超現代語訳 戦国時代 笑って泣いてドラマチックに学ぶ (幻冬舎文庫)

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戦国時代の解説本

戦国時代の話は固そうだし、出てくる名前がややこしいし、とにかくわかりにくそうと感じている人は多いです。しかし、戦国時代は人間がもつあらゆる能力をフル活用して、生死を懸けた駆け引きと戦いを常に繰り返している、物語としての要素が全て詰まったノンフィクションです。戦国時代をわかりやすく説明した本書を読めば、戦国時代の面白さに気づくでしょう。

房野 史典 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2019/6/11)、出典:出版社HP

はじめに

「あ、おもしろいんですね」
戦国時代の中身をめちゃくちゃ噛み砕いてお伝えすると、みなさんこうおっしゃいます。
話もカタそうだし、出てくる名前がややこしいし、どこをどう見たらいいかわかんないから、この話題は避けて通ってきた。|こんな人多いです。ただ、話の本質を説明すると、最初に書いた「あ、おもしろいんですね」が、確実に返ってきます。
そりゃそうです。戦国時代は、人間が持つあらゆる能力をフル活用して、生死を懸けた駆け引きと戦いを常に繰り返しているノンフィクション。おもしろくないわけがないんです。物語としての要素が全部詰まってます。
この本では、その魅力を自分なりにお伝えしていきたいと思います。それがみなさんに伝わったとしたら、ただただ、僕が喜びます。「あー書いてよかったなー」って、僕が思います。みなさんに喜んでもらえるのが何よりなので。

では、戦国時代の話に入る前に、戦国時代が日本の歴史のどこに位置するのか、それをまず言っちゃいますね。そのために、日本史の大まかな流れを、乱暴に、とても雑に、はしょりにはしょって、ご説明したいと思います。
「だったら、ここ読まなくても大丈夫じゃない?」と思われた方……鋭いです。ここ読まなくても大丈夫です。
ただ、もしかすると、本編の事柄が頭に入りやすくなる可能性があります。あくまで可能性ですよ。
では、日本の流れ、参ります。約3億年前に地球誕生。海ができて、生命が誕生して、でっけー大陸ができて、人類が誕生して、今の日本にあたる辺りにも人が移動してきます。ナウマンゾウやイノシシを石で狩る生活がとんでもなく長~く(何万年だよ)続きます。《旧石器時代》1万数千年前、日本は大陸から離れて、ほぼ今の形になります。
そこから、狩りをして、木の実を食べて、土器とか竪穴住居とか造っちゃう時代が、これまたずーっと続きました。《縄文時代》
その後、大陸から~農耕”が伝わり、「イネだー!とにかく稲作だー!」って、みんなが口々に叫びます(口々に叫んだのはウソです)。この頃から人々は集団を作り始め、最初は小さな集団だったものが、やがて大きな集団になり、だんだん争いも起こり始めちゃう。「リーダーが必要!」ってことで、~卑弥呼、さんて人が女王になります。《弥生時代》
その次に、大王を中心として、豪族(権力を持ってる人ですね)が集まった「ヤマト王権」ていうでっかい組織(政府みたいなもんですね)が誕生しました。身分が分かれて、仏教が入ってきて、古墳(ちょーデッケーお墓)が造られた時代でございます。《古墳時代》大王はやがて天皇と呼ばれ、豪族は貴族となっていきます。
そして、都(首都)ってのが奈良県にできて、今でいう「法律」が出来上がっていき、中国と仏教の影響をいっぱい受ける時代に突入。~厩戸王(聖徳太子)”さんが天皇を支えた後、蘇我さんて人たちが権力を持ちすぎたから、中大兄皇子、さんや,中臣鎌足,さんたちが、・蘇我入鹿さんを暗殺したのもこの頃です。《飛鳥時代、奈良時代》
そこから、都は京都に移り、藤原さんていう貴族の人たちが、「世の中、全部オレたちのものだ」って詠っちゃうくらい、ムチャクチャ力を持ち始めます。その権力は上皇(天皇の地位を譲った人)に移った後、新たな存在に移行していきます。下級貴族が武装してできた集団(諸説あり)、「武士」です。平氏という武士たちが力をつけまくって、「平清盛、さんは強大な権力者になります。《平安時代》「平氏このままいくかなー」って思ってたら、源氏って武士たちが、平氏を倒しちゃいます。その後、源氏の↑源頼朝、さんは、征夷大将軍(武士のトップ)になって、鎌倉に幕府(政府)を開きます。で、途中から、頼朝さんの奥さんの実家の北条”さんが実権を握ります。「鎌倉幕府このままいくのかなー」って思ってたら、「やっぱり天皇が政治を行うべきだ!」っていう”後醍醐天皇”と、幕府に不満がたまった地方の武士たちによって、鎌倉幕府は滅ぼされます。《鎌倉時代》
“後醍醐天皇”と、幕府に不満がたまった地方の武士たちによって、鎌倉幕府は滅ぼされます。《鎌倉時代》
後醍醐天皇のそばから離れ、「やっぱり武士が仕切ります!」と言った~足利尊氏”さんが、征夷大将軍(また出てきた)になって、室町に幕府(こっちもまた出てきた)を開きます。「このまま室町いけるかなー」って思ってたら、大きな内部分裂(応仁の乱)が起きちゃって、『日本国内、ずっと争いが続いてる』ジョータイになります。《室町時代》「戦国大名」と呼ばれる武士が争いまくった時代は、~織田信長さんが天下統一しそうになって、結果、*豊臣秀吉』さんが天下を統一して、終わりを迎えます。《安土桃山時代》豊臣家を滅ぼした~徳川家康』さんは、征夷大将軍(好きだね)になり、江戸に幕府(ホント好きだね)を開きます。「この時代は長いこと続くぞー」と思われていたんですが、外国から黒船がやってきて、「仲良くしようよ」と迫られた事件をキッカケに、「仲良くするべきだ!」内「仲良くするべきじゃない!」という争いになり、幕府の人たちオロオロ。「もう幕府は頼りにならない!オレたちが幕府を倒して新しい時代を作る!」という、薩摩(鹿児島県)と長州(山口県)の人たちが中心になったチームによって、江戸幕府は倒されます。《江戸時代》
武士の世の中は終わり、内閣が出来上がり、欧米の文化がいっぱい入ってきて、洋服なんかも着ちゃったりします。中国やロシアと戦争したのはこの頃。《明治時代》
で、世の中は、「国民が主役!」って方向に流れていき、誰もが政治に参加できて、いろんなことがもっと平等に、もっと自由になった方がいいという考えが広まります。世界では、様々な国を巻き込んだ「第一次世界大戦」が起こり、日本もこれに参戦します。《大正時代》日本はどんどん戦争の方向に傾いていき、二度目の大きな戦争、「第二次世界大戦」で敗れます。しかし、そこから日本は、復興を遂げ、「経済大国」と呼ばれるまでになります。《昭和時代》
そして、これを読んでるあなたが体験し、駆け抜けていった《平成》。
今現在は《令和》です。

