地域から考える環境と経済 — アクティブな環境経済学入門 (有斐閣ストゥディア)

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新しいスタイルの環境経済学入門

環境問題は、地域の問題とも言えます。本書では、私たちの身近な地域を題材にして、環境と経済のことについて考えていきます。個性的な登場人物や豊富なイラストでわかりやすく、工夫満載の楽しいテキストとなっています。

八木 信一 (著), 関 耕平 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/3/22)、出典:出版社HP

はしがき

筆者たちが大学生の頃、環境経済学のテキストが出はじめました。それらのテキストで勉強して、環境経済学のおもしろさや魅力を感じ、環境と経済とのかかわり、環境問題・環境政策をこれまで学んできました。
また、地域という「現場」にも出向き、現場にかかわっている人たちと出会ってきました。それらの出会いを通して、テキストだけでは味わえない現場の「楽しさ」や、テキストによる学びだけでは通用しない現場の「難しさ」を感じてきました。

このような地域という現場の息吹を、読者のみなさんにも伝えたい。そして、「現場の宝庫」である地域から、環境と経済を考えるきっかけにしてほしい。この本は、そのような願いを込めて書きました。地域という現場は絶えず変化しています。テーマとの関係から書くことができなかった、見方や考え方もあります。この本で足りないことについては、読者のみなさんで補っていただければ幸いです。

こうして、この本がみなさんの前に届くまでには、いろいろな方々にお世話になりました。筆者たちが学恩を受けてきた宮本憲一先生、植田和弘先生、寺西俊一先生。企画を後押ししてくださった諸富微先生。この本の編集担当者として、筆者たちと「三人四脚で歩んでいただいた有斐閣・書籍編集第2部の長谷川絵里さん。そして、各章のイラストをいきいきと描いていただいた。「もう1人の著者」である同・営柔部の平子さん。そのほか、これまでお世話になった多くの方々に、この場を借りてお礼申し上げます。
最後に、地域という現場で汗を流し、考え、み、それでもアクションを起こし続けている、すべての方々に敬意を表します。この本が、それらの地域の方々と読者のみなさんとの間を、少しでもよい形で近づけることができれば、これ以上にうれしいことはありません。

2019年1月
八木信一・関耕平

著者紹介

八木信一
第1章第5章、第7~10章、Column
1973年生まれ、佐貨県大和町(現佐賀市)育ち。佐世保高専・横浜国立大学卒業。京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。現在、九州大学大学院経済学研究院教授。
(おもな著作)
「楽物の行財政システム」有斐閣,2004年(平成17年度廃楽物学会現来物資源循環学会]著作賞)、「日本財政の現代史II」(分担執筆有斐閣,2014年、「再生可能エネルギーと地域再生」(分担執筆)日本評論社,2015年「テキストブック現代財政学」(分担執筆)有安
閣,2016年ほか。
●読者へのメッセージ・
私たちは、「ゆりかごから墓場まで」の間に、いくつかの地域との出合いがあります。また、今日ではさまざまなツールを使って、国内外のいろいろな地域と出合うこともできます。ゆえに、地域とは出合うものであるといえるのではないでしょうか。「環境と経済」を題材としたこの本が、そのような地域との新たな出合いの1つになることができれば、うれしいです。

関 耕平
第2〜4章、第6章Column(共著)
1978年生まれ、秋田県鹿角市育ち。岩手大学卒業。一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。現在、島根大学法文学部准教授。
(おもな著作)
「公私分担と公共政策」(分担執筆)日本経済評論社,2008年、「Basic地方財政論」(分担執筆)有斐閣,2013年「岐路に立つ裏災復興」(分担執筆)東京大学出版会、2016年「三江線の過去・現在・未来(共著)今井印刷,2017年ほか。
●読者へのメッセージ・
みなさんが今後、地域へ出かけて行き、そこで見聞きする何気ない出来事を通して、ものごとの本質を感じてハッとする。そんな瞬間が増えることを願ってこの本を書きました。ところで、私は、そのオトボケぶりも含めて、ゲンバくんが自分のように思えてなりません(この本を書くなかで、彼のように成長できたか自信はないですが。この本で学ぶことによって、みなさんがゲンバくん以上に成長できるよう願っています。

八木 信一 (著), 関 耕平 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/3/22)、出典:出版社HP

