食の未来について考える5冊 – 人工肉からゲノム編集まで

世界の人口はとどまることを知らず今世紀半ばには90億に増えるとも言われております。人口は等比級数的に増加する一方、食料は等差級数にしか増えないと人口学者マルサスは言いましたが、テクノロジーの発展もあり、食料の大量生産を人間が可能にした一因もあります。

その一方で、農地の不足、土壌汚染、資源の過剰な開発もあり、改めて、大きくは全人類の今後の食料、そして個人レベルでは様々な食に対しての変化があります。そのような食に対しての未来、新時代の食の知識を確認できる5冊となります。

またカルフォルニア州を拠点とするビヨンド・ミートは植物由来の人工肉を開発する食品テクノロジー企業として注目を集める企業ですが、そのようなテクノロジーの発展などの話題にも触れています。

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「食べること」の進化史: 培養肉・昆虫食・3Dフードプリンタ

石川 伸一 (著)
出版社: 光文社 (2019/5/21)、出典:出版社HP

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私たちの生活において日常的かつ必須の「食」。その食の未来予測は、人間の未来を考えるうえで最も身近なもののひとつです。本書は、そんな「食の未来」について、料理、食と身体、食と心、食と環境の4つの観点から、過去→現在→未来の流れで、考えていきます。

1万年ほど前、我々の祖先は狩猟採取して食料を調達していた方法から農業という方法を始めました。また、現代では新しい調理技術、調理機器などの登場といったテクノロジーの変化により、新しい料理が生まれます。このように、食、料理は進化してきました。そして、未来の食として、昆虫食、培養肉、3Dフードプリンタが取り上げられています。特に驚くのが、3Dフードプリンタ。

インクジェットカートリッジに乾燥したタンパク質や脂肪などの主要栄養素や香料などをセットして、食べ物を出力するといいます。これが実現し普及すれば、貧困地域などでの活躍が期待されますが、まだ現実味のあるものとしては考え難いです。

また、食と身体との関係については、未来の食が人の身体にどのような影響を与えるか、心との関係については、食の変化が食の価値観にどのような影響を与えるか、環境との関係については、未来の食が生産や調理にどう影響するか、といったことを考えます。とても身近な「食」について、その未来について考えるきっかけとなる1冊です。

食の未来 地中海食からゲノム編集まで

日経サイエンス編集部 (著)
出版社: 日本経済新聞出版社 (2017/10/18)、出典:出版社HP

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食は現代人にとって大きな関心事ですが、世界人口が75億人を突破し、新たな技術を導入した食糧戦略が求められています。また、自然環境の悪化が作物に与えるダメージも深刻化しています。本書は、食と健康に関わる最新の話題を中心に様々なテーマを扱っています。

例えば、野菜はビタミンが豊富で健康に良いといわれていますが、実はそう単純ではないといいます。野菜や果物にも微量の毒素が含まれており、この微量毒素が体内に取り込まれることでより強いストレスへの抵抗力や回復力が強化される、これが野菜が体に良い本当の理由だといいます。

また、地中海沿岸で好んで食べられる食事が、心臓や血管などの循環器系の病気を防ぐ効果があるほか、加齢による認知力の低下を遅らせることがわかってきたといいます。さらに、CRISPRという新しい遺伝子編集技術も紹介しています。この技術の特徴はその正確さにあり、従来の技術の中で最も生物学的混乱の少ない形で植物を品種改良できるといいます。これにより遺伝子編集技術が大きく進歩するでしょう。ほかにも本書は多様な論点について扱っており、現在の食にまつわる議論状況を知る上で、参考になる1冊です。

食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ

鈴木 透 (著)
出版社: 中央公論新社; 地域・文化版 (2019/4/19)、出典:出版社HP

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本書は、アメリカの食文化、食の歴史を、アメリカの歴史と結びつけて紐解いていく1冊です。アメリカの食べ物といえば、ハンバーガーやフライドポテト、ピザ、フライドチキンなどといったファストフードを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

しかし、これらの食べ物はいずれも、アメリカ先住民のものではなく、他国や移民に起源を有するといいます。“人為的集団統合を宿命づけられたアメリカは、イギリスのみならず、非西洋や移民の食文化の伝統から国民的食べ物を生み出すという、実は想像以上に複雑な過程を経て独自の食文化を築き上げたのだ。”そして、ハインツのトマトケチャップやハンバーガーの歴史、産業社会への意向で高まる健康志向を背景として生まれたシリアルやコカ・コーラの歴史など、現在私たちの身近にある食料品の歴史が書かれています。

また、社会、経済、法律をはじめ様々な要因が絡み合い、フェストフードがアメリカで定着していく歴史が書かれており、現在の私たちの食文化、特にアメリカの食文化、その歴史について考えてみるきっかけとなる1冊です。

ナショジオと考える 地球と食の未来

ナショナル ジオグラフィック (編集)
出版社: 日経ナショナルジオグラフィック社 (2016/5/16)、出典:出版社HP

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本書は、世界の食の未来について、データと写真とともに考えていきます。世界の人口は2050年までに今より20億人増え、90億人に達するといわれており、それだけの人を支える食料が必要となります。それに、新興国の人々の生活が豊かになり、食生活が変化することが加わって、2050年までに世界の作物の生産量を現在のおよそ2倍に増やす必要があると考えられています。

ここでは、この食料問題を解決するために5つの提言をします。農地を拡大しない、今ある農地の生産性を高める、資源をもっと有効に使う、食生活を見直す、食品廃棄物を減らす。これらを実行することで、世界の食料供給を2倍以上に増やすばかりか、農業が地球環境に及ぼす影響を大幅に抑えることができるといいます。また、未来の食料危機について、バイオ技術や大規模養殖が有効か、環境への影響は問題ないかなどについて考えます。

さらに、「米国に広がる新たな飢餓」についても考えさせられます。米国の飢餓の実態として、空腹を満たすために高カロリーで栄養価が低い食品を食べざるを得ず、肥満になっている人がいるのが現状で、食料支援を受けている人の多くが太りすぎというのです。本書は、米国の食糧問題の現状についても深く考えさせられ、また、未来の食料問題について今から何ができるかを考えるきっかけとなるといえるでしょう。

ニュートン別冊 食品の科学知識 第3版

筆者
出版社: ニュートンプレス; 第3版 (2018/9/18)、出典:出版社HP

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食事は、私たちが心身ともに健康にいきていく上で欠かせないものですが、身近な食品が何からできていて、どのような性質を持つのかについて知っていれば、食生活に役立つ情報が見えてくるはずです。本書は食品に関する知識を身につけることができる1冊となっています。

全体を通じて、各食品や飲料、調味料、栄養素について、それら食品等が体にいいのはなぜか、どのような食べ方がいいのか、体への悪影響は、栄養素の果たす役割はなど、素朴な疑問に対して解説していくという構成となっており、読みやすく、食品に関する知識を学ぶことができます。また、図表が多く使われており、さらにわかりやすいものとなっています。

そして、「ゲノム編集」技術についても扱っています。従来の常識を覆すような高効率で目的の遺伝子を変えることのできるゲノム編集ですが、この技術を利用した食品は安全なのか、従来の遺伝子組換え食品とは何が違うのか、といった疑問に答え、食と安全の問題を考えていきます。日常で何気なく食べている食品や、行っている保存方法について、本書を読むことで改めて考えてみるきっかけとしてみるのも良いのではないでしょうか。