はい、流れ終わり――。
さて、僕がお届けしたいのは、『日本国内、ずっと争いが続いてる』ジョータイ、「戦国」と呼ばれる時代。その中のほんの一部を、今からご紹介したいと思います。
ひとりよがりな文章も出てくると思いますが、「もう、しょうがないな……」と大目に見ていただくみなさんの努力を期待しております。

房野 史典 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2019/6/11)、出典:出版社HP

目次

◆はじめに

序章 応仁の乱
◆もうなんか昼ドラみたい
愛憎、裏切り、欲、別れ……。ドラマチック戦国物語、開幕!

第一章 関ヶ原の戦い
◆関ヶ原の戦い1 超嫌われ者の正義漢
戦国時代の勢力図とその変遷がよくわかる!
天下分け目の関ヶ原
◆関ヶ原の戦い2 突然君からの手紙 ~君がくれたもの~
知る人ぞ知る「直江状」。宣戦布告はこんな形でやってきた!
◆関ヶ原の戦い3 導かれし者たちと大人の学級会
家康タヌキ! 武将たちの思惑を操って オレ様王国”を着々と
◆関ヶ原の戦い4 地獄の業火に焼かれながら 〜ドレミファソラシド~
騙し合い・試し合いの間で、悲劇の道をたどった姫もいた
◆関ヶ原の戦い5 私の思慕いをジョークにしないでって言ってやりたい。私はマジなんだから
関ヶ原の戦いが始まる直前まで、趨勢はゆらゆらと動いていた
◆関ヶ原の戦い6 パルプ・フィクションとレザボア・ドッグスとキル・ビル足して3倍した感じ
いよいよ突入。世紀の大戦、関ヶ原の戦い!
◆関ヶ原の戦いエピローグ 面影ばかり追いかけた自分だけど、まるで後悔していない
関ヶ原の戦いで散った名将たちの、その後