目次

はしがき
著者紹介
各章の構成本書に登場するおもな事例

CHAPTER0 地域から考えるために
現場からの見取り図
1テーマと出合う
テーマは現場にある!
2テーマを理解する
ー「現場の宝庫」としての地域
テーマ。それが始まり(4)書を持って、現場へ出よう(5)ごみ収集車に乗った経済学者(5)地域という現場をつかむ(6)この本の見取り図を得よう(8)
CHAPTER1 環境と経済をつかむ
「価格のつかない価値物」のとらえ方
1テーマと出合う
環境かそれとも経済か、あるいは
2テーマを理解する
環境経済学への入り口
環境とは何か(14)環境問題とは何か(15)なぜ環境問題が起こるのか1:市場の失敗(16)なぜ環境問題が起こるのか2:政府の失敗(18)なぜ環境問題が起こるのか3:共同体の失敗(19)環境政策のとらえ方(19)環境政策をとらえる1:政策目的(20)環境政策をとらえる2:政策手段(22)環境政策をとらえる3:政業主体(23)

CHRPTER2 公害という原点
被害から始まる環境問題
1テーマと出会う
一公に思いをはせて
2テーマを理解する
一公報まと向き合うなぜ公害を学ぶのか(29)足尾彰泰事件を知る(30)なぜ公害被害は悪化していったのか(32)四大公害とは何か(33)水俣病の発生とその技害(34)償いきれない公害被害と至れる被害救済(35)福島原発事故がもたらした公害被害(36)公害被害地域の今(38)
3テーマを考える
一公害をどう乗り越えるのか公害の被害構造をとらえる(40)企業による地域支配がもたらした公害(42)公害被害を深刻にした政府の失敗(42)公害を招いてきた地域開発の委(44)地域から始まった公害対策(45)環境再生のまちづくりに向けて(46)

CHRPTER3 廃棄物はどこへ向かうのか
廃棄社会から循環型社会へ
1テーマと出合う
ごみを減らすためには?
2テーマを理解する。
一廃棄物問題をどうとらえるのか「とるに足らない」ものが廃棄物問題に(51)物質フローから見える廃棄物問題(52)2つの廃棄物(54)移動する廃本物がもたらした地域間の対立:2つのゴミ戦争(55)不法投楽はなぜ防げなかったのか:豊島不法投棄事件(56)「あとしまつ」重視から3へ(58)地域から循環型社会をつくるエコタウン事業と生ごみの強化の事例(59)
3テーマを考える
一環型社会をどうつくるのか物質代宮の行きづまり(61)グッズからバッズへ(63)バッズの取引がもたらす不法投棄(64)不法投棄のコストはが負担するのか(65)大量廃棄社会は克服できるのか(66)循環型社会に向けて私たちができること(67)

CHRPTER4 農が育む環境
村を持続可能にすること。
1テーマと出合う
ーどうなる。農村のこれから
2テーマを理解する。
一苦しくもんばる農村の今「いのちの営み」の現場としての農村(74)3つの空洞化に直面する農村(75)農村は本当にいらないのか(78)持続可能な農村へ1:有機農業のまちづくりに取り組む宮崎県綾町(79)持続可能な農村へ2:「地域のための企業」としての吉田ふるさと村(80)持続可能な農村へ3:環境保全型農業といきものブランド米(82)
3テーマを考える
―持続可能な農村を実現するために公共事業に依存してきた農村(83)農村の内発的発展をどう実現するのか(83)六次産業化で地域内経済循環を高める(85)農村が支える国土保全(86)農村が支える生物多様性(87)の多面的機能をどう守るのか(88)農村の発展を担うのは誰なのか(89)都市と農村の共生へ向けて(91)

CHRPTER5 みんなの資源を守れるのか
あなたの身近なコモンズ
1テーマと出合う
一勝手にとってはいけません!
2テーマを理解する–
一みんなの資源のとらえ方わたしの資源とみんなの資源(98)勝手にとってはいけない。みんなの資源もある(98)ところ変われば、かかわり方も違う:白神山地の事例(99)政府がなくしてきた。みんなの資(101)みんなの資源を広げる試み(103)
3テーマを考える
一劇を乗り越えるために私的財と公共財(106)2つのコモンズ(107)コモンズの
刺(108)なぜコモンズの制は起こるのか(109)なぜコモンズは残ったのか:オストロムの条件(111)地域資源としてのコモンズのとらえ方(112)コモンズの再生へ向けて(113)

