を引かれたということです。
長じてのち、本業の傍ら歴史の世界に首を突っ込むようになりましたが、三つ子の魂なんとやらで、この傾向はずっと変わっておりません。あれこれ調べていて、その手の話にぶつかりますと、ついつい時間をとられてしまうといったことがいまだに続いています。おかげさまで、そうした話題がずいぶん集まりました。同好の士もかなりいらっしゃるのではないかと勝手に想像だか期待だかいたしまして、それらをひとくさり語らせていただきたいというのが、この本の趣旨であります。

対象は、だいたいわが国の戦国時代ということにいたしますが、この手の話題は、なにもこの時代に尽きるわけではありません。とっくに~先輩が存在するようなお話も少なくありませんし、追随してくる,後輩”も多々あります。また、同様の事例はわが国にとどまるものではなく、外国にもいくらも存在します。なかには、中国あたりから~輸入、されたと見られるものも数々見受けられます。
ということで、古今東西の戦史を広く渉猟して……と大見得を切れるほどではありませんが、できるだけ幅広く話題を提供したいと考えています。と申しましても、あくまでもわが国の戦国時代が主体ですから、ほかの時代やほかの国にいくらおもしろい事例があっても、戦国時代に類例のないような場合には、残念ながら割愛させていただきます。

お伝えしようという話は、いずれもそれなりの根拠があるもので、私が勝手にデフォルメしたとか、いわんや創作したものなどは一つもありません。逐一、出典をお示しすることはいたしませんが、その点は、まずお断りしておきたいと思います。
ただ、ちゃんとした出典があるということと、そこにある内容が真実であるかどうかということとは別問題です。というより、この本でお話ししようとする事例のなかには、真偽が定かでないものや、明らかにガセとしかいいようのないものがいくらもあります。困ったことに、おもしろそうな話題ほど、そういう傾向が強いのです。
しかしながら、そういうものを切り捨ててしまうのは、あまりにももったいないと思いますので、それらも含めてお伝えするつもりですが、史実かどうかということが気になる方もいらっしゃるでしょう。そこで、これは信用できる話か、怪しい話かということは、そのつどきちんとお示しするつもりですから、ご安心いただきたいと思います。

それでは前口上はこのくらいにして、本題に取りかからせていただきますが、私流の〈軍談〉として、気楽にお読みください。

鈴木眞哉 (著)
出版社 : PHP研究所 (2011/6/16)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第一章
戦闘の構想——勝つための戦略・戦術
奇襲
迂回奇襲側面攻撃・背面攻撃
中入りの計
夜討ち
朝駆け
火攻め
火船の計水上の火攻め
野戦の水攻め
おびき出し
おびき寄せ
小荷駄を狙う計
塩留めの計
裏切りをつくる。
朝鮮王朝の倭兵防御策
真田昌幸の遺策
真田幸村、最後の奇略

第二章
攻城——城攻めのあの手この手
城に火を放つ計
水攻め
兵糧攻め
煙攻め
水の手を断つ計
坑道戦(もぐら戦術)
城を爆砕する計
龟甲車
城に潜入する計
平時に詐術で城を取る
城に登る工夫
山越えに船を運ぶ計
城兵をおびき出す計
武田信玄初陣の奇計
提灯と松明で城を落とす計
大工を買収した城取り法
大砲で城を落とす
火薬に水をかける計

第三章
守城―窮地に対応する作戦
古墳を利用して城をつくる
二重塀
抜け穴
隠し門
死角のない城
城から物を落とす
城から物を撒く
藁人形の計
おびき入れ(おびき寄せ)
白米城
兵糧入れ
空城の計
坑道戦(もぐら戦術)に対抗する計策
留守の火縄
隠し着到
城外から水を引く工夫

第四章
陣立て工夫を凝らした構え
伏兵
釣り野伏せの計
敵中退却
捨てかまりの計
背水の陣
啄木鳥の計
車がかりの備
長蛇の陣・胡蝶の陣
半途を撃つ計
擬勢を張る計

第五章
野戦―戦場に仕掛けられた罠
鉄砲構え・馬防柵・馬防ぎの築地
川底に仕掛けをする計策
紙を貼って白壁を装う計
落とし穴の計
埋火の計
菱を撒く計
稲を結ぶ計

第六章
兵器 飛び道具から船まで
石を飛ばす工夫
大坂城の木砲
大砲を動かす工夫
大砲の狙いを外す計策
騎馬缺砲
鉄砲の多段撃ち
烏渡し・取次ぎ
下知して鉄砲を撃たせる工夫
竹東
銃陣に立ち向かう計
真田の火砲・火術一
ほうろく火矢
装甲船
潜水艦

第七章
動物人間以外の戦士たち
火牛の計
伝書犬の工夫
牝馬を使った奇計
蛇攻めの計
猫の目時計
鶏の声時計
乗り込み・乗り切り
牛に乗る
戦場での鷹の効用
馬を狙う計
音で馬を脅かす計

第八章
欺瞞策敵も味方も欺く手口
だまし討ち
援兵を装って敵陣に入り込む計
敵の中に紛れ込む計
使者に化けて敵将を狙う計
敵兵を装って敵将を狙う計
死体を装って敵を襲う計
影武者・身代わり
偽首をつくる
忍者をだます工夫
棄て旗の計
賽銭のトリック

第九章
情報戦―だまし・だまされの伝達・宣伝手法
合言葉・合印
立ちすぐり・居すぐり
相図の旗・証拠の旗
旗印を借りる計
敵に旗を取らせる計
敵の首や捕虜を見せつける計策
偽情報を流す
御褒美長持
前恩賞
忍者の効用

おわりに/索引

鈴木眞哉 (著)
出版社 : PHP研究所 (2011/6/16)、出典:出版社HP