第二章 真田三代
◆真田三代1 華麗なる一族が放つ若草物語
味方だけでなく、敵からも絶賛された真田一族って何者よ?
◆真田三代2 与えられた才能に、武田の魂が注がれて出来上がり
くわせもんぶり”が魅力の昌幸。マジで、どんだけ くわせもん”?
◆真田三代3 けんかをやめて。3人をとめて。わかった、私も加わる
信長が本能寺で暗殺された後の大混乱を、
昌幸、ひょうひょうと生き抜くの巻
◆真田三代4 ホーム・アローンエピソードゼロ。同時上映、実写版さるかに合戦
3倍の兵を持つ家康相手に、真田はどうやって勝ったのか?
◆真田三代5 離れていても、好きだったら、想っていたら……
家康をビビらせまくった真田昌幸の最期とは –
◆真田三代6 あの鐘を鳴らしたあなたに捧げるレクイエム
お待たせしました!
真田幸村の名で知られる信繁の活躍はじまりはじまり~
◆真田三代7 素敵なお城からレオンがコスプレして機関銃撃ってきた
要塞「真田丸」は、かくして、世に名を轟かせたのです
◆真田三代8 ケンカのあとはほっぺにチュ。でもちょっと血の味がする
大坂冬の陣では徳川をやりこめた要塞
「真田丸」の、まさかの末路|
◆真田三代9 真紅の鎧は地上を駆け抜け、やがて天翔ける
信繁を最後まで駆り立てたものは何だったのか?
涙なしに読めない「真田三代」最終回

◆おわりに
◆文庫版あとがき
◆解説 河合敦

◆ [参考文献]

本文デザイン 水戸部 功
イラスト 曽根 愛

房野 史典 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2019/6/11)、出典:出版社HP

序章 応仁の乱

もうなんか昼ドラみたい
愛憎、裏切り、欲、別れ……。ドラマチック戦国物語、開幕!
ということでさっそく本題。
日本の戦国時代って、織田信長とか豊臣秀吉とか武田信玄とか、名前は聞いたことがあるけど、要は何した人かってのには答えられないし、何が目的なの?そもそもなんで戦ってんの?なんで現場に血が流れるの?って人が、結構いると思うんです。
それを理解するには、そんな戦いの世の中になったキッカケをまず知ることだと思うんですけどね。
応仁の乱
って聞いたことあります?教科書に書いてあるから、何人かの人は「あ〜なんか聞いたことあるかも~」って感じでしょ?確か、教科書には戦国時代が始まるキッカケになった事件と書いてあったはずだけど、どんな内容かまでは書いてなかった気が……書いてたとしてもすごくわかりにくかったような……。
でも、応仁の乱て、超わかりやすいんですよ(ガチで調べるとむずかしいけど)。人間関係が織り成すドラマなんです。なのでちょっとお付き合いを。
当時、日本で一番偉かったのは、「足利」って人たち。この人たちが「将軍」と呼ばれて、政治のトップにいて、代々、世の中を取り仕切ってたのが、室町時代ってやつです。
事件は
八代将軍・足利義政
って人のときに起こります。
足利義政って人は、あの京都の銀閣寺を建てた人です。
この義政って人、水墨画いいじゃない!茶道素晴らしいじゃん!庭園も芸術にしないとね!やっぱ、わびさびだよね~!って、今でも残る日本文化の数々を奨励した、トップレベルの文化人でした(後世、これは「東山文化」って呼ばれるようになりました)。
政治に関しての評価はよろしくありません……。最初はやる気があったのかもしれませんが、政治がうまくいかなくなったり、自分の威厳が薄れてきたりすると、趣味の日本庭園造りや、お酒に溺れだしたりするんです。んで、「あ~もう将軍やめたいなぁ……。そろそろバトンタッチしたいな……」
引退を考えるようになるんです。
が、そこでハッと気付くわけですね。
「いや、オレ子供いねーじゃん」
そう!後を託す、次の将軍になってくれるお世継ぎが、義政にはいなかったんです。
「あ、でも弟いるわ。弟でいいや」
義政には義尋という弟がいたので、この弟に将軍職を託そうとするんですが、これにはちょっとした問題があります。
弟は仏門に入ってたーいわゆるお坊さんになっていたんです。

足利義政「こっちに戻ってきて、将軍やってよ」
足利義尋「いや還俗(お坊さんから一般の社会に戻るってことだよ)はしんどいわ」
義政「わかるけど、お願い!」
義尋「いや無理だって」
義政「だよね。でもお願い!」
義尋「オレこっちの道で行くって決めたから」
義政「確かにな。でもお願い!」
義尋「本当無理だから」
義政「わかった。でもお願い!」
義尋「…」
義政「でもお願い!」
義尋「….しつけー」