CNRPTER6 エネルギー自治を求めて
地域でつくる再生可能エネルギー
1テーマと出合う
エネルギー資源に恵まれた農村
2テーマを理解する
一地域を左右するエネルギーのあり方エネルギーとは何か(120)エネルギー資源の移り変わりと地域への影響(120)エネルギーと地域1:青森県六ヶ所村から問う核と原子力(122)エネルギーと地域2:北海道下川町によるエネルギー自給への挑戦(125)
3テーマを考える
エネルギー自治で地域再生を枯渇性エネルギーと再生可能エネルギー(128)エネルギー自治とは何か(129)国や電力会社はどうして原発を推進するのか(130)原発は安上がりなのか(131)原発立地地域の経済と電源三法交付金(132)エネルギー自治を阻む原発マネー(134)再生可能エネルギーによる地域再生(134)エネルギー自治のこれから(136)

CNRPTER7 まちづくりとアメニティ
景観を守ること・創ること
1テーマと出合う
あの街この町、「まち」とは何?
2テーマを理解する
一景観まちづくりの歴史と現場「まち」を「つくる」(142)開発の波の中で失われた景観(143)景観台から景観条例・景観法へ(144)条例による景観まちづくり:京都市の事例(144)景観まちづくりの新たな展開:トレードオフからサステイナブルへ(148)まちづくりの土台としての学習:長野県飯田市の事例(149)
3テーマを考える
アメニティの経済学アメニティとは何か(150)アメニティをめぐる問題:混雑現象と土地問題(151)ストックとしてのアメニティ(152)アメニティがもたらす価値と環境評価(153)地域ブランドがつなぐ価値(155)社会的価値の認識と学習の役割(157)

CHRPTER8 グローバルとローカルをつなぐ
地域からの持続可能な発展
1テーマと出合う
—”Thinkglobally.Actlocally
2テーマを理解する
一地球と地域との接点を探る気候変動の問題化(164)2代目標と2つの対策(165)世界の主要都市における気候変動対策の特徴(167)東京都による地域版キャップアンド・トレードへの挑戦(169)東京オリンピックのメダルはリサイクルで(170)国境を越えるリサイクル資源(171)中国の都市におけるリサイクルの実際(172)
3テーマを考える
―持続可能な発展の経済学持続可能な発展とは何か(174)2つの持続可能性(175)包括的富とは何か(177)包括的を比較する(178)持続可能な発展へ向けた環境政策統合(179)なぜポリシー・ミフクスが起こるのか(180)グローバルとローカルをつなぐ制度(182)

CHRPTER9 インフラを造り替える
未来への投資
1テーマと出会う
ーインフラがフラフラに
2テーマを理解する
ーインフラのこれまでとこれからいろいろなインフラ(190)日本におけるインフラ整備の歴史(190)インフラをめぐる危機(193)インフラを造り替える1:コンパクトシティへの取り組み(194)インフラを造り替える2:スマート・シティへの取り組み(196)
3テーマを考える
―持続可能なインフラへ向けて費用便益(効果)分析の考え方(199)コミュニケーションとしての環境アセスメント(200)公共事業の公共性(202)ハードとソフト(204)フォアキャスティングからバックキャスティングへ(205)

CHRPTER10 ガバメントからガバナンスへ
みんなでアクション
1テーマと出合う
一卒業してからの現場
2テーマを理解する
一ガバナンスの現場を歩く「ガバナンス」で振り返る(212)ガバメントからガバナンスへ:埼玉県における見沼田画保全の事例(213)ガバナンスも変わる:熊本地域における地下水保全の事例(216)ガバナンスにおける市場の役割:森林認証制度を通して(218)
3テーマを考える
環境ガバナンス論ガバナンスが求められている「厄介な問題」(220)環境問題も厄介な問題に(222)環境ガバナンスとは何か(223)ガバナンスにおける3つのモード(223)ガバナンスの歴史をひもとく(225)ガバナンスの失敗とメタガバナンス(227)

引用・参考文献
事項索引
地名索引
人名索引

Columnコラム一覧
●私たちの「はじめての現場」
●地域からつくられてきた環境
●基地がもたらす公害
●「不滅の廃棄物」との格闘が始まる
●と福祉がつながる時代へ
●アンチ・コモンズの悲劇.
●エネルギー困
●なぜ景観条例は広まったのか
●MDGsとSDGS
●インフラ輸出の可能性と課題
●「ガバナンスの時代」における仕事像

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八木 信一 (著), 関 耕平 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/3/22)、出典:出版社HP