再三の義政のお願いで、ようやく弟も腹をくくって、なんとこっちの世界に戻って将軍をやることを決意しました。そして名前を~足利義視、と改めます。
その矢先。
子供が生まれちゃったんです……。義政と日野富子という奥さんとの間に、子供が生まれちゃったんです……(この子供、のちに義尚って名乗ります)。
そうなると、是が非でも子供に将軍職を継がせたいのは日野富子さん。「弟だか何だか知りませんけどね、子供が将軍を継ぐのが筋ってもんでしょ!」
これには弟の義視くんも、黙っちゃいられません。「いや、こっちは兄貴から散々お願いされて、人生懸けてこっちに戻ってきたんだよ!しかも必ずお前を将軍にするっていう契約書付きでな!」(実際、義政は起請文っての書いたらしいです)
はい、ぐちゃぐちゃー。
お家の中ぐちゃぐちゃー。
家ん中ドロドロしちゃって、もうなんか昼ドラみたい。
でもね、嫁と弟のいがみ合いで終わってたら、ただのお家騒動でピリオドが打たれてたはずなんです。ここから、も一つ、もう一つ、ややこしくなる。日野富子さんと義視くんが、それぞれ後見人連れて来ちゃったんです。
富子さんと息子くんの方には、山名っていう有力大名(いっぱい土地持ってる超強ぇー人ね)。義視くんの方には、細川っていう有力大名(いっぱい土地持ってる超強ぇー人ね)。双方が、そんなとんでもないやつらを連れて来ちゃったから、ただのお家騒動じゃなくなっちゃった。
東軍と西軍に分かれての大きな戦争になっちゃった。
はい、昼ドラの枠超えたー。
さらに……。
将軍を補佐する「管領」ってポジションがあるんですが、そこを担当してる斯波家ってところと、畠山家ってところも、何と後継者争いしてたんです。
となると、分かれちゃうよねー。
斯波家の中でも東軍と西軍に分かれて。
畠山家の中でも東軍と西軍に分かれて。
当時の日本の中心の京都がもうそんな感じだから、それが飛び火して、日本中のお侍さんが、東軍と西軍に分かれ、日本の中の広い範囲で大戦争になっちゃったわけです。
それが応仁の乱。
この戦い、何と1年間も続いちゃったんです。
するとどうなるか。
中央政権の足利幕府(当時の政府って感じ)の権力とお金が、どんどんなくなってくる。
そしたらどうなるか。
今まで言うことを聞いていた全国の地方の大名(その土地を治めてる強ぇーやつ)たちが、足利幕府の言うことを聞かなくなる。
結果どうなったの?
大名それぞれが、それぞれのやり方で自分の土地を経営し始めて、もっと裕福になりたい大名は他の大名にケンカふっかけて、そこの土地を奪おうとした。中にはそのまま奪いまくって、天下一になろうと企むやつも出てきた(織田信長とかまさにそう)。

次の日本のリーダーが決まるまでは、この戦いが続くってことなんです。
戦国時代って、だからこんなにも争ってたんですね。こんなに酷い応仁の乱だけど、メリットがゼロってわけじゃありません。日本の中心の京都が主な戦場だから、いろんな人が地方に避難するワケです。すると、お坊さんとか公家さん(「まろは……おじゃる」的な人)も、地方に逃げるワケですよ。伝達ツールの乏しい時代ですから、それまでは都会の文化や学問が地方にガッツリ伝わることがあまりなかった。ところが、応仁の乱が起きたことで、地方に逃げた公家さんやお坊さんが、地方に都会の最先端の文化や学問を持って行くわけです。
結果、全国のいろいろな文化の発展に繋がったんですね。
文化の発展と人の亡くなった数が比例してるってとこが、諸手を挙げて喜べないところですが……。

と、まぁ戦国時代に突入したキッカケ、応仁の乱ってこんな感じだったんだよって説明を終わります。
教科書的には大してスペース割かれてないし、学生のテストには必要ないかもしれませんが、本当の歴史のおもしろさや知識って、こっちじゃないかなと思ったりもします。
ちょっとわかったかも!って思ったり、誰かに教えたい!って思ったら、「この本イイよ!」って伝えてね!」

房野 史典 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2019/6/11)、出典:出版